[3日 ロイター] – トランプ米大統領は2日、貿易相手国に対する相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に対し一律10%の関税を課した上で、各国の関税および非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。

国・地域別の関税率は日本が24%、中国が34%、欧州連合(EU)が20%、英国が10%などとなっている。

市場関係者に見方を聞いた。

◎国、企業が米国依存減らす動きも

<ジェトロ・アジア経済研究所 副主任研究員 磯野生茂氏>

日本で操業している企業の場合は、これまで円安で得をしていた部分があり、相互関税がかけられても依然、競争力という意味では決して悪くなっていないという意見もある。一方、全世界的に活動している日系企業は非常に難しい判断を迫られそうだ。生産を関税率の低い国に移したとしても、その国からの対米輸出が増えればまた狙われることになりかねず、かなり不透明性が高い。高関税を課されたベトナムなど一国だけに進出している企業にはかなりの打撃になるだろう。

米国向けは米国で造るという形に整理できる部分は整理していく動きが少しずつ出てくるとは思うが、それを加味しても米国経済は落ち込む可能性が高く、米国の経済的なプレゼンスが低下するのはほぼ確実だ。企業としても国としても米国依存を減らす動きを取ることは考えていかなければならないだろう。貿易戦争のような形がさらに加速されれば、米国を入れない包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTTP)のような枠組みがより強まる可能性もある。

◎日銀の利上げ、日本経済と為替の両にらみで

<みずほリサーチ&テクノロジーズ エグゼクティブエコノミスト 門間一夫氏>

日本経済への直接の影響は明らかにマイナスで、輸出・生産・設備投資の減少を引き起こすだろう。この要因だけを考えると日銀はしばらく利上げできないことになるが、難しいのは米国の経済や金融政策にどう影響するかが分かりづらいことだ。

関税で米国のインフレは短期的に加速するだろう。もしインフレが強く出ると、米連邦準備理事会(FRB)も利下げどころではなくなり、利上げに転じる可能性すらある。そうなると円安が進行する。今、日本の物価・賃金情勢を見ると、ほぼ2%目標を達成している。ここで強い円安圧力がかかると物価が上振れてしまい、利上げの必要性が増す。

日銀の追加利上げは、この両者のバランス次第。日本経済のみのファクターであれば利上げは無理だが、円安が加速すると想定より早い利上げの可能性が出てくる。日銀としては米経済がどうなるか確認しなければならない局面だろう。

関税発動前に比べると、6月や7月の利上げの可能性は低下したとみている。米国の関税の日本経済への影響が明らかにマイナスであることに加え、石破政権が中小企業の資金繰り支援を訴えているときに金融を引き締めるのかということになる。

昨年7月に利上げした際、7月の決定会合前に為替は1ドル=160円ぐらいまで行っていた。今は150円前後だが、ここから10円ぐらい円安が進行したら利上げの可能性が高まるかもしれない。利上げに踏み切るか、160円ぐらいがひとつの節目ではないか。

◎日本は敗者、同盟関係を試す試金石

<ユーラシア・グループ 日本アジア貿易ディレクター デビッド・ボーリング氏>

日本への打撃は他国と比べても予想以上に大きい。日本は敗者だ。新たな関税政策が日米の外交関係に重大な緊張をもたらす可能性が高い。

現時点で日本が報復措置を取ることはないだろう。対抗措置がさらなる経済的損失を招くことを認識しているためだが、長期的にはこの抑制的な姿勢を維持することが政治的に難しくなる可能性がある。

日本は伝統的に貿易と安全保障を分離して対応する戦略を取ってきたが、トランプ政権が関税問題で譲歩しない場合、両国間の安全保障協力にも悪影響が及ぶリスクがある。

トランプ政権はバイデン政権から強固な日米関係を引き継いだが、今回の関税措置はこの同盟関係の強靭(きょうじん)性を試す重要な試金石となるだろう。

◎対米収支は輸入増と輸出減、円売り圧力増大へ

<みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>

米国の相互関税は、日本の対米輸出数量を抑制する材料だ。2月の日米首脳会談で、対米投資残高の引き上げや米国産LNG(液化天然ガス)の輸入増、防衛装備品の購入増などで合意したことも踏まえると、日本の対米収支は対米投資と対米輸入が増え、対米輸出が減ることになる。これを為替の需給面からみれば、円売りが一段と強まるという話である。

