米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレ抑制といった困難な課題を既に抱えていたが、トランプ米大統領が発表した世界の貿易相手国に対する相互関税は、そうした課題を一層難しくし、より重大なものとした。

  関税によるインフレへの影響を評価する重要課題については、パウエル議長はシグナルをノイズと切り離して考える作戦を掲げている。

  経済を支えるため政策金利をさらに引き下げるか、それともインフレ抑制のため金利をより長期にわたり高い水準に維持するのか。米金融当局は今年、決断する必要がある。エコノミストらは、一連の関税措置が経済成長を鈍化させ物価を押し上げるため、金融当局はいずれの方向にも引っ張られると予想している。

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  適切な政策の道筋を選ぶにはまず、関税に関連するインフレ率押し上げの程度を見極め、その上昇が一時的なものか、より持続的なものかを評価する必要がある。

  マクロポリシー・パースペクティブの上級エコノミスト、ローラ・ロスナー・ワーバートン氏は、第一次トランプ政権の関税措置に比べて「今回は影響がより広範囲に及ぶため、見極めがより困難になろう。より多くの商品、より多くの企業が影響を受ける」と指摘した。

  トランプ大統領は2日、米国への全輸出国に対して基本税率10%を、中国や欧州連合(EU)、日本など多くの国には上乗せ税率に課すと発表した。今回の相互関税は多くのエコノミスト予想より厳しい内容で、トランプ大統領がすでに発動した鉄鋼・アルミニウム、自動車への関税に続く措置。

  FRB当局者は一連の関税の直接的・間接的な影響について、消費者への価格転嫁の程度や物価上昇の幅、米国人の将来のインフレ期待などを含むデータを分析することになる。

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  パウエル議長は先月、関税によるインフレ押し上げは一過性のものになりそうだというのが基本シナリオだと述べた。だが、金融当局は読み誤れば再びインフレ抑制で後手に回りかねない。一方で、景気が悪化した場合、当局が早急に介入しなければ、リセッション(景気後退)に陥るリスクがある。

直接的影響と間接的影響

  関税が多くの日用品の価格に及ぼす直接的な影響は、消費者物価指数(CPI)に明白になる可能性が高いとインフレーション・インサイツのオメイア・シャリフ氏は話す。典型的な例は、米国が中国から大量に輸入している電子機器や靴、家具などだという。

  しかし、鉄鋼やアルミニウムなどの中間財に対する関税が価格にどう影響するかを分析するのは、それほど単純ではないとシャリフ氏は指摘。生産者物価指数(PPI)の詳細は参考になるが、こうした商品のコスト上昇は、少なくともある程度は生産パイプライン上のマージンで吸収されることが多い。

  直接的な影響は、結局一時的な価格上昇となる可能性があり、当局はそれを「静観」する傾向がある。しかし、輸入品以外の商品やサービスへの間接的な影響は、インフレにより長期的な影響を及ぼす可能性があると、セントルイス連銀のムサレム総裁は述べている。

  ムサレム氏は3月26日、米国の実効関税率が10%上昇した場合、米連邦準備制度が物価指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数を1.2ポイント押し上げかねないというスタッフ分析に言及。その試算の半分以上は間接的な影響を反映しているという。

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  ブルームバーグ・エコノミクスは、米国の平均実効関税率は昨年の2.3%から、約22%に上昇したと推計。これはムサレム氏のスタッフが示した影響のほぼ2倍だ。

  バンガードの米国シニアエコノミスト、ジョシュ・ハート氏は、貿易戦争が長引けば財のインフレが加速するリスクがあり、米金融当局が関税の影響を振り払うことがより困難になると指摘。財のインフレが長引くほど、価格上昇圧力がより広範囲に広がることが懸念されるとし、「サービス分野にも影響が及ぶリスクがある。賃金にも影響が及び、インフレ期待もさらに高まる」と予想した。

原題:Powell’s Tariff Inflation Game Plan Just Got More Complicated (抜粋)

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