欧州の首脳らは2日、防衛費増強で協調を図るためにロンドンで会合した。「戦後」ウクライナの安全保障に向けて、英国が提唱する「有志連合」の結成を試みた。欧州では米国がウクライナ支援を停止する恐れが懸念されている。
緊急首脳会議を主催した英国のスターマー首相は会合前にBBCとのインタビューで、有志連合は英国とフランスとその他「1、2カ国」で構成される見通しが高いとし、「戦闘停止の計画」を同連合がウクライナと策定すると述べていた。2日前にホワイトハウスで開かれた米・ウクライナ首脳会談は、意見の食い違いが異例の口論に発展し、予定されていた資源取引の署名は棚上げされ、共同記者会見は中止された。
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ロンドンで欧州首脳会合後に記者団に話す英国のスターマー首相
Photographer: Chris J Ratcliffe/Bloomberg
「歴史の分かれ道にわれわれは立たされている」とスターマー氏は記者会見で発言。会合にはウクライナのゼレンスキー大統領を含め、10数カ国の首脳が参加した。「対話を重ねることで合意する段階は過ぎた。今は行動すべき時だ。公正で恒久的な和平のためにあらためて力を入れ、指導力を発揮し、新しい計画のもとに団結する時だ」と述べた。
米・ウクライナ首脳会談の決裂を受けて、スターマー英首相はフランスのマクロン大統領らと電話会談を繰り返してきた。戦争が3年余り続いている中で、米国の支援がストップするリスクが急激に高まったことが背景にある。スターマー氏は1日に首相官邸にゼレンスキー氏を迎えた後、マクロン、トランプ両氏と電話で話しており、いずれの対話も「正しい方向への一歩だった」と述べた。
イタリアのメローニ首相は欧州首脳会談を前に英首相官邸を訪問し、欧米の同盟関係を維持する重要性を強調。「西側分裂のリスクを避けることは極めてに重要だ」とスターマー氏に述べた。
ギャバード米国家情報長官は2日、FOXニュースのインタビューでゼレンスキー氏が関係を修復して前に進みたいのなら、トランプ大統領に謝罪する必要があるとの見方を示した。「誠実な交渉に何らかの関心があることを改めて確かに示す必要があるだろう。いかなる行動にもトランプ大統領が関わりを再開する気持ちになるのは、それからだ」と述べた。
欧州が最も心配しているのは、トランプ氏がロシアのプーチン大統領と直接的で急速な外交を展開することだ。プーチン氏は2022年2月に全面的なウクライナ侵攻を開始し、今もウクライナ国土の5分の1を掌握している。トランプ大統領は欧州にウクライナ支援のリーダー役を引き渡したい考えで、欧州諸国全体で一段の防衛費増額を勧めるよう迫っている。
この日の首脳会合にはフランスのマクロン大統領のほか、カナダやドイツ、ノルウェー、トルコから代表者が出席。ウクライナの立場を強化し、「恒久的な和平」と安全保障を確実にすることを目指した。2週間前にもパリで同様の会合が開かれている。
首脳らが強調したのは、コンセンサス重視の欧州連合(EU)より速いペースでの行動と、軍事力の強い外部国を取り込む必要性だ。スターマー首相は防衛予算の国内総生産(GDP)比率を、現在の2.3%から2.5%に引き上げると公約している。ブレグジット(EU離脱)後の欧州でリーダーシップを取り戻したい考えだ。
原題:European Leaders Seek ‘Coalition of Willing’ to Secure Ukraine(抜粋)
(スターマー英首相の会見内容を加えて更新します)
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