2025年5月16日 17:00
文化庁は16日、文化審議会を開催し、琵琶湖の水を京都に運ぶ運河「琵琶湖疏水施設」を新たに国宝に指定するよう文部科学大臣に答申しました。
琵琶湖疏水は、明治時代に琵琶湖の湖水を京都に運ぶためにつくられた運河で、舟運、水道、発電、灌漑などの役割を果たしています。明治23年に竣工されて以来、今なお京都に水を届け続ける運河として京都市民のくらしや産業、文化を支えています。
国宝に指定される見通しなのは、琵琶湖疏水に設けられた5つの施設で、レンガでつくられた水路のトンネル「第一隧道」「第二隧道」「第三隧道」のほか、船を台車に乗せ、ケーブルカーのように移動させる施設「インクライン」、そしてレンガ造りのアーチでつくられた水路橋「南禅寺水路閣」の5つです。
文化庁の文化審議会は、琵琶湖疏水について「日本が西洋技術の習得過程にあった明治中期において、当時の最先端の技術を集めて築かれ、世界的に高い評価を得た構造物であり、文化史的意義も極めて深い」と評価。近代の土木構造物が国宝になるのは、初めてだということです。
琵琶湖疏水記念館の学芸員・久岡道武さんは、「国宝に指定されると聞いてびっくりしました。琵琶湖疏水ができて130年以上がたつが、京都市が水路の補修や修繕を大事な事業として絶え間なく保守管理をしてきた成果だと思います。今後も歴史的意義や大切さをみなさんに伝え続けていきたいと思います」と話しました。
京都市の松井市長は、16日午後に会見を開き「京都市の水は、ほとんどこの疏水で運ばれてきている。先人の努力の結果、京都の産業の発展、文化的な発展の礎をつくられたのが琵琶湖疏水のさまざまな施設であるということをより幅広い方々に知っていただきたい」と述べました。
滋賀県の三日月知事も、「琵琶湖疏水施設は、豊かな琵琶湖の恵みを活用し、日本の近代化と発展に貢献してきた県内を代表する近代化遺産であり、国宝・重要文化財に指定されることは大変喜ばしいことです。これを機に疏水の源である琵琶湖・滋賀へ多くの方に訪れていただけるよう、今後とも、京都市をはじめ関係機関と連携して、保存と活用を推進してまいります」とコメントしています。
また、琵琶湖疏水に船を入れるゲート「大津閘門及び堰門」などその他の施設19か所も国の重要文化財として指定される見通しです。
最終更新日:2025年5月16日 21:43
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