欅産業のショールームに飾られている「仙台箪笥」=宮城県利府町

 江戸時代末期から宮城県で愛される高級家具「仙台箪笥」。華麗かつ重厚感のある意匠は根強い人気がある。最近はインバウンド(訪日客)による購入が増加。伝統技法を生かしながら、現代の生活様式に合う商品作りも模索されている。(共同通信=前田篤宏)

 仙台箪笥協同組合によると、仙台箪笥は仙台藩で地場産業として誕生した。豪華な飾り金具と頑丈さが特徴。木材を精密に調整して仕上げる「指物」、木地に輝きを加える「漆塗り」、鉄に模様や絵柄を打ち込んで成形する「金具」を分業して完成させる。2015年には国の伝統的工芸品に指定された。

 かつて嫁入り道具などとして、宮城県では一家に1さおあるとも言われたという。明治中期ごろには唐獅子などをあしらう大きな金具付きの製品が欧米に輸出され、最盛期に。しかし安価で機能的なたんすが出回るようになり苦境が続いた。

 仙台箪笥などの製造販売会社「欅産業」(宮城県利府町)の大原良光社長は「伝統的な作りでありながら、現代の生活様式に合わせる」ことが復活の鍵だとして、若者も購入しやすい価格帯の小物入れや高齢層を狙った仏壇などを生産し、商売の間口を広げた。

 近年は利府町や仙台市の同社ショールームに伝統的な仙台箪笥を求める中国からの訪日客も目立つ。同社では海外からの注文が全体の約3割にまで増えているという。

 東日本大震災の被災地では、家庭で長らく使われてきた多くの仙台箪笥が損傷した。わらにもすがる思いで、同社に修理を依頼する人たちがいた。大原社長は「仙台箪笥が県民のシンボルだと改めて気付いた。宮城の伝統を次の世代につなげたい」と話している。

欅産業のショールームに飾られている「仙台箪笥」=宮城県利府町「仙台箪笥」の飾り金具=宮城県利府町の欅産業のショールーム

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