不覚にもダイアナ元妃に取り合わなかったベルヴィル・サスーンだが、幸いにも彼女は後日、ブランドの古くからの常連客であった母親のフランシス・シャンド・キッドとともに再びブティックを訪れ、ハネムーン用の服を依頼した。そうして生まれたのが、白いフリルの襟が特徴的なあのピーチシルクのアンサンブルだ。

「多くの人は、ダイアナ元妃がわずか19歳の頃からベルヴィル・サスーンを愛用していたことを知りません」と、ヴィンテージ・コレクターでオンラインショップ、シュリンプトン・クチュールの創設者であるシェリー・バルチは言う。「生涯にわたるコラボレーションの始まりで、彼女のために70着以上の服をデザインすることになりました」

ダイアナ妃 ベルヴィルサスーン

1981年6月、映画『007/ユア・アイズ・オンリー』のプレミアにて。

Photo: Anwar Hussein/Getty Imagesダイアナ妃 ベルヴィルサスーン

1988年6月、ウィンザーで行われたポロのチャリティマッチにて。

Photo: Princess Diana Archive/Getty Images

その中には、1981年に公開されたジェームズ・ボンド映画『007/ユア・アイズ・オンリー』のプレミアで着用した赤いドレスや、その年の暮れに開催されたヴィクトリア&アルバート博物館でのガラで纏った淡いブルーのシフォンドレスなどがある。1988年に行われたポロのチャリティマッチで着ていたフローラルのティードレスも、ベルヴィル・サスーンが手がけた有名な1着だ。

ダイアナ妃 ベルヴィルサスーン

1989年9月、ロンドンのバービカン・センターで開催されたチャリティコンサートにて。

Photo: Princess Diana Archive/Getty Imagesダイアナ妃 ベルヴィルサスーン

1985年4月、ヘリフォードにて。

Photo: Princess Diana Archive/Getty Images

ベルヴィル・サスーンは現在、ベルヴィルの引退を機にブランドに加わったアイルランド出身のデザイナーのローカン・マラニーが指揮を執っている。全盛期にはオードリー・ヘプバーン、ジャッキー・ケネディ、エリザベス・テイラーといった錚々たる顔ぶれのためにデザインを手がけていが、多くの人はこれからも「ダイアナ元妃御用達のブランド」として記憶し続けるだろう。「ダイアナは、英国王室の服装のルールを破りましたが、その掟破りなスタイルは魅力的で、圧倒的な支持を得ていました」とサスーンは著書『The Glamour of Bellville Sassoon(原題)』で述べている。「彼女は王室のスタイルを現代仕様にしました。それは並大抵のことではなく、ベリンダとローカンと私は、その一翼を担えたことを誇りに思っています」

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