トランプ2.0で米国はどこへ向かうのか、そして世界はどうなるのか。今後考えるべき問題について、寺島実郎氏に聞いた。(聞き手=浜條元保/中西拓司/村田晋一郎・編集部)

寺島実郎〈てらしま・じつろう〉日本総合研究所会長、多摩大学学長 1947年生まれ。73年早稲田大学大学院修了、同年三井物産入社。2002年早稲田大学大学院教授、06年三井物産常務執行役員等を経て、16年6月から日本総合研究所会長。多摩大学学長も務める。

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── 世界の政治・経済情勢を理解するために必要な視点は何か。

■英国の雑誌『The Economist』が毎年12月ごろに翌年のキーワードを挙げるが、2025年は「トランプ」「技術」「不透明」だった。この三つの言葉がそれぞれ持つ意味が、よりクリアになってきたことを見抜かなければいけない。

 トランプ2.0についていえば、驚くべき展開が起こっていると思う。2月24日の国連総会で、ロシアに対する非難と撤退要請決議が出されたが、それに米国が反対したのだ。4日後の2月28日にトランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領との会談が決裂したといわれているが、24日からの流れを考えれば想定された内容だった。

 トランプ氏とロシアのプーチン大統領は、おそらくコミュニケーションを密に取っているのだろう。例えばゼレンスキー氏には大統領としての正当性がないとか、ウクライナ戦争は侵略戦争ではなくロシア系スラブ民族間での内紛である、などといったプーチン氏の主張をトランプ氏は踏襲し、国連決議に反対したと考えられる。米国がロシアと同調している背景にある構造を見抜かなければいけない。

 我々が権威主義陣営といっているロシアや中国が展開するロジックに米国が配慮していることに気付くべきだ。これは米国が20世紀モデルから決別したといえる。20世紀の米国は二つの世界大戦を経…



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