発表後のドル/円は米金利の低下などを受けて下落しているが、米金利は今後も高止まりが続く公算が大きい。長い目でみれば、ドル買い/円売り地合いがさらに定着することになるのではないか。

◎石破首相が行動で示さない限り税率緩和は難しい

<岡地証券 投資情報室長 森裕恭氏>

予想以上に厳しい税率となったことで、日本はここから石破茂首相の行動にかかってくる。不均衡是正を本気で考えている米国に対して、税率緩和を日本が望む場合、お願いするだけでは税率引き下げは絶望的だろう。輸入の数値目標、規制緩和など歴代政権が貿易摩擦問題で行ってきたような行動を示さない限り、緩和されることはないと考えられる。

ここで思い出されるのは、バブル期直前のプラザ合意後の円高不況と言われた局面のことだ。その際は「ドルで買いましょう」など唱える一方、内需型への経済構造の転換を打ち出すなど、政府が今より真剣に向き合っていたように思える。トランプ氏が安倍晋三元首相を引き合いに出していたが、裏を返せば現政権と今回の対応について全く信頼していないことを示すもの。当時の内需拡大などドラスチックな政策対応をしなければ米国に押し切られたままになり、本格的な株価回復は難しいだろう。

ただ、3月31日に既に日経平均は1500円幅の下げを記録していたことを踏まえると、バリュー面で下値に届いた可能性がある。売り一巡後の下げ渋りがそれを示す。いったんは自律反発に向かうのではないか。

◎日本企業による米国一辺倒の企業買収にブレーキも

<みずほ証券 M&A助言統括の木戸明宏・投資銀行副本部長>

最近の日本企業による海外企業の買収は、米国一辺倒だったが、今後は業種によって状況が変わってくる。関税をかけられる自動車などの業種では、米国企業からすれば超過利潤が得られることになり、おそらく2025年に米国企業の見ための利益は関税分だけ増える。

M&A(合併・買収)の場合それを基に買収先の企業価値を算定するが、将来的にこの政策が維持されるのかが不透明な中では、売主と買主の企業評価の差が出てきて、プライスギャップが生まれ、それが米企業買収のブレーキになってくる可能性がある。

◎日本にデフレ圧力、利上げ路線に影響も

<明治安田総合研究所 チーフエコノミスト 小玉祐一氏>

数日前には「寛大なものになる」とのトランプ大統領の発言があったが、予想以上の規模だ。今後の展開は交渉次第だが、このまま実行に移されるなら世界経済の下押し圧力はかなりのものになり、当然、米国経済も影響を受ける。日本経済にはデフレ圧力になると考えられる。このままでは夏場以降の日本経済にかなり下押し圧力がかかってくる。

景気が悪くなれば、日銀の金融政策正常化路線が中断、頓挫を余儀なくされるリスクが出てくる。6月、7月との見方が多かった日銀の追加利上げは雲行きが怪しくなる可能性が出てきた。利上げがしばらくできなくなるリスクが浮上しており、半年に一度程度という利上げのペースも怪しくなってきた。

今後の推移次第だが、次回の展望リポートまでに1カ月ある。賃金の見方は基本的に変わらないとみているが、米経済については判断を下方修正する可能性があるだろう。

◎アジアに進出した日本企業には極めて厳しい

<みずほリサーチ&テクノロジーズ チーフ日本経済エコノミスト 酒井才介氏>

トランプ米大統領が掲げた指定国の半数がアジア・インドで、米市場をターゲットとしてアジアに進出した日本企業にとって極めて厳しい状況。アジアからの対米輸出という観点でも日本企業への影響は大きいだろう。

日本に対する24%の追加関税は日本経済への影響も大きくなることが予想される。交渉余地も乏しい印象で、当面は下押し影響が避けられないとみられる。現状、社内で試算作業中だが、日本から米国への輸出が下押しされることによる直接影響に加え、米国を中心に海外経済が減速することに伴う間接影響、企業収益の下押しや不確実性の増大に伴う設備投資の下押し影響などを含めれば、日本の国内総生産(GDP)を0.5%以上押し下げる可能性がありそうだ。

これまで、内需を中心に日本経済は緩やかな回復基調が続くとみていたが、関税の影響により景気の腰折れ懸念が強まり、企業のボーナスを含めた賃上げ機運にも水を差しかねない。

