中央の四角で囲まれた星が白色矮星「WD 2226210」だ。

しかし、WD 2226-210のような白色矮星からこのような高エネルギーX線が放射されることは通常ない。このため、原因については長きにわたって謎になっていた。

そこで研究チームは、ROSATやチャンドラ、欧州宇宙機関(ESA)のX線観測衛星「XMM-Newton」などの1992年から2002年にかけての観測データを分析し、その原因の解明を試みた。

NASAのX線観測衛星「チャンドラ」。宇宙における高温の領域、例えばブラックホールの周辺や銀河団などをX線で観測することをミッションとして、1999年7月に打ち上げられた。

NASAのX線観測衛星「チャンドラ」。宇宙における高温の領域、例えばブラックホールの周辺や銀河団などをX線で観測することをミッションとして、1999年7月に打ち上げられた。

ILLUSTRATION: NASA見えてきたX線放射の原因

WD 2226-210のすぐ近くを海王星サイズの惑星が公転していることは、すでに確認されている。しかし、その惑星よりもさらに内側をもうひとつの別の木星サイズの惑星が公転していた可能性を、研究チームは指摘している。

WD 2226-210の引力によって破壊された惑星は、元々はWD 2226-210から十分に離れたところを公転していた。ところが、ふたつの惑星の引力の影響によって恒星系の内側へと移動し、近づきすぎて、WD 2226-210の引力によりその一部または全部が破壊された可能性があるという。その残骸はWD 2226-210の周囲に円盤を形成し、そこからWD 2226-210の表面に落下して衝突することで高熱を発生させ、X線が放射されている……というわけだ。

研究結果を解説したイラスト。WD 2226210を公転する惑星がWD 2226210に接近しすぎて、その引力で破壊される様子が描かれている。イラストの左上と右下に描かれているのは同じ恒星系に属する別のふたつの惑星だ。WD...

研究結果を解説したイラスト。WD 2226-210を公転する惑星がWD 2226-210に接近しすぎて、その引力で破壊される様子が描かれている。イラストの左上と右下に描かれているのは同じ恒星系に属する別のふたつの惑星だ。WD 2226-210に破壊された惑星も元々はWD 2226-210から十分に離れていたが、これらの惑星の引力の影響によって恒星系の内側へと移動していったという。

ILLUSTRATION: CXC/SAO/M.WEISS

WD 2226-210によく似た振る舞いをするX線を放射する白色矮星は、ほかにもふたつほど存在している。研究チームによると、これらの白色矮星は惑星状星雲の中心に位置しているわけではないが、光度などが変動する変動天体の新しいひとつのカテゴリーをWD 2226-210と合わせて形成する可能性があるという。

(Edited by Daisuke Takimoto)

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