野生化したラクダは、大きな群れで移動することも多く、脆弱な生態系にダメージを与える。この写真のラクダは、スキンケア用品の原料にするミルクを搾るために飼われている。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW ABBOTT)

野生化したラクダは、大きな群れで移動することも多く、脆弱な生態系にダメージを与える。この写真のラクダは、スキンケア用品の原料にするミルクを搾るために飼われている。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW ABBOTT)

オーストラリア内陸の乾燥地帯では、19世紀に持ち込まれたラクダが野生化し、増加してきた。だが干ばつが頻発する今、ラクダと人間との不幸な衝突が増えている。

 オーストラリア内陸部で牧場を経営しているジャック・カーモディー。彼はこれまで、牛の給水設備の修理やフェンスの補強、“不法侵入者”の駆除など、牧場での仕事の様子をユーチューブに投稿し、多くのフォロワーを獲得してきた。牧場には、野生化した馬やロバのほか、とりわけ破壊力の大きい侵略的外来種、ラクダが侵入してくる。

 19世紀の植民者によって、広大な内陸部を調査する際の足として連れてこられたラクダは、今では内陸の乾燥地帯に大混乱をもたらすようになった。カーモディー家の4000平方キロを超す大牧場「プレンティ・ダウンズ」にも、大きな損害を与えている。

 カーモディーのユーチューブ・チャンネル「ジャック・アウト・ザ・バック」で一番人気があるのは、ラクダとの戦いを撮影した動画だ。3児の父であり、率直な物言いをする彼は、毎年800頭近いラクダをライフルで駆除している。カーモディーのような牧場主にとっては、差し迫った問題に対処する最も合理的な方法なのだ。「野菜畑の草取りをするのと同じです」と彼は説明する。ラクダは丈夫な雑草と同じように、いくら取り除いてもしつこくやって来るのだ。

オーストラリア西部で牧場を経営するジャック・カーモディーが、牛の給水設備から水を飲もうとしていたラクダを発見し、ライフルで撃つ。彼は、こうした場面を撮影して自分のユーチューブ・チャンネルに投稿し、牧場の日常を伝えている。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW ABBOTT)

オーストラリア西部で牧場を経営するジャック・カーモディーが、牛の給水設備から水を飲もうとしていたラクダを発見し、ライフルで撃つ。彼は、こうした場面を撮影して自分のユーチューブ・チャンネルに投稿し、牧場の日常を伝えている。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW ABBOTT)

 オーストラリアは、野生化したラクダが世界で最も多い国で、数十万から100万頭いると推定されている。雌は2年ごとに出産し、長ければ野生で40年生きる。平均体重450キロの体で、10頭以下から数百頭の群れをなして移動し、生態系を踏み荒らし、インフラを破壊する。旺盛な食欲で植物を消費し、ほかの野生動物や家畜と食料が競合するとともに、先住民アボリジニのコミュニティーの食料源を脅かす。植物の根によって維持されてきた砂丘が不安定になり、浸食の原因になる可能性もある。さらに、糞(ふん)や死骸が水飲み場を汚染する。大挙して押し寄せた挙げ句に渇きで命を落とし、残っているわずかな水を汚すこともあるのだ。

 実際、問題を引き起こしている最大の要因は水だ。よく知られていることだが、水分を多く含む植物があれば、ラクダは何週間も水を飲まずに生きられる。だが、ひとたび喉が渇くと、貪るように水を飲む。成獣のラクダは1日で200リットルもの水を飲むことがある。自然の水源が枯渇すると、所構わず水を探しに行く。水道管をずたずたにし、トイレを破壊し、窓に設置されているエアコンをたたき落とすこともまれではないという。

水漏れしている牛用の給水設備を修理するカーモディーの脇をオオトカゲが通り過ぎる。ラクダは喉が渇くと、こうした給水設備に来るだけでなく、フェンスや水道管、エアコンまで壊してしまうことがある。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW ABBOTT)

水漏れしている牛用の給水設備を修理するカーモディーの脇をオオトカゲが通り過ぎる。ラクダは喉が渇くと、こうした給水設備に来るだけでなく、フェンスや水道管、エアコンまで壊してしまうことがある。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW ABBOTT)

 さらに懸念されるのは、干ばつが頻発化していることで、ますますラクダと人間との距離が近くなり、接触する機会が増えていることだ。

次ページ:野生化したラクダをどうする?

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