英国のスターマー首相とドイツのショルツ首相は28日、ベルリンで会談し、独英の2国間条約の骨子をまとめた共同声明を発表した。欧州同盟国との関係改善を目指すスターマー氏の取り組みの一環として、両国は広範な条約での合意を目指している。
防衛や安全保障からテクノロジー、クリーンエネルギー、移民までを網羅しているこの条約を、スターマー氏は「新たな協力の精神に基づく、より広範なリセットの一部」と称した。会談後、ショルツ氏も「このような条約は、英国とドイツの間でこれまでなかったものだ」と述べた。
この条約の最初の柱として、両国は今後数カ月以内に、防衛と安全保障に関する合意を検討している。計画に詳しい匿名の政府当局者によると、物資の共同調達や合同軍事演習などを促進するものになるという。
28日にベルリンで会談したドイツのショルツ首相(右)と英国のスターマー首相
Photographer: Krisztian Bocsi/Bloomberg
スターマー氏の側近は、ショルツ氏を個人的にも政治的にも最も近い指導者と評したが、両国の関係は、少なくとも公式には、まだそれほど緊密でない。フランスと英国は、2010年合意のランカスター・ハウス条約に基づき、防衛・安全保障活動で10年余り歩調を合わせてきたが、英独間には同等の枠組みは存在しない。
スターマー氏の率いる新政権は、外交政策の最初の取り組みとして、この状況を変えようとしている。労働党が勝利した7月の選挙から1週間足らずで、ラミー英外相がベルリンを訪れ、条約締結に向けた下準備をした。
22年のロシアによるウクライナ侵攻は、英独の防衛協力への野心に拍車をかけ、両国はウクライナへの軍事援助の面で、欧州で最も寛大な2カ国へと変貌した。
英国のスターマー首相は、ドイツとのテクノロジー、開発、通商など幅広い分野での協力を目指す新協定の計画について語った
Source: Bloomberg
スターマー氏は英国とドイツの条約を、防衛協力の底上げを目的とした、欧州連合(EU)全体との安全保障協定に先立つものとしたい考えだ。ショルツ氏は会談後の共同記者会見で「EUと英国の関係をさらに発展させることが重要だ」と強調した。
ただ、協議に詳しい関係者によると、英国政府はEUとの合意がどのような内容になるかについてはあいまいなままで、草案作成を担当する当局者らに対しても、今のところ限定的な指針しか示していないという。EUとの協定合意に向けた交渉は、25年春までは始まらない見通しだ。
The time has come to take the 🇬🇧🇩🇪 relations to the next level.
To this end, we are launching work on a bilateral cooperation treaty and will hold government-to-government consultations to sign it by early next year.
Joint declaration by PM Starmer and Chancellor Scholz ⤵️ pic.twitter.com/Y5vrkD5dPS
— Miguel Berger (@GermanAmbUK) August 28, 2024
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)アシスタント・フェローのセバスチャン・マイヨール氏は、ドイツはEUと英国との関係強化に対する「域内では前向きな提唱者」だとしている。
双方の当局者は、スターマー氏とショルツ氏の緊密な関係を強調し、EU離脱時に政権を担っていた英国の保守党とEU加盟国の間で深まった相互不信の転換につなげたいと考えている。
原題:UK, Germany Target New Pact as Starmer Rebuilds EU Ties (2)(抜粋)
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