ステーブルコインウォレット「MiniPay」が、アフリカの金融アクセスの構造的課題に対し、革新的なアプローチで注目を集めています。
OperaとCeloの協業によって生まれたこのプロダクトは、2024年末に設立された4,000万ドル規模のファンドと、2025年2月に開催されたAfrica Tech SummitでのWeb3部門最優秀賞受賞という実績を持ち、Web3の社会実装の最前線を走っています。
銀行口座を持たない人々に金融の扉を開き、日本企業にとっても協業のヒントとなるMiniPayの全貌を、本記事では詳しくご紹介します。
画像引用元:https://www.minipay.to/
銀行を持たない層に届ける金融インフラ
MiniPayは、ノルウェーのテック企業Operaが2023年にアフリカ市場向けに発表したブロックチェーンベースのウォレットです。
最大の特長は、従来の暗号資産ウォレットとは異なり、電話番号だけでステーブルコインの送受信ができるというシンプルな設計にあります。
これにより、金融機関にアクセスできない銀行口座を持たない層でも簡単に利用できるサービスとなっており、特にナイジェリアやケニアなどの都市部から農村部まで広がる社会的課題の解決に貢献しています。
画像引用元:https://www.minipay.to/
ウォレットはCeloブロックチェーン上に構築されており、平均5秒以内でトランザクションが確定し、送金手数料は0.01ドル未満と非常に低コストです。
Celoが提供するFiatConnectやSocialConnectとの統合により、ユーザーは電話番号を使った簡単な送金、現地通貨との連携、AirtimeやM-Pesaなどとの相互運用が可能になります。
これにより、デジタル金融に不慣れなユーザーでもストレスなく利用できるUXが提供されており、MiniPayは「日常で使えるWeb3」として注目されています。
ファンド設立と受賞が示すエコシステムの進化
2024年12月、Operaはブロックチェーンを活用した金融ソリューションの開発支援を目的に、Verda Venturesと共同で「MiniPayファンド」を設立しました。
このファンドは総額4,000万ドル(約60億円)に上り、主にアフリカのスタートアップを対象に資金提供を行っています。投資領域は、①モバイルバンキングによるアンバンクト層への金融サービス提供、②6,500万を超える中小企業への融資・資金供給、③現地通貨のインフレ対策や資産形成の支援などに集中しています。
注目すべきは、出資先に選ばれたスタートアップの多様性です。例えば、インフラ系の「Pretium」、オン・オフランプに特化した「Partna」、地域通貨ステーブルコインを展開する「Mento Labs」、国際企業とのクロスボーダー送金支援を行う「Mural」などが含まれており、それぞれがMiniPayのエコシステムを拡張しています。
画像引用元:https://press.opera.com/2023/09/13/opera-launches-minipay/
さらに、MiniPayは2025年2月に開催されたAfrica Tech Summitにて、Web3部門の最優秀賞を受賞しました。この賞は、社会的インパクトと技術的革新性を兼ね備えたプロジェクトに贈られるものであり、MiniPayが実用的なWeb3事例として高く評価されていることを示しています。
Web3が投機やNFTに偏らず、実利的な金融インフラとして活用されていることが、今後の方向性を示唆しています。
日本企業が得るべき示唆とは?
MiniPayの戦略と実装例は、日本企業にとっても多くの示唆を与えるものです。特に「金融包摂 × 新興国市場 × Web3」という文脈において、日本の技術や知見が貢献できる余地は大きいといえます。
例えば、決済インフラに関するノウハウ、セキュリティ技術、地域通貨を活用したポイントシステムなど、日本の中小企業が得意とする分野との親和性は高いです。
また、ドル建てステーブルコインがクロスボーダー送金に適している一方で、現地通貨建てステーブルコインは日常の支払いや融資、税金支払いなど国内ユースケースに不可欠な存在です。
こうしたローカル金融への展開が進めば、日本企業も現地パートナーとの連携を通じてソリューション提供が可能となり、MiniPayエコシステムの一部として新たな市場機会を獲得することができるでしょう。
加えて、MiniPayが提供する「分配チャネル」としての強みも見逃せません。すでにOperaは3億人以上のユーザーベースを持っており、MiniPayを通じてスタートアップがこのユーザー層にアクセスすることが可能です。
日本企業がこのようなネットワークに参入することで、効率的かつスケーラブルなビジネス展開が実現できる可能性があります。
本事例についてより詳細を知りたい方は私が投稿したnote『“投機”から“社会課題解決”へ!MiniPayが示す、アフリカWeb3金融の夜明け!』をご覧ください。
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