今週、南アフリカのケープタウンで開催されたアフリカ鉱業投資大会における討論の大半は、実質的に、アフリカ諸国の鉱業セクターと政府が進むべき最善の進路を巡るものだった。2月5日撮影(2025年 ロイター/Shelley Christians)
[ケープタウン 5日 ロイター] – トランプ米大統領の関税を利用した策略により、短期的な動揺や不確実性が生じただけでなく、世界が2つの貿易ブロックへと分裂する長期的な傾向が加速している可能性は高い。
トランプ氏の行動は、威圧的で矛盾した振る舞いという見た目を剥ぎ取れば、そこから伝わってくるメッセージはかなり明快であるように思われる。同氏の世界観は、米国の味方か、さもなければ敵だというものだ。
これは、豊かな鉱産資源を抱えるアフリカ諸国をジレンマに陥らせている。自国にとって最大限の利益を得るために資源開発は進めたいが、基本的には中立を維持したいという思惑もあるからだ。
とはいえ、トランプ陣営に肩入れするべきか、それとも中国主導のBRICS陣営との取引を選ぶべきか、アフリカ諸国が何らかの段階で二者択一を迫られる可能性はますます高まっている。
どちらのシナリオを選ぶとしても、リスクもあれば得るものもある。アフリカのそれぞれの国が置かれた状況が、どちらの陣営に傾くかを決定づける可能性もある。
今週、南アフリカのケープタウンで開催されたアフリカ鉱業投資大会における討論の大半は、実質的に、アフリカ諸国の鉱業セクターと政府が進むべき最善の進路を巡るものだった。
アフリカ大陸は現在すでに鉱産資源の主要生産地域になっているが、今後数十年にわたり、その手つかずの埋蔵資源が大きな争奪戦の的になる。エネルギー移行の加速が、それをさらに後押しする。
アフリカには豊かな鉱産資源が眠っている。銅埋蔵量では世界全体の20%、アルミニウムの原料もほぼ同じ程度、マンガンとコバルトについては50%、白金族は90%、クロムは36%、さらにリチウムやウラン、金、レアアース(希土類)の鉱脈もある。
だが、アフリカ諸国の鉱産資源の開発には往々にして高すぎるハードルが待ち構えている。政情不安や政治腐敗、貧弱なインフラ、資本の不足や法的枠組みの不備などを考えると、長期的な投資を正当化しにくいからだ。
とはいえ、特にエネルギー移行の実現に向けて鉱産資源に対する世界的な需要は高まっており、アフリカの鉱産資源を巡る争奪戦が始まる可能性は高い。今回は、その道筋に対してアフリカ諸国の発言権も大きくなるだろう。
アフリカ諸国にとっては、適切なパートナーを見つけることが課題になる。
一方の西側諸国は、これまで同様に豊富な資本と先進的な株式市場と投資家、鉱業やエンジニアリングにおけるスキルや経験を提供している。
だがトランプ政権による関税の強化や、援助その他の資金供与を停止するという脅し、さらには従来の同盟国への攻撃や二転三転する政策によって、こうした優位は揺らいでいる。
トランプ氏の大きな問題は、明らかに損得勘定を軸とした世界観を持っていることだ。つまり、世界には勝者と敗者がいなければならず、自身は常に勝者になりたがっている。
つまり、双方に利益のある「ディール」を米国から引き出すことは、トランプ氏の在任中はこれまでより難しくなることを意味する。
<施しは求めず>
アフリカ鉱業投資大会における発言で噴出していたのは、恐らくこの種のいら立ちだった。南アフリカのマンタッシュ資源相は、トランプ政権が援助を削減するのであれば、アフリカは米国への鉱産資源供給を控えるべきだと述べた。
「資金を出さないのであれば、鉱産資源も渡さないことにしよう。我々はただ施しを求めているわけではない」。マンタッシュ資源相はこ訴えた。
さらに「我々がアフリカの工業化を加速し、開発の遅れを取り戻したいという願いを抱いているのに、一部の先進国がそれを全く無視してあれこれ指図してくるのを相手にし続けるわけにはいかない」とも述べた。
こうした発言は、トランプ氏の逆鱗(げきりん)に触れかねないという意味で賢明ではないかもしれない。だが一方で、アフリカ大陸の鉱産資源を利用する最善の方法について西側諸国の考え方を改めさせることになるかもしれない。
鉱産資源がもたらす富を実現するための最善の選択肢として、アフリカはもっと、中国やそれ以外のBRICS諸国に目を向けるべきなのか。
アフリカ諸国のこれまでの経験からすれば、どちらとも言いにくい。中国はアフリカの鉱産資源の開発に前向きな姿勢を見せているが、もっぱら自国の人材やプロセスを使って進めたがる傾向がある。また、原石のままで輸出し、精錬は中国国内で行いたいと考えている。
これではアフリカ諸国にとってのメリットが限定的になってしまう。ただし、インドネシアが原材料となる資源にアクセスする条件として、企業に対して下流部門を自国内で操業することを確約させた例にならい、法制度を整えるという選択肢もあるかもしれない。
(翻訳:エァクレーレン)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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