関税引き上げによる物価高や米国景気の悪化、さらにはそれを受けた米国内の国民・企業の反発によって、いずれトランプ政権も関税政策を修正することになるのではないかとみているが、当面は高関税が続くことが見込まれる。日本企業としても、自動車を含め、付加価値が高く価格が上昇しても需要が落ちにくい製品の供給力を高める必要があるだろう。

◎債券市場は日銀の利上げ後ずれも意識

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 鶴田啓介氏>

発表された関税は10%をベースに上乗せも、ということで広範かつ大規模、はっきりとサプライズだといえる。日本については24%とかなり税率も高く、経済への影響は大きいだろう。

金融資本市場にも幅広くマイナスの影響が及び、それも日本経済の下押し圧力となり、金利低下要因だ。

それに伴い、日銀の利上げパスに先行き不透明感が強まったことは認めざるを得ない。

5月利上げの可能性はかなり後退し、これまでリスクシナリオだったものがもうテールシナリオになっている。それも金利低下の圧力だ。

また5月が無理なら6月は当然分からない。次の一手がままならないということで、(利上げの)ターミナル(到達点)も見えてこない。これも当然ながら「利上げできない」方向の話なので、追加的な金利の低下材料となっている。

きょうのJGB(日本国債)市場は先物が上昇、現物も金利低下でスタートしているが、米国市場の動きや関税を巡る各国の動きなども見極める必要があり、東京時間のみでこの関税の話を消化することは難しい。

市場参加者の投資目線が定まらず、金利の居どころを探る展開がしばらく続くだろう。

◎市場心理は「陰の極」、本質的には円安材料

<外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也氏>

日本に対する相互関税24%は厳しい印象がある。市場には事前に楽観ムードがあっただけに、ネガティブサプライズが増幅された。目先はリスクオフの円高を警戒しないといけない。下値めどは3月安値の146円台半ばが強く意識される。

ただ、本質的には円安材料とみていいだろう。市場心理は「陰の極」にあるとみられ、円高基調が続くとは考えにくい。関税でインフレが再燃する可能性を踏まえると、米連邦準備理事会(FRB)の利下げは目先で遅れる公算が高そうだ。リスクオフが一巡すれば、6月の利下げは厳しいとの見方になりドル買い戻しの余地が生じるのではないか。

トランプ米大統領、相互関税を発表:識者はこうみる

トランプ米大統領は4月2日、貿易相手国に対する相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に対し一律10%の関税を課した上で、各国の関税および非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。市場関係者に見方を聞いた。同日、ホワイトハウスで撮影(2025年 ロイター/Leah Millis)

日本への影響を踏まえると、対米輸出は減少し、日本の貿易赤字は拡大する方向だろう。実質国内総生産(GDP)の押し下げ効果も見込まれ、マイナス成長への懸念も出てくる。日銀による利上げは当面ないとの思惑も出やすい。

もっとも、関税を巡る交渉の中で、円安是正がテーマになるようだと円高になるリスクがあることには注意が必要になる。

◎リスクオフの円高は一時的、年末140円の見方不変

<シティグループ証券 チーフFXストラテジスト 高島修氏>

為替市場の初期反応はショッキングなリスクオフとなり、円が買われる一方、ハイベータ通貨と呼ばれる豪ドルなど、リスク回避時に売られやすい通貨の下げが目立っている。

トランプ米大統領が掲げる戦後の通商システム再構築の試みをどう評価するかは難しいが、多くの市場参加者は高水準の関税政策は持続的ではないと考えている。為替相場も初期反応的な水準調整が一巡すれば、各国との交渉を見定める段階へ移行するだろう。

ドル/円は昨年9月の140円台に続く2番底を探る展開で、145─146円付近が下値めどになると考えている。しかし、大きな日米金利差に着目した買いが下値では支えとなるため、しばらく大幅なドル安/円高は期待しづらい。

とはいえ、年末にドル140円との見方にも変わりはない。米国は5月以降に利下げを再開すると見ているが、市場はまだそれを織り込んでいない。米国との通商交渉の過程で、日銀の金融正常化や円安是正が俎上に上り続ける公算が高いことも、ドル/円の重しとなるだろう。

