バイドゥやアリババとの競争から抜きんでたテンセントは、さらにAIにも多額を投資し、多くのユーザーを経済圏に組み入れようとしている。

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 インターネット大国中国では、人口14億人中11億人超がインターネットを利用している。その中国でインターネット企業の頂点に君臨するのがテンセント(騰訊)だ。2024年12月期の売上高は6602億元(約13.2兆円)、今年5月の時価総額は約4.6兆香港ドル(約85兆円)と、世界有数の企業へと成長を遂げた。

 中国のネット企業は、米グーグルやXなど外国サービスの模倣から始めて高頻度で改良を重ね、中国人の支持を得て成長した。日本のモノづくりのように、最初からある程度のレベルの製品やサービスをしっかり作り上げる考え方とは対極にある。また、中国政府が外国のサービスを規制したことも後押しした。

 サービスが人気になれば、ネット企業に莫大(ばくだい)な富が入る。ポニー・マー(馬化騰)CEO(最高経営責任者)は中国富豪ランキング上位の常連に名を連ねている。花形業界のネット業界に最も優秀な学生がこぞって就職した結果、他国の物まねではない中国独自のITサービスが登場した。

 テンセントは、かつてはバイドゥ、アリババとともに3社の頭文字から「BAT」と呼ばれ、この3社が有力なネット企業を続々と買収して事業を拡大していった。3社はいずれもチャットや検索、クラウド、EC(電子商取引)、動画など全方位にサービスを展開しているが、まずバイドゥが脱落し、アリババも引き離された。

 テンセントはSNS(交流サイト)とゲームや動画などのコンテンツで中国の競合他社を圧倒し、フィンテック(金融サービスと情報技術の融合)やクラウドでアリババと競う。テンセントは以前からサービスではスロースターターで、新しいトレンドが登場したところで対抗製品をリリース…



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週刊エコノミスト

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