Q.現地の状況は?
A.さきほど「赤の広場」で軍事パレードが終わったばかりで、プーチン大統領、参加したロシア軍の高官や兵士達にことばを交わし、ねぎらっているようです。

このあとプーチン大統領は、各国の首脳たちとともに「赤の広場」を出てクレムリンの外にある第2次世界大戦の「無名戦士の墓」の追悼式に出るとみられます。

戦勝記念日は、プーチン政権にとって最も重要な祝日で、特に今年は80年の節目。
60年周年の2005年の時の式典は、アメリカのブッシュ大統領や、ドイツのシュレーダー首相、日本からも小泉総理大臣など、欧米含む50以上の首脳らが出席しました。

当時は戦勝国、敗戦国を問わず犠牲者を追悼し「和解」を演出する側面がありました。
ただ、ロシアによるウクライナへの侵攻後、欧米との対立が深まり、ここ数年の式典は、首脳レベルの参加はほとんどが旧ソビエト諸国で、ロシアの孤立が目立つかたちになっていました。

そうした中で、80年のことし、ロシアとしては、中国の習近平国家主席や、ブラジルのルーラ大統領など20か国以上の友好国首脳も招待し、国際社会での存在感をアピールしています。

Q.そのプーチン大統領が、先ほど演説しました。どんなポイントが?
A.発言は、例年とほぼ同様10分ほどでした。
「ロシアはナチズムなどの不滅の障壁であり続ける。真実と正義はわれわれの側にある」などと発言し、ゼレンスキー政権を「ネオナチ」だと一方的に主張し、ウクライナ軍事侵攻を正当化するプーチン政権の意図も垣間見えました。

ただ、ここ数年と比べると、欧米批判などが薄れた印象もあります。
プーチン大統領は、今、ウクライナ侵攻の停戦に向けて、アメリカのトランプ政権との間で交渉も行っているところであり、ロシア有利に交渉を進めるため、挑発的なメッセージは抑制した可能性もあります。

Q.そして、今回注目されたのは、中国の習近平国家主席が、モスクワに来たことですよね。ロシア、中国、それぞれの意図をどう見ていますか?
A.きょうの式典でもプーチン大統領は、習主席と並んで式典会場に入り、会場では、お互い隣の席に座って、たびたび、ことばを交わす様子がみられ、蜜月ぶりを演出するような印象がうかがえた。

前日の8日、両首脳は、クレムリンで首脳会談を行い、プーチン大統領は「中国の関係は歴史上、最高レベルに達した」とアピール「我々の関係は対等で互恵的なものだ」とロシアと中国は対等だと強調していた。

習主席も「強権的ないじめ行為に直面している」などと応じ、念頭にあるのは、やはりアメリカ、トランプ政権への対抗だと思います。

アメリカなど欧米諸国は、6月中旬にカナダで、G7=主要7か国の首脳会議を開催します。
欧米側は、トランプ政権になっても、対ロシアで結束できるかがポイントの1つです。

これに対し、ロシアはアメリカなどG7に対抗する上で、中国とロシアを中心とした新興国や途上国などの枠組み「BRICS」を重視している。

今回の戦勝記念日の機会も最大限、中国など友好国と、政治や経済面での連携強化を打ち出したい考えだと思います。

Q.そして、ウクライナ停戦に向けた動きはどうなった?
A.ロシアは、現地時間の8日の午前0時から、72時間の停戦を一方的に宣言しています。

ウクライナへの軍事侵攻以降、ここ数年の戦勝記念日では、ウクライナはネオナチの政権だと言った主張を一方的に繰り返し、ロシア軍のさらなる侵攻につなげる国威発揚の場として利用していた。

そういう意味で、戦勝記念日に合わせた停戦宣言は初めてといえます。

しかし、ウクライナ側は「芝居じみたパフォーマンスだ」と批判しているし、ウクライナ、そして仲介のアメリカも、無条件での30日間の停戦を訴えています。

実際、この72時間の間でも、ロシア、ウクライナ双方ともに多くの攻撃があったとしていて、ウクライナ北東部では、ロシア軍の誘導爆弾の攻撃で、女性1人も死亡したといい、すでに停戦は、事実上破綻している状況です。

きょうの演説でも、プーチン大統領は「ロシア全体が『特別軍事作戦』の参加者を支持している」と述べ、軍事侵攻を続ける姿勢を強調しています。

アメリカ・トランプ大統領の仲介も停滞していて、停戦は残念ながらまだ見えていない状況だと思います。

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