◎日本経済、潜在成長率下回るリスク高まる

<SBI新生銀行 シニアエコノミスト 森翔太郎氏>

日本に対する24%という相互関税の税率は、金融市場の事前想定よりも高い結果になったとみられる。第一印象としては、想定よりも厳しい税率であり、日本経済や生産活動への負の影響は避けられないとみている。交渉次第で10%まで引き下げ余地はありそうだが、非関税障壁を含めた対応がどこまで可能かは不透明だ。

相互関税よりも前に発表された自動車関税などの影響を踏まえ、2025年度の日本経済の成長率を0.1%ポイント下方修正し、プラス0.7%と予測している。仮に24%の相互関税が賦課された場合、自動車以外の幅広い品目で米国向け輸出が減少することによって、追加的に0.3%ポイント程度、GDP(国内総生産)が押し下げられる可能性があるとみている。

これは輸出減少に伴う直接的影響の試算であり、米国経済や世界経済の下振れ、企業や家計の景況感悪化、金融市場の変動次第では日本経済の下振れ幅が一段と大きくなる可能性もあるだろう。25年度の日本経済が潜在成長率を下回るリスクが高まっている。

◎EUより高い税率、世界的に日本株は出遅れに

<みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト 三浦豊氏>

想定以上に厳しい内容だった。きょうのところは大幅に下落し、日経平均は3万4000円に接近するような動きになるのではないか。全面安の展開になりそうだ。

関税率はすべて一律で10%とされたことから、いずれにしても影響は避けられなかったわけだが、24%という税率は想定外だったと言わざるを得ない。主要国の中で厳しい税率を課せられるのは日本とカナダ。EUの20%よりも日本の税率が高かったことが重要なポイントになる。

これまでも日本株は世界的に株価が出遅れていた。今回、欧州よりも厳しくなったことから、相対的にみて日本が不利であることは明らか。これまでと同様、日本株は出遅れとなる可能性が高い。

目先的には、時間外取引でナスダック先物が4%台の下げにとどまっている。過去の経験則では、この程度の下げであれば、日本株の切り返しは早い。明日には自律反発に向かうのではないか。

◎政策催促の様相、米側には事実認識のギャップも

<三菱UFJアセットマネジメント チーフファンドマネジャー 石金淳氏>

厳しめの内容となった。発表を受けて日経平均の先物が下落する一方、金利の低下が進んでおり、景気悪化を織り込んでいるようだ。米長期金利は4%付近で停滞しており、政策催促相場の様相になってきた。

欧州連合(EU)が域内経済を支援する緊急措置を準備しているとの報道もある。経済が悪くなり得る中で、各国が対策を打ち始めていることは株価のサポートになる。先行き、実体経済の指標が悪化して景気懸念が高まるケースは想定されるが、その場合は米連邦準備理事会(FRB)がハト派化せざるを得ず、株価の下値は支えられるとみている。

日本の対米輸出に関して、米政権には事実認識のギャップもうかがえる。発動までの交渉次第では条件が緩和される余地もあるのではないか。あまり弱気になる必要はないとみている。

◎日本経済への影響深刻、日銀追加利上げ時期は後ずれも

<関西みらい銀行 ストラテジスト 石田武氏>

規模が大きいことに加えて、全世界一律で関税をかけたことはサプライズだ。日本は欧州連合(EU)と比べても高めに設定されている。自動車産業への依存度が高い日本経済への影響は深刻になりそうだ。

今回の関税発動はインフレ、景気減速それぞれの原因になり得るもので、最終的にどちらに転ぶかは現状では見極めきれない。初期反応としては、米国の景気減速が意識されやすく、米金利に低下圧力がかかりやすい。

  円金利も当面低下しやすいとみている。4月30日―5月1日会合での日銀の追加利上げ観測は後退し、6月や7月会合での追加利上げも厳しくなる印象だ。市場のコンセンサスであった半年に1回のペースの利上げのシナリオが揺らぐ可能性がある。

 また、円高が一段と進む可能性や日本政府が関税障壁を下げる方向で米製品の関税を下げればインフレ低下要因となり、日銀による利上げの必要性も薄れる。

 ターミナルレート(利上げ到達点)への影響は本来ならば乏しいものの、日本の場合は利上げがかなり緩やかで、あと何回利上げを実施できるかが論点となりやすい。このため、現状の1%を超えるターミナルレートの織り込みが自動的に下がる可能性がある。

