中国ファーウェイが2023年8月に発売したスマートフォンが、世界の業界関係者を驚かせた。SMICが高性能な半導体を製造したとみられたからだ。

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 中国政府の「半導体の国産化目標」の実現に向け、中核に位置づけられるのが、SMIC(中芯国際集成電路製造)だ。上場企業ながら国策会社の側面もあり、秘密のベールに包まれているSMIC。政府支援と中国国内の旺盛な半導体需要を追い風に、2024年末には世界3位の半導体受託製造(ファウンドリー)に浮上した。

 24年12月期決算は利益こそ新工場立ち上げに伴う費用計上で減益だったものの、売上高が80億ドル(約1.1兆円)と前期比27%もの増加になった。SMICがどこまで技術力を伸ばすのか。その動向は米中対立の行方さえ左右する。米中対立の根っこに半導体開発競争があるのは、半導体がITインフラのエコシステムの中心をなすのに加え、軍事・産業両面で競争力に直結するためだ。

 半導体産業は、高度にグローバル化した複雑なサプライチェーンのもとに成り立ってきた。その製造工程は、複雑な設計回路をシリコンウエハーに造り込む「前工程」と、回路を造り込んだシリコンチップを電子機器基板に実装するパッケージングを行う「後工程」に大きく分けられる。「前工程」には高度な技術集約性が要求され、「後工程」は組み立てに必要な労働集約的な要素が強かった。

 だが、成長が目覚ましい生成AI(人工知能)用の半導体を代表として、近年は両工程に高度な技術が必要となっている。この結果、微細加工技術による製造プロセスは一段と複雑になり、開発・設備投資コストが上昇するにつれて、業界では水平分業化が進展している。そして、回路設計が専門のファブレス(工場を持たない)企業と、微細加工技術を駆使した製造を専門に行うファウンドリー企業の分業体制に移行した。

 こうした…



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週刊エコノミスト

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