ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2014年の「レクサス最新モデル一気乗り」をプレイバック! 世界との差は広がったのか、縮まったのか? 自動車評論家 飯田裕子がじっくり検証する!!!(本稿は「ベストカー」2014年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)

文:飯田裕子/写真:茂呂幸正

GSからIS Fまで! レクサスはドイツ勢を超えたのか!? オールラインナップ試乗でわかったレクサス車の実力【ベストカーアーカイブス2014】

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■ダウンサイジングHV走りと燃費の高次元融合で戦闘力充分!! レクサスGS300h(追加モデル)

GSシリーズ2台目のハイブリッド車。パワーユニットはクラウンやISに搭載されている4気筒2.5Lエンジン+モーターのハイブリッド。ガソリン車より約100kg重いが軽快な走り

「確かにレクサスには各モデルに明確なターゲットモデルがあります」と話してくださったのはLSやGSのマイチェンから主査を務める渡辺秀樹氏。

 例えばLSならメルセデスのSクラスやBMW7シリーズ、アウディのA8。ISはBMW3シリーズ、そしてGSはEクラスや5シリーズ、A6がソレにあたる。「ただしターゲットを決めているのは、それらにないクルマづくりをするためでもあるんです」とも。

 今回GS300hや350を試乗して改めて「GSっていいな」と思うと同時にふと浮かんだのは畳の上を歩く感覚。靴下を履いてても素足でもよろし。GSは全体の剛性の高さのなかにほんのりとしなやかさが伝わってくる。

 いっぽう、レクサスが主にターゲットとするドイツ車系のモデルには革底が支える靴の文化が硬質感のなかに見え隠れするのです。

 GSシリーズに新たに加わった300hは、もはや450hがなくとも充分なのではないかと思えるほどパワフルだし、静粛性も高い。

 走り出しから乗り味にシットリとした重厚感が強めに感じられるのは、ハイブリッドシステムぶんの重量増が乗り味にプラスに働いていると言えるでしょう。重さぶんを差し引いたしなやかな俊敏さは、畳の上のごとく……、GSらしく変わらない。

2014年モデルでは、デイライト機能付きLEDクリアランスランプを採用するなど外観の小変更を行っている

 ハイブリッドシステムは2.5Lの直列4アトキンソンサイクルD4-Sエンジンにモーターを組み合わせたリダクション機構付きのTHS-II。JC08モード燃費で23.2km/L(Fスポーツ)と低燃費なうえ、レギュラーガソリン仕様という点でも経済的。

 ちなみにこのシステムはクラウンと同じシステムでもあります。が、前述のようなドライブフィールはクラウンともやはり違う。

 さらに魅力を強めていると感じるのがドライブセレクトモードの存在なのではないかと。切り替えを楽しんで乗るのは最初のうちだけなのではないか、と予想されるモデルもあるわけですが、300hはもちろんレクサス系のこちらは各モードでの変化が絶妙。

「ベストなセッティングはそのモデルにとって一つ。走りのモードを切り替えるチューニングは好みもあるから難しい」と開発ドライバー“匠”の伊藤好章氏はおっしゃいます。

 が、パワートレーンの出力制御やステアリングの操舵、シャシーを切り替えたそれぞれの走りはあざとくなく最適。かつてのスカイフックTEMS系は「あんまり……」だったワタシにとって(古い?)、電子制御技術の進化も最新のレクサスで味わえると思う次第です。

 そんなわけで300hの追加により4種類のパワーソースを持つことになったGS。ドイツ系ライバルにバリエーションで勝負を挑むつもりではないようです。

■ボディ剛性のアップ&スピンドルグリルの採用でブランド統一感 レクサスCT200h(マイナーチェンジ)

写真の試乗車はスポーティムード満点のFスポーツ。スピンドルグリルも専用タイプだ

 2011年に登場したレクサスCT200hは、価格/車格的にも輸入車プレミアムCセグメントに属するモデル。

 VWゴルフやアウディA3、BMW1シリーズ、メルセデスAクラスのほかにもボルボやフォード、アルファロメオなど多くのブランドが鎬を削るカテゴリーでございます。またダウンサイジング検討派にとっても注目のカテゴリー。

 CT200hはそこにガチで勝負を挑むも、昨年は輸入車系が当たり年。というわけで、タイミングもよろしくマイナーチェンジが行われました。昨年でもよかったくらいだとは思いますけど……。

215/45R17タイヤを装着

 エクステリアでは、まずお兄さま方同様にスピンドルグリルを採用すると同時に、フロント/リアバンパーもよりワイド&ローな印象を強めるデザインへと変更。

 なかには「みんな同じ顔つきで個性がない」とか「スピンドルグリルが苦手な人には総スカンをくらう」などと言う方もいるようですが、グローバルブランドとしての存在感は一台にて成らず。

 また特にFスポーツに採用されるメッシュ系のソレは専用のブラックルーフとともにクール&ゴージャスなムードを醸し出し、質感の高いインテリアの印象ともマッチ。より個性も強く新鮮さでも他ブランドにも負けてない。

パワートレーンはキャリーオーバーで1.8Lエンジンとモーターを組み合わせた定評のあるハイブリッド。燃費はクラストップの26.6~30.4km/L

「THS-II」ベース(直4、1.8Lエンジン+モーターにCVTの組み合わせ)のパワートレーンに変更はなし。いっぽうでドライブフィールや乗り味には手が入り、ボディ剛性アップには近年さまざまなモデルが採用しているスポット増しや接着技術を採用。ノイズや振動の対策箇所は約100箇所にもおよぶのだとか。

