15日の米株式市場でS&P500種株価指数は上昇。この日発表の経済指標を受け、米金融当局がリセッション(景気後退)回避に向けて年内に少なくとも2回の利下げを実施するとの見方が強まった。米国債利回りは低下。円は対ドルで上昇し、一時1ドル=145円台前半を付けた。
株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数5916.9324.350.41%ダウ工業株30種平均42322.75271.690.65%ナスダック総合指数19112.32-34.49-0.18%
S&P500種は4日続伸
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
S&P500種は4営業日続伸。ナスダック100指数はほぼ変わらずで終了。これまでの急ピッチな上げで過熱感が警戒される中、慎重なムードも広がった。過去1カ月間にアンダーパフォームしてきた高配当のディフェンシブ銘柄が選好される展開となり、大型テクノロジー株の大半は下げた。メタ・プラットフォームズは、主力の人工知能(AI)モデルの開発が遅れているとの報道が材料視された。
前日の引け後に堅調な業績見通しを示したシスコシステムズは急伸。一方、ユナイテッドヘルス・グループは急落。メディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)に関連する不正行為の疑いで刑事捜査を受けているとの一部報道が嫌気された。
4月の米生産者物価指数(PPI)は予想外に低下し、5年ぶりの大幅な落ち込みとなった。企業が関税引き上げによる影響を一部吸収していることを示唆している。4月の米小売売上高は前月に比べて伸びが大幅に鈍化し、わずかな増加にとどまった。米製造業生産は4月に落ち込み、6カ月ぶりのマイナス。5月のニューヨーク連銀製造業景況指数は3カ月連続で縮小圏。米住宅建設業者の業況感を示す住宅市場指数は5月に大きく下がり、2023年11月以来の低水準となった。
ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「スタグフレーションを予想しているなら、これらのデータはその見解を裏付けるものではない」と指摘。「成長は鈍化しつつあるが、ディスインフレの傾向は続いている」と述べた。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「この日のデータは全体的なシナリオを変えるものではない」と指摘。「小売売上高は消費者がより選別的になりつつあることをうかがわせるが、広範な人員解雇の兆しはまだ見られない。4月のインフレ減速は安心材料にはなりにくい。関税の影響が表れていないからだ」と話した。
その上で、中国との緊張は緩和したものの、貿易の問題はまだ終わっていないとし、関税の影響が経済データに反映されるまでにはなお時間がかかると、同氏は続けた。
動画:ブルームバーグTVとのインタビューで語るJPモルガンのダイモンCEO
出所:ブルームバーグ
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、リセッションに陥る可能性は依然残っているとの見方を示した。関税の影響は引き続き世界経済を揺るがしていると指摘した。
ダイモン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「それが回避できることを望むが、現時点でそれを排除しない」と述べ、「リセッションになる場合、それがどれほど大きく、どれほど長く続くかは分からない」と続けた。
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アポロ・グローバル・マネジメントのジム・ゼルター社長はブルームバーグテレビジョンとの別のインタビューで、トランプ政権による最近の関税一時停止や中国との緊張緩和について、「マクロ政治の転換」と表現した。
「以前であれば、リセッションの確率は30%から70-80%に上がったと言っていたかもしれないが、今はおそらく50%未満だろう」と話した。
国債
米国債は上昇(利回りは低下)。一連の経済指標が景気活動の減速とインフレ鈍化の兆候を示し、年内に2回の利下げが実施されるとの見方が強まった。
国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.89%-7.8-1.57%米10年債利回り4.43%-10.5-2.31%米2年債利回り3.95%-9.6-2.38% 米東部時間16時42分
クレジットサイツの米投資適格・マクロ経済戦略責任者ザカリー・グリフィス氏は「債券市場にとって、悪いニュースは良いニュースだ」と指摘。今回のデータは景気減速を示唆している可能性があり、想定よりも早期の利下げを促すかもしれないと述べた。
「経済成長が潜在成長率を下回ると見込まれるものの、リセッションは予想しておらず、年内は金利が据え置かれるというのが依然として当社の基本シナリオだ。関税は現行水準にとどまったとしても、持続的なインフレ圧力になる可能性が高い」と続けた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のバー理事は、米経済が堅調に推移しているとの認識を示す一方、関税によるサプライチェーンの混乱が成長鈍化やインフレ圧力の高まりにつながる恐れがあると警告した。
