はじまりはムッソリーニ時代

冒頭から世知辛い話で恐縮だが、イタリアは日本と同じ問題を数々抱えている。そのひとつが労働力の減少だ。2025年5月1日、メーデーに合わせて国内で発表された予測によると、2025年に約3730万人いる15-64歳の人口は、10年後の2035年には約3440万人にまで減る。とくに小さな工房を含む小規模事業者の人材不足が深刻化するとみられる。(データ出典:CGIAメストレ-ISTAT)

先日、「MIDA(ミーダ)」というイベントがあることを知った。「Mostra Internazionale dell’Artigianato」の略で、日本語にすれば「国際手工芸展」といったところだ。ギリシア神話で触ったものをすべて黄金に変えてしまう王、ミダース(イタリア語でmida)も意識したネーミングに違いない。

このMIDA、筆者は「近年始まった、地域興しイベントか」と思ったが、とんでもない誤解だった。第1回はムッソリーニ政権下の1931年にさかのぼる。実現を推し進めたのは、労使協調を推進する官庁のジュゼッペ・ボッタイ大臣だ。ファシズムの理論的構築を進めた人物である。したがってMIDAは、国内的には優秀・勤勉な国民であることを自覚させ、対外的には国威発揚が目的にあったことは明らかだ。第2次大戦後に一時中断したが、その後再開。2025年で第89回を迎えた。

30年近くフィレンツェと同じ州内に住んでいて、訪れたことがなかった筆者である。これは一度見てみねば、と思いたった。


今回は2025年4月にフィレンツェで開催された展示会「MIDA(ミーダ)」の訪問記を。こちらは「ワノス・ウッド&デザイン」を主宰するマッテオさん。


今回は2025年4月にフィレンツェで開催された展示会「MIDA(ミーダ)」の訪問記を。こちらは「ワノス・ウッド&デザイン」を主宰するマッテオさん。拡大


「MIDA」は初開催が1931年にさかのぼる国際手工芸展である。


「MIDA」は初開催が1931年にさかのぼる国際手工芸展である。拡大

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