 結果、CT200hは進化&熟成が感じられますが、「レクサスだったら、そもそもこうあるべきなのでは」、と言いたいですわ。

こちらは装備充実の“バージョンL”。タイヤサイズは205/55R16で乗り心地重視のセッティング

 EV走行はさておき、エンジンのアクセル操作に対するレスポンスも自然で、もたつきが減りドライブフィールにはリニア感が増している。

 またスッキリ感のあるステアフィールやコーナリング時のリアタイヤの追従性とドッシリとした安定感も上質なスポーティさに貢献。

 Fスポーツでも乗り心地がそう硬くないのもいい。開発ドライバー“匠”である伊藤氏いわく「パフォーマンスダンパーの取り付け部の剛性アップにまでこだわった」という成果なのでしょう。

 JC08モード26.6km/Lという燃費性能も含め、ライバルに対する戦闘力は充分、と言えそうです。

“バージョンL”の本革シートに新採用のトパーズブラウンが鮮やか

■新設定「8Speed」を体感 レクサスGS350Fスポーツ

新搭載の8速ATはスポーティタイプ。シフトチェンジのレスポンスアップと燃費向上を実現している

試乗したのは19インチタイヤを標準装備するFスポーツ。8速ATとの相性もよく、鋭い加速から静粛なクルージングまで堪能した

 走り出してすぐに「おっ!?」とニンマリしたのがGS350Fスポーツでした。

 乗り味はしなやかさを残すカッチリ系で、その走りは俊敏かつ軽快。昨年秋に8速ATが搭載された点がこのモデルの改良点というが「本当にそれだけか?」と思うほどにボディサイズからくる質量感と走りのバランスが絶妙。

 GS350に搭載される8ATは“Dモード”で走行中、欧州車が採用するMTベースの2ペダルほどトントンと明確なシフトアップ感を出すものではなく、どちらかと言えばいつシフトチェンジしたかわからないようなスマートさがむしろGSらしくていい。

 この8ATはISやIS Fにも採用されている8Speed SPDS(8速スポーツダイレクトシフト)。多段化による燃費改善はもちろんのこと、静粛性の向上にも貢献。

 さらに4モードから選べる「ドライブモードセレクト」をSやS+にすれば鋭い加速力を発揮してくれますし、マニュアルモードを選んだ際のロックアップの素早さは「MTかしら?」という感覚でイケます。

 ステアリングフィールもグッと重くなってトータルのドライブフィールを引き締める効果もアリ。

 GS350がBMW5シリーズやアウディA6のようなスポーティなミドルクラスセダンを目指しているのか、そんなところもチラリうかがえますね。

■7psアップの特別仕様 レクサスIS F Dynamic Sport Tuning

2014年モデルはカーボン製のリアスポイラーを新装着、フォグランプをLEDタイプに変更している

 2007年に登場以来、熟成を続けるIS F。特別仕様車の“ダイナミック・スポーツ・チューニング”はその極め付きと言えそう。

 ファクトリーチューンが行われたというエンジンは低フリクション化のみならずワンオフ仕上げに近い仕事により7psほどパワーアップして430psに。

 ボディは新しい接着技術を採用し堅牢さのなかに柔軟性を持たせた質の高い剛性強化を採用。

 また専用カーボンフロントスポイラーやリアディフューザーを特別装備し、空力性能も向上。専用チタンマフラーの採用によりベース車比で7kgの軽量になっているとか。

エンジンのチューニングはパワーアップもさることながら低フリクション化などで燃焼効率をアップ。スムースな吹け上がりをみせる

 V8、5Lエンジンは、アクセルをグッと踏み込んだだけで分厚い加速力をわかりやすく発揮し、踏力の微調整を繰り返すほど思いどおりのレスポンスと繊細なトルク加減が可能で本質が見えてくる。

 加えて剛性が増したボディは基本性能が向上し、運動性能アップも同時に手に入れたことがわかる。

 また試乗中、4000rpm付近から変わるエキゾースト音を数回奏でていただいただけでゾクゾク大満足。

 常識的な大人がIS Fと付き合うなら、こういう瞬間も大事なんだと思う。

インテリアでは、ドアトリムやセンターコンソールの表皮にアルカンターラを採用するなど質感を高めIS Fのスペシャル感を演出する

■“最高峰”円熟の改良 レクサスLS600h

600hLは394psの5L 、V8エンジンと224psのモーターを組み合わせた余裕の動力性能で欧州3大ブランドにも肩を並べる

 レクサスのフラッグシップモデルであるLSは2012年にビッグマイチェンを行い、完成度はそれこそ円熟の境に入ってますます盛んな印象。

 600hLは、2.4tもある巨体を極めて静かに発進させる。引き締まったボディは速度が増すごとにフラットな印象が強まり、コーナリングも得意なもの。

 2014年モデルにメカニカル変更はなく、デイライト機能付きLEDクリアランスランプの全車標準装備と、新デザインのシャークフィンアンテナ採用、またボディカラーに新色が加わっています。

 トレンドに則った小変更は重要。ファッションやメイクにトレンドをさり気なく取り入れるのに似ている。フラッグシップモデルならなおさらです。

(写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります)

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