トランプ米政権の発足で欧米の足並みが乱れている。ロシアのウクライナ侵攻を巡る対応で米国が揺さぶりをかけており、欧州で「自立」の動きも強まる。
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「欧州は攻撃下にある」。筆者は3月初旬にベルギー・ブリュッセルを訪ねたが、政策関係者の間には沈鬱な空気が漂っていた。現地にある欧州委員会や閣僚理事会、欧州議会など欧州連合(EU)機関では、冒頭のフレーズが飛び交っていたという。攻撃の主体は第2次トランプ米政権だ。
筆者はほぼ毎年、現地を訪ねている。この間、ギリシャに端を発した欧州債務危機(2010年)や、大量の難民が流入した欧州難民危機(15年)、英国のEU離脱(ブレグジット、20年)など、危機のたびにEUには「分裂」の気配が漂った。
とはいえ、一連のトランプ米大統領による「攻撃」ほどのインパクトはなかったのではないか。その震源が、自由で開かれた国際秩序を共に形作ってきた米国という現実も重い。展開次第では、EUの存続を脅かしそうだ。
他国の税制に「難癖」
第1次トランプ政権では、欧米関係は戦後最悪といわれるほど冷え込んだこともあり、欧州側は第2次政権発足に備えて準備を進めていた。フォンデアライエン欧州委員長やラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は、米国が関税引き上げを求めた際は交渉を優先する方針を表明し、液化天然ガス(LNG)や防衛装備品の購入などの用意があると示唆してきた。
しかし「攻撃」は、EUの想定をはるかに超えた。その一つが関税政策だ。米国と覇権を争う中国だけでなく、同盟国・同志国こそ、米国から「搾取」する国々として激しい攻撃にさらされた。米国と深く結びつくカナダ、メキシコ、そして、EUが真っ先にターゲットになった。
トランプ大統領が、関税強化策の一環として導入を目指すのが「相互関税」だ。相手国が米国に課すのと同率の関税を発動するもので、トラ…
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週刊エコノミスト
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