まず正直に言おう。米国のクルマは、すでに安くはない。新車の平均価格は約50,000ドル(約750万円)で、インフレ調整後でも20年前に比べて5,000ドル(約73万6,000円)以上値上がりしている。その背景にはさまざまな要因がある。クルマの製造は複雑化し、コストも上昇。新型コロナウイルスのパンデミックは世界的な自動車のサプライチェーンを混乱させた。その結果、デトロイトの大手メーカーは過去10年で利益率が高い(そして需要も大きい)トラックやSUVに注力し、比較的安価な乗用車の製造から手を引いてきた。

しかし、トランプ政権が先週課した自動車関税、そして来月にも発動される予定の自動車部品への関税が、米国における手ごろな価格のクルマにとどめを刺す可能性があると専門家は警告する。1台あたり数千ドルの価格上昇が見込まれているのだ。

特に打撃を受けるのは、価格に敏感な層の消費者たちだ。価格が少しでも上がれば、古いクルマを買い替える計画を延期せざるを得ない。その余波は中古車市場にも波及し、需要のひっ迫を引き起こす可能性がある。

調査会社Cox Automotiveによると、3月末時点で平均取引価格が3万ドル(約440万円)未満の米国車は27車種存在していたが、そのうち7車種はすでに生産終了しており、在庫が尽き次第終了となる。残りの約半数は米国外で製造されており、今回の関税の対象だ。同社の試算によると、これらの車両には1台あたり約6,000ドル(約88万円)のコスト増が発生し、30,000ドル未満で手に入る車種は現代自動車(ヒョンデ)「ヴェニュー」、キア(起亜自動車)「ソウル」、日産自動車「セントラ」、ゼネラル・モーターズ(GM)のシボレー「トラックス」、日産「ヴァーサ」(今年で生産終了予定)の5車種だけになる。

韓国製の人気モデルであるヒョンデ「KONA」や、ジープで最も安価なSUV「コンパス」(メキシコ製)、フォードのエントリーピックアップトラック「マーベリック」なども関税の影響を受けるだろう。GMのシボレー「トラックス」は昨年、21,000ドル(約310万円)からの価格設定でヒットしたが、製造は韓国であり、価格上昇が避けられない。

「トランプ関税」がもたらす新たな打撃

来月にはさらに厄介な事態が控えている。トランプ政権は輸入部品への関税も導入する計画で、たとえ車両の組立が米国内で行なわれていても、部品に海外製が使われていれば対象となる。例えばインディアナ州で生産されているスバル「クロストレック」や、オハイオ州で製造されるホンダ「シビック」も米国外からの部品を含んでいるため、例外ではない。

一部の手ごろなモデルは市場から姿を消すかもしれないと、Cox Automotiveのエグゼクティブアナリストであるエリン・キーティングは語る。「米国の消費者は、大きくてカスタマイズできて、特別感があって、なおかつ安いものを好みます。でもそれを維持するのは非常に難しくなりそうです」。20,000ドル(約290万円)台のクルマの時代がほぼ終わったいま、3万ドル台のクルマもその運命に近づいている。

米国内の生産かどうかが鍵

消費者にとってこれからは、「トヨタとホンダの本社は日本」「フォルクスワーゲンとアウディはドイツ」といった本社の所在地よりも、それぞれのクルマが実際にどこで製造されているのかといった知識を、今後は意識せざるをえなくなってくるだろう。例えば、23,000ドル(約330万円)のトヨタ「カローラ」はミシシッピ州で、45,000ドル(約660万円)の電気自動車フォルクスワーゲン「ID.4」はテネシー州で、25,000ドル(約360万円)のホンダ「シビック」はインディアナ州で製造されている──こうした情報を知っておくことが、お得にクルマを手に入れたい人にとって大きな手がかりになる。

WACOCA: People, Life, Style.