トランプ関税で世界経済が混乱する中、経済安全保障の観点からもインドとの連携強化は重要だ。その「地の利」に気付く日本企業は増えている。
日本のサプライチェーンで重要な国に
世界経済において目下、進行中の問題は、グローバル化に伴う中国経済への一極依存と、それに反発した米国の保護主義への傾倒であり、それが「貿易・関税戦争」として世界中の国々に飛び火している。経済と安全保障の統合が進む中、半導体といった最重要物資を保有する台湾有事へのリスクもぬぐい切れず、世界経済はまさに薄氷を踏む状況にある。それゆえに経済安全保障上の懸念から、サプライチェーンの多様化などを含めた、リスク回避(Derisk)、中国とのデカップリングの必要性が叫ばれている。
経済安全保障は、①経済上の措置を講ずることで国益の確保・最大化、また保護を目的とする。他国へ影響力を行使する、強い技術開発により世界にとって必要不可欠な存在となる(攻め)、②他国への依存度を減らすなど自国の経済を守れるよう強化する(守り)──の両面がある。第2次トランプ政権における関税政策は他国の経済政策を変更させる前者の典型として、経済安全保障上のツールである「エコノミック・ステートクラフト」を行使する一形態である。
戦略的な「自立と自律」
インドは「経済安全保障」という言葉自体を現時点ではほぼ使ってはいない。だが、実質的な経済安全保障上の目的を達成するため、国内経済開発を進めるとともに、他国との協力関係を維持し、グローバルサウスの盟主として世界的なプレゼンスを増そうとしている。特に第3回で指摘したような、他国への依存を減らし、経済成長を促すために製造業や防衛産業を強化し、雇用を創出するべく国産化(Self Sufficiency:自立)への動きを進めている。また、国家重要鉱物ミッション(National Critical Mineral Mis…
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週刊エコノミスト
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