1回、パンチを放つ矢吹(左)(撮影・森本幸一)
<ボクシング:IBF世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇29日◇愛知県国際展示場
IBF世界ライトフライ級王者の矢吹正道(32=LUSH緑)が血まみれの2階級制覇を果たした。
1階級上の同フライ級王者アンヘル・アヤラ(24=メキシコ)に挑戦。1、2回とダウンを奪うが3回に相手のバッティングで右目下をカットして大量出血。全身を血まみれにしながら打ち合い、最終12回に3度目のダウンを奪い、その後のラッシュで1分54秒TKO勝ちした。王座を保持したまま1階級上を制したのは日本選手初。5月に初の世界戦に挑む弟の力石政法(30=大橋)に力強くバトンを渡した。
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3回のバッティングで試合が終わったと思った。それほど矢吹の傷は深かった。それが再開後、ドクターチェックもなく最終回まで続行されたのには驚いた。良い悪いは別にして、この判断が劇的な矢吹の12回TKO勝利につながるのだから、ボクシングは難しい。
矢吹の勝因は左ジャブ。長身の王者に突き合いで勝り、1、2回にダウンを奪う完璧な滑り出しだった。バッティング後は展開が変わり、やや雑になったが、しっかりと左ジャブでポイントを奪った。
一方で最後まで勝負をあきらめずに打ち合ったアヤラの気迫も素晴らしかった。特に試合後に息一つ切れていないのには驚いた。怪物的スタミナと精神力。それを倒し切った矢吹はすごい。感動的な結末だったが、右目下の傷が心配だ。治療に時間がかかると選手生命にも影響が出る。
矢吹の勝利でフライ級戦線は、さらに面白くなった。寺地との第3戦やオラスクアガとの強打者対決、過去に敗れているユーリ阿久井とのリマッチも興味深い。5月には大橋ジムの弟・力石政法がIBF世界スーパーフェザー級王座に挑む。勝てば兄弟同時世界王者が誕生する。私も気合が入っている。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者)
【ボクシング】矢吹正道が日本人初2階級同時制覇!アヤラとの12回流血激闘を制す/ライブ詳細
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