英国は、多額の投資を行う外国人向けに特別ビザ(査証)の導入を計画している。スターマー政権は、最近の増税や就労要件強化による経済的打撃の緩和を目指している。
事情に詳しい関係者によると、対象は人工知能(AI)やクリーンエネルギー、ライフサイエンスなど、戦略的重要性があるとスターマー政権がみなす分野に投資意欲のある外国人。計画はまだ初期段階で変更される可能性もある。投資家向け現行ビザの取得手続きを簡素化する案と並行して検討されているという。関係者は匿名を条件に語った。
新たな投資家ビザ導入が検討されている背景には、英経済の活性化を最優先課題とするスターマー首相の方針や、英国に住む裕福な外国人、いわゆる「ノンドム(非永住者)」向けの税制優遇措置廃止に対する反発がある。スターマー政権が4月に導入した税制厳格化を機に、英国の富裕層が国外に脱出する動きが広がっている。
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政権は、予算案で示された国民保険料率引き上げによる経済的打撃にも対応しようとしている。この制度変更は、昨年10月にリーブス財務相が発表した予算案に盛り込まれたもので、雇用の減速や企業景況感の悪化を招いた。
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また政府は、今週発表したビザ要件厳格化の影響にも対処したい考えだ。スターマー首相は移民を「大幅に」減らす方針を示しており、予算責任局(OBR)による経済成長率見通しの下方修正につながる可能性もある。同局が移民流入を英経済の押し上げ要因と評価する傾向があるためだ。
英政府は今週、今後の移民政策に関する白書を公表し、移民制度を「最高の人材、起業家精神、投資をわが国に呼び込む」ものにしたい考えを示した。また、「戦略的産業分野で、英成長加速に必要な技能と経験を備えた人材を迅速に受け入れる制度」の整備も表明した。
政府関係者によれば、内務省や財務省、ビジネス貿易省は経済成長のために英国に優秀な人材を呼び込む必要性で一致している。
内務省はコメントを控えた。財務省にコメントを求めたが、すぐに回答はなかった。
原題:UK Mulls New Investor Visa Targeting Key Strategic Industries(抜粋)
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