【舛添直言】ガザの和平もまだなのに「ディール外交」を優先、果たしてこれで中東に平和は訪れるのか
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サウジアラビアを訪問したトランプ大統領は、サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(右)とともにシリアのアフマド・フサイン・アッ=シャラア暫定大統領と会談した(提供:Bandar Aljaloud/Saudi Royal Palace/AP/アフロ)
(舛添 要一:国際政治学者)
中東歴訪中のトランプ大統領は、サウジアラビアで演説し、対シリア制裁を解除する方針を明らかにした。そして、14日には、シリアのシャラア暫定大統領と会談し、制裁解除の方針について確認した。その背景にあるもの、そして、これが今後の中東情勢にどのような影響を与えるのかを考えてみたい。
アサド政権の崩壊
シリアでは、2024年11月27日、50年にわたって独裁を続けてきたアサド政権に対して、反政府勢力が大攻勢を開始し、12月8日にアサド政権を崩壊させた。アサド大統領は、ロシアに亡命した。
シリアのアサド前大統領とロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/AP/アフロ)
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その背景には、アサド政権を支援してきたロシアがウクライナ戦争に集中せざるをえなくなり、シリアにまで手が回らなくなったこともある。
この政変劇を主導したのは、イスラム過激派組織「シャーム解放機構(ハヤト・タハリール・アル・シャーム、HTS)」である。アメリカは、これまでHTSをテロ組織に指定していた。
シリアの内戦は10年以上も続き、国外に難民として約600万人が出て、国内避難民も720万人にのぼる。たとえばドイツは約56万人を受け入れており、そのため移民問題が大きな政治的争点となっていった。移民排斥を掲げる極右のAfD(ドイツのための選択肢)が躍進するなど、ドイツ政治に地殻変動をもたらしている。
それは、ドイツにとどまらず、欧米諸国に広まる傾向であり、その震源地となったのがシリアである。その意味で、今後のシリアの動向は、国際政治に大きな影響を及ぼす。
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