債券市場では先週、スペイン国債の利回りがフランス国債利回りを下回った。写真はマドリードで2017年撮影(2024年 ロイター/Paul Hanna)
[1日 ロイター] – 債券市場では先週、スペイン国債の利回りがフランス国債利回りを下回った。投資家は財政の悪化するフランスを罰する一方、経済の強いスペインに報いている形。スペイン経済がユーロ圏でも最も弱い部類に入ると見なされていた10年前とは様変わりだ。
スペインがフランスをしのいでいる点を4つ紹介する。
(1)国債利回り
フランスの10年物国債利回りは先週、2008年以来初めてスペインのそれを上回った。ただ1日時点ではフランスの方が2ベーシスポイント(bp)低くなっている。
スペインの銀行が欧州連合(EU)によって救済された12年のユーロ圏債務危機時に、スペイン10年国債利回りがフランスのそれを500bp余り上回っていたことを考えれば、現在の状況は目を見張るものだ。
ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ギャレス・ヒル氏は、最近では「多くの人々がフランスからスペインに資金を移動させている」と語った。
ヒル氏は、ユーロ圏「周縁国」の一部と見なされていたスペインが、債権投資家の間で「準中核国」の地位にシフトしつつあるのかもしれないと言う。フランスは信用格付けが高く、国債発行残高で見てユーロ圏最大の債券市場を抱えているため、これまでは同国が準中核国と呼ばれている。
フランスの国債利回りはポルトガル国債をも上回り、イタリアおよびギリシャとの利回り差は急速に縮小している。
The chart shows that the gap between Spanish and French 10-year bond yields has fallen to zero, meaning investors now demand the same returns on French debt as on traditionally riskier Spanish debt
(2)財政
フランスの財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は6%を超え、EUが上限と定める3%の2倍に達している。同国の少数与党政権は支出削減と増税を模索しているが、投資家は進展の見込みは薄いと考えており、政権が短命に終わる恐れもある。
対照的に、EUの予想ではスペインの財政赤字比率は今年3%まで下がる見通し。EUはフランスに財政立て直しを提言しているが、スペインにはそうしたことは行っていない。
スペイン与党も議会過半数を握っておらず、政策決定にリスクがあるが、逆説的にそのことが財政規律の維持に役立っている。
スペインはまた、新型コロナウイルスのパンデミック後にフランスよりもずっと急スピードで債務を削減している。政府によると債務の対GDP比率は今年103%弱と、20年の約120%から下がる見通しだ。
これに対し、フランスの債務比率は昨年111%と、20年の115%から下がったが、EUが今年の議会下院選挙前に示した予想では25年に114%に上昇する見通しだ。
Chart shows France’s deficit risks coming in double the EU’s limit this year while Spain’s is seen complying with the bloc’s rules
(3)成長
スペインは好調な観光と、移民に支えられた力強い労働市場のおかげで、フランスよりも成長率が高い。
昨年の成長率は2.7%とフランスの1.1%を大幅に上回り、ユーロ圏平均の約7倍だった。フランス政府は今年の成長率も1.1%にとどまると予想している。
スペイン中央銀行は今年の成長率を2.8%と予想しており、年初の1.9%から大幅に上方修正した。
新型コロナに対応したEUの復興基金も鍵を握る。復興基金の割当額はスペイン向けがフランス向けの約4倍だ。
モルガン・スタンレーの首席欧州エコノミスト、イェンス・アイゼンシュミット氏は、スペインの財政状況が今後どうなって行くかは見通しにくいが、「高成長はシンプルに好材料だ」と指摘。半面、フランスは「どうやら財政規律が失われている上に成長率が低いという、市場から見て危険な組み合わせ」だと語った。
Growth beating euro zone peers is boosting confidence in Spain’s government debt
(4)信用格付け
フランスより債務比率が低く成長率が高いスペインだが、信用格付けはフランスの「A」(S&Pグローバル)、「Baa1」(ムーディーズ)、「Aマイナス」(フィッチ)に比べて依然2―5ノッチ低い。
スペインとフランスはいずれも09年から12年の間に最高格付けの「AAA」を失った。
スペインの格付けは一時、ジャンク級(投機級)まであと1ノッチの「BBBマイナス」まで下がったが、それ以来、S&Pから4回、ムーディーズとフィッチから2回、それぞれ格付けを引き上げられている。一方のフランスは格付けが下がる一方だ。
バークレイズのユーロ金利ストラテジー責任者、ローハン・カンナ氏は「よくあることだ。市場が先行し、格付け機関がそれに追い付く。両国の国債利回りが収れんしている以上、それは実質的に市場が『スペインとフランスの格付けは同等だ』と告げているということだ」と話した。
Chart shows how Spain’s credit rating has seen a series of upgrades by S&P Global since the euro zone debt crisis, while France’s has only seen downgrades
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