◎日本のGDP0.59%押し下げ、農産物で譲歩あり得る

<野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏>

日本に対する関税率24%は、想定より悪い最悪に近い数字。日本の国内総生産(GDP)を0.59ポイント押し下げると想定される。自動車関税が上乗せされるのであれば、最悪0.76ポイント程度の押し下げになる。

トランプ政権として各国との交渉材料として関税を打ち出したわけではないので、米国の関税を撤回させるのは容易ではない。日本としては安全保障面での米国との関係もあり、交渉カードがない。

日本は自由貿易の旗手として正面からトランプ政権の関税政策を批判し撤回を働きかけていくべきで、報復措置は取るべきでない。2019年の日米貿易協定は日本の自動車産業の対米輸出を守るために農産品で譲歩した格好で、今後、日米の貿易交渉次第では、日本側が農産品で譲歩する可能性はあり得るだろう。

今回の相互関税で金融市場の動揺、株価下落が長期化すれば、米国内でトランプ政権への批判が高まり、その場合にはトランプ政権として相互関税政策の見直しにつながる可能性がある。

◎想定以上に厳しい、減税議論進展なら株価サポート

<野村アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト(訂正) 石黒英之氏>

想定以上に厳しめの内容になった。関税率を一律10%と示したところまでは市場に安堵(あんど)感もあったが、日本は24%と伝わると日経平均の先物は急落した。今回の関税が、各国の報復措置を誘発する可能性もある。その広がり次第では、世界がスタグフレーション的な構図に陥るリスクもある。

市場はひとまずリスクオフになり得るが、今がネガティブな織り込みのマックス(最大限)とみていいだろう。相互関税の発動までに、交渉次第では緩和する可能性もある。

市場では関税への警戒感が先行してきたが、関税は、減税の財源確保の側面もある。減税の議論が進展すれば、株価もサポートされる。米政権がいかに早く、関税から次のステップに移行するかが焦点になる。

◎インフレの影響拡大へ、景気後退の恐れ

<スパルタン・キャピタル・セキュリティーズのチーフ市場エコノミスト、ピーター・カーディロ氏>

関税は少し高いと言える。この貿易戦争が政権の望むように終わるかどうかは、見守るしかない。今度は貿易相手国がどう出るか次第だ。 交渉のテーブルに着くのか、それとも報復するのか。

インフレの影響が出ると予想され、それが連邦準備理事会(FRB)にとってジレンマになる。パウエル議長は関税によるインフレは一過性だと述べているが、その影響はさらに悪化し、景気後退に向かう恐れもある。

市場には厳しい圧力がかかっており、売られ過ぎと言えるかもしれない。今後反転する可能性はある。

◎正味プラス、市場は過剰反応

<リフレクション・アセット・マネジメントの最高投資責任者、ジェイソン・ブリットン氏>

発表内容は正味プラスだと見ている。ほとんどの場合、今回の関税水準は今後の交渉の出発点に過ぎない。メキシコとカナダは追加関税の対象から外れている。市場は落ち着きを取り戻し、詳細を分析し始め、多様なニュースが混在する最も悪いときだったことに気づくだろう。

私は莫大な現金を抱えている大手テクノロジー企業に注目している。今回の影響でこれらの企業の株価が下落すれば、買いたい。市場は過剰に反応しているだけだ。

◎規模大きく驚き、中国の反応に注目

<サクソバンクのチーフマクロストラテジスト、ジョン・ハーディ氏>

発表された相互関税の規模の大きさに驚いた。当然ながら、この関税を引き下げるための交渉が始まるだろう。各国がどのような譲歩をするのか、欧州や日本に対しては防衛上の交渉材料なのか。中国は動かないと予想されるため、中国の反応は非常に興味深い。

発表内容は予想よりもかなりネガティブだ。

今後の安全な資金逃避先としては、日本円は間違いなく、日本への資本還流、米国金利の低下などが考えられる。米国債も安全な逃避先となり得る。特に短期物が注目されるが、長期物でもうまく推移する可能性がある。

共和党が減税を主張し続けるなら、(長期国債が)良い投資先となるかもしれない。だが今のところ、方向性ははっきりしている。そのため、投資先としては最も安全な金と、特に短期国債が挙げられ、長期国債はワイルドカードになるかもしれない。

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