アップルが米国で販売するiPhoneのすべてを、2026年末までにインドで組み立てる計画だと『Financial Times』が先週報じた。現在、iPhoneの大半は中国で製造されている。しかし、中国製品は米国にとって、いまや輸入を回避したい存在になりつつある。
なぜなら米国政府が、中国からの輸入品に対し、145%の関税を課しているからだ。ただし、スマートフォンは、4月初旬にトランプ大統領が発表した90日間の猶予措置の対象となっている。だが、この除外措置は一時的なものであるとトランプは示唆している。
誰が、iPhone 17 Pro Maxのベースモデルに、2,949ドル(約42万4,000円)も支払う覚悟ができているだろうか?アップルは将来、将来の混乱への備えとして、iPhoneの製造をインドに移行するものとみられている。しかし、これはいまに始まったことではない。『WIRED』は24年12月に、アップルが米中対立の高まりに対する防波堤として、製造拠点をインドに移行しつつあることを報道(日本語版は25年1月に掲載)している。
インドでのiPhone生産は17年に開始された。最初は廉価版のiPhone SEから始め、23年にはフラッグシップモデルのiPhoneの製造を開始した。それからほぼ10年が経過しているが、今回報道されたような急速な戦略転換を図るとなると、まだまだ多大なコストがかかる。なぜなら、アップルは、インドの製造工場における生産量を少なくとも倍増させる必要があるからだ。
アップルは『WIRED』のコメント要請に対し、本記事掲載時点で回答していない。
インドのiPhone生産台数は?
「アップルは昨年インドで、約4,000万から4,300万台のiPhoneを製造したと推定しています」と、IDC Indiaのデバイス調査部門でアソシエイト・バイスプレジデントを務めるナヴケンダル・シンは語る。「そのうち、約1,200万台から1,300万台が完全にインド市場で消費され、残りが国外に輸出されました」
一方、米国では毎年6,000万台以上のiPhoneが販売されており、iPhoneシリーズのスマートフォン市場におけるシェアは57%に達するとの推計もある。つまり、アップルが米国での需要を満たしつつ、インド国内の需要にも応えるには、「約8,000万台から8,500万台(のiPhoneを)インドで製造する必要があるのです」とシンは言う。
さらにインドへの事業拡大は、アップル一社だけの投資に頼ってできるわけではない。同社のすべての主要製造拠点と同様、インドでも主にタタ・エレクトロニクス、フォックスコン、台湾のPegatronといったパートナー企業がかかわることになる。
「タタはいま完全にフル稼働している状態です」とシンは言う。なぜなら同社は現在、インドのiPhone製造において主要企業となっているからだ。タタは、iPhoneの組み立て工場をインド南部のタミル・ナードゥ州で運営している。その上、23年にはWistronがiPhoneの製造をしていたカルナータカ工場を買収し、25年1月にはPegatronのインド事業の過半数を越える株式60%を取得している。
これは、インドでのiPhone生産が地元企業のタタ・エレクトロニクスにより統括されることを意味する。フォックスコンやPegatron、そしてWistronは、世界的なビジネス規模と重要性を誇っているが、いずれも台湾の企業である。
インドの工場が抱える課題
タタ主導によるiPhoneの生産は、必ずしも順調に進んでいるとはいえない。23年には、iPhoneの筐体を製造していたタタのホスール工場の歩留まり率がわずか50%で、部品の半数がアップルの厳しい品質チェックで不合格になったと報じられている。この歩留まり率は、かなり低い。従っていかに熟練した、効率的な作業が、筐体の製造にとって重要かが浮き彫りになってしまった。
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