外為
外国為替市場ではドルが下落。円は対ドルで3営業日続伸し、一時0.9%高の145円42銭まで買われた。
為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1230.03-2.54-0.21%ドル/円¥145.66-¥1.09-0.74%ユーロ/ドル$1.1183$0.00080.07% 米東部時間16時42分
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は、この日の米経済指標発表を受けたドルや米国債利回りの動きについて、「ドルを現行水準から大幅に押し下げるには、これ以上の材料が必要かもしれない。特に、為替投資家は貿易関連のニュースを警戒している」と指摘。「為替を動かす別の要因はリスクセンチメントの底堅さだが、この日はそれがやや打撃を受けている。結果として、為替市場では最近のレンジでの動きが続く可能性がある」と述べた。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は「ドルは短期的な値固め局面に入った。米金融当局は緩和の再開を急いでいないが、ドルにとってのファンダメンタルズは厳しい状況が続いている」と話した。
ドイツ銀行の為替戦略グローバル責任者ジョージ・サラベロス氏は、議会で進んでいる税制法案の審議について、米国が財政赤字の抑制に乗り気でないことを示していると指摘。外国人投資家もそれを資金面で支えることに消極的になっているとし、ドルと債券市場に「大きな問題」が生じているとの見方を示した。
「大幅な財政赤字を抱えれば、外国勢がこれまで以上に大量の米国債を購入する必要が出てくる。対外債務が増加し続けることになる」とサラベロス氏はリポートに記述。「これはもはや持続的ではない」と続けた。
原油
原油先物相場は続落。トランプ米大統領がイランの核計画を巡る交渉について、合意に近づいているとの認識を示したことに反応した。合意に至った場合、すでに供給過剰に向かっている市場で供給が一段と増える可能性がある。
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アナリストの推計によれば、イランに対する制裁が全て解除された場合、世界の市場に大量の原油が流れ込むとみられている。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が予想以上のペースで増産を再開する一方、米国と主要な原油消費国との通商協議が需要見通しを曇らせており、こうした展開が供給過剰気味の市場にさらなる暗雲を投げ掛けている。
マッコーリーのストラテジスト、ビカス・ドウィベディ氏はインタビューで、「トランプ氏は原油価格の引き下げを引き続き目指す中で、イランとの合意を望んでいる」とし、「協議を流れから判断すると、早ければ年内に合意に達する可能性もある」と述べた。
合意が成立すれば、日量20万-30万バレルの供給増につながり得ると、ドウィベディ氏は予想。イランの原油輸出は既に増加しており、4月には日量約170万バレルに達したと付け加えた。
この日は国際エネルギー機関(IEA)の月報も市場の弱気センチメントに拍車をかけた。IEAは世界の石油需要について、年内は伸び鈍化が見込まれるとした。
関連記事:世界の石油需要、年内は伸びが減速する見通し-IEA月報
IEAの石油市場部門責任者、トリル・ボソニ氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで「世界経済が減速し、原油需要の伸びが鈍化している明確な兆候が見られる」と語った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限は、前日比1.53ドル(2.4%)安の1バレル=61.62ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は1.56ドル(2.4%)下落の64.53ドル。
金
金相場は反発。米経済指標を受け、年内の利下げ観測が強まった。
ただ金は、4月に記録した過去最高値を依然として300ドル余り下回っている。米中の貿易摩擦緩和を背景に、安全資産としての需要が後退している。
オーバーシー・チャイニーズ銀行の為替ストラテジスト、クリストファー・ウォン氏は金について、ロングポジションのさらなる解消が起こる可能性があると指摘。1オンス=3050-3150ドル近辺ではある程度の下値支持があるだろうとしつつ、支持線を割り込めば「2950ドルの水準に向けてさらに調整するリスクもあり得る」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時2分現在、前日比46.42ドル(1.5%)高の1オンス=3223.67ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は38.30ドル(1.2%)上昇の3226.60ドルで引けた。
原題:Stocks Rise as Fed Bets Sink US Yields; Meta Falls: Markets Wrap(抜粋)
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