クック諸島とニュージーランドの関係性、クック諸島の主権、経済、安全保障などが関係する記事です。
現在中国訪問中のブラウン首相による中国との包括的パートナーシップ協定(comprehensive partnership agreement)締結に向けた動きが、ニュージーランドおよび太平洋島嶼地域において議論を巻き起こしています。
上記記事は、ブラウン首相に対する不信任案提出に関するものであり、理由として1つは昨年後半からニュースになっていたクック諸島パスポート(現在はNZパスポートを使用している)導入の動きと、NZ政府との情報共有なしの中国との包括的パートナーシップ協定締結の動きがあげられていますが、記事では前者のパスポート問題に重点を置いた内容となっています。
以下、私見となります。
最近のクック諸島とニュージーランド政府との間で摩擦要因となっているものには、海底鉱物資源の採掘(ブラウン政権は推進派)、クック諸島のパスポート問題、国連加盟などがあります。特に海底鉱物資源の採掘については、太平洋島嶼地域ではナウル、クック諸島、トンガが推進派であり、自国のEEZのみならずクラリオン・クリッパートン海域を含む公海における採掘も視野に入れています。
これらの国々では海底鉱物資源の採掘が国家経済を劇的に改善することが期待されている一方で、深海底の環境への影響が不明であることから、多くの太平洋島嶼国はまだ時期尚早であり、科学調査を推進すべきという立場をとっているため、太平洋島嶼国間の分断要因となっています。
例えば、クック諸島はSeabed Miningではなく、海底に転がるマンガンノジュールを収穫するSeabed Harvestingという言い方をし、環境への影響は大きくはないという立場です。一方で、昨年、マンガンノジュールが酸素を生成しているとの論文が出されたことで、このクック諸島の考え方に待ったをかける形となっています。2月17日にはフィジーの太平洋諸島フォーラムでTalanoa on Deep Sea Minerals(深海鉱物に関する対話)が開催され、太平洋島嶼国の首脳クラスが集まります。
さて、ここで、クック諸島とニュージーランドの関係について改めて確認したいと思います。
ニュージーランド政府(ウィンストン外相)は、クック諸島の事前協議なし、情報共有なしの中国との包括的パートナーシップ協定締結は、ニュージーランドとクック諸島による「JOINT CENTENARY DECLARATION」(2001年6月11日署名)に反するものとして強く反発しています。
この宣言は、クック諸島がニュージーランドの属領となった1901年6月11日から100年後に締結されたものです。クック諸島はニュージーランドの自由連合国となっていますが、内容は米国自由連合国とは異なっています。内容を確認していきます。
1901年6月11日、クック諸島とニュージーランドの正式な関係開始(原文ではthe formal association between the Cook Islands and New Zealand bagan on 11 June 1901)。
1964年、クック諸島憲法において、自国の立法と政策承認について、クック諸島が完全な権限を有するとした。
1965年12月16日、国連総会において、クック諸島の自決権確保が承認され、クック諸島が自発的にニュージーランドの自由連合国となる。
クック諸島は、ニュージーランド王国(the Realm of New Zealand)に属しているが、クック諸島とニュージーランドは国として対等な立場にある。同王国は、ニュージーランド、クック諸島、ニウエ、トケラウ、南極のロス海属領からなり、英国王が国王であるため、クック諸島の国家元首は英国王である。
クック諸島国民はニュージーランド市民権を有しており、ニュージーランド・パスポートを保持できる。
外交関係については、クック諸島が主権独立国家として権限を有する。また、クック諸島の要請がある場合には、ニュージーランドが外交の場で代理権限を持ち、クック諸島を支援する。
両国にとって重要な外交課題は定期協議の対象。共通の外交関係の目的の追求について協力する。それぞれの権限、義務、関心に影響を与えうる外交政策イニシアティブが提案された場合には相互に助言を行う。
条約の締結は、クック諸島政府が権限を有する。
クック諸島の防衛と安全保障については、
・クック諸島政府が完全な法的・実施能力を有する。
・クック諸島の防衛についてはクック諸島政府の要請により、ニュージーランドが支援する。
・防衛と国家安全保障について相互協力、相互支援に取り組む。
・防衛・安全保障上相互に影響がありうるリスクについては定期協議と相互に助言を行う。
これまで米国自由連合国に比べてクック諸島は独立国家としての地位が弱いと考えられる傾向がありますが、この宣言を読むとクック諸島はニュージーランドと独立国家として対等の立場であることを強調しており、米国が安全保障の責務と権限を有する米国自由連合国とは関係性が異なることが分かります。
クック諸島政府は国連加盟も視野に入れているものと考えられますが、仮にニュージーランド政府が消極的な立場である場合、かつてトンガが国連加盟(1999年)の際に中国の支援を得たように、クック諸島も中国の支持を期待している可能性があるのではないでしょうか。
来週には明らかになるであろうクック諸島と中国の包括的パートナーシップ協定の内容が注目されます。
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