日本サッカー協会(JFA)は13日、千葉市内の高円宮記念JFA夢フィールドで記者会見を行い、3月の北中米ワールドカップアジア最終予選2試合に臨む日本代表メンバー25人を発表した。森保一監督と山本昌邦ナショナルチームダイレクターが登壇し、50分間強にわたって質疑応答した。
●山本昌邦ナショナルチームダイレクター
「3月のバーレーン、サウジアラビアとの2試合に向けて優位な立場にあることは間違いないと思っているが、相手の状況を考えるとこれまで以上に難しい相手だと思う。W杯を目指していて、我々としてはFIFAランキングを形成する上で、公式戦は係数が高いわけで、W杯の頂点を目指すまでの1試合1試合の全てのゲームが重要なゲームであり、ロードマップの中で非常に大事な部分になる。特に3月、6月は公式戦ということでポイント(係数)が高いので、全てのゲームが重要になると考えている。最終的な目標はあるが、成長し続けることができていると確信しているので、この2試合でしっかり成長し、サポーターを喜ばせることができればと考えている」
●森保一監督
「今回の3月のバーレーン戦、サウジアラビア戦をホームで戦うが、これまで同様、まずは目の前の一戦に向けて最善の準備をする、全力を尽くして戦うということで、一戦必勝の準備と戦いをしていきたい。皆さんもご存知のとおり、我々が2026年北中米W杯に向けて出場権を獲得できるかもしれない試合になるが、これから先の全ての試合に勝利してW杯出場権を掴み取る、その先の目標に向けて成長し続けるということをやっていければと思っている。まずはバーレーン戦で勝って、W杯出場権を獲得できるように、そして我々チームだけでなく、サポーターの皆さん、応援してくださっている国民の皆さんと、勝利と出場権獲得を喜び合えるように全力を尽くしたいと思っている。バーレーンの試合、サウジアラビアの試合と前半戦では勝利を掴み取ることができているが、対戦相手のチームも非常に良い準備ができているし、メンバーも入れ替えながらチーム力をアップして日本に乗り込んでくる。厳しい戦いになることを覚悟して我々も全力を尽くしたい。どうぞ応援よろしくお願いします」
——怪我から復帰した選手の入れ替えはあるが、これまで選んできたメンバーの多くが招集いる。W杯出場権争いで優位な状況の中、新しい選手を試すことも選択肢にあったと思うが、今回の選考はどのような基準で行ったか。また今回はいつもより少ない25人の招集となったがが、前回から2人減った理由は。
森保監督「今回発表させていただいたメンバーは、これまでの最終予選のメンバー編成と大きく変わっているところはないと思う。それはこれまでやってきた積み上げの部分をよりスムーズに、去年の11月から3月まで間が空いた中、よりこれまで戦ってきたこと、やってきたことを共有し、もう一度再確認して戦うことができる、勝つためのベストなメンバー編成ということで考えさせていただいた。いまJリーグでも存在感を発揮している選手、ヨーロッパなど海外でも力を発揮している選手がいる中、このメンバーの中に入っていてもおかしくない選手は数多くいる。その中で試すというよりも、まだ何も決まっていないので、目の前の勝利にどれだけ我々が力を発揮できるかということと、W杯の出場権を確実に勝ち取る、掴み取ることを優先順位の一番として考えている。またこれまでは27人を招集させていただいていて、今回は25人になったが、現在、招集できるかどうかの確認をしている選手がいる。予定としては27人を招集する予定だった。(彼らは)いまコンディション状態としては間違いなく上がっていることは確認できているが、実際にギリギリまで見て招集できるかを週末の試合を見て再度決めたい。それを含めてJリーグや海外の試合で最終的にどうするかの判断をしたい」
——先日の囲み取材で森保監督が海外移住するという案が出ていたが、こおことについてどう考えているか。
山本ND「海外の話だが、監督とは常にコミュニケーションを取っており、我々がW杯で勝つために、頂点に進んでいくために必要なことは何でもサポートする。現場でこうしたほうがいいと思えることはなんでもサポートする覚悟でやっている。常にいい状況でサポートできるようにしていきたい。ただ決まったということではない。サポートするということは常に考えている。代表チームが強くなるため、勝ち抜いていくために必要なことはしたい」
森保監督「その話で言えば移住とは思っていない。過去の視察状況を考えた時、国内組、Jリーグがあってこその日本代表ということで日本に軸を置きながら、ヨーロッパの視察を現地や映像で確認するというのを行ってきた中、過去を振り返った時にヨーロッパで生で見る時間がかなり少なく、もう少し増やすべきだということを現地で感じたという話をした。そこ(先日の囲み取材)では居住と言ったが、いまデュッセルドルフにJFAヨーロッパオフィスがあるので、そこに拠点を持ちながらやっていくことを環境づくりをしてくれている中、視察の比率をもう少し変えていくということで話をさせていただいた。全面的に強化の皆さん、山本ダイレクターもW杯で優勝するために我々が何ができるかということは全面的にバックアップしてくださっている」
——今回の試合に向けて選手たちにどのように働きかけようと考えるか。
森保監督「勝ってW杯出場を決めることと、勝ち続けてその先の目標に向けて前進すること、成長することを選手に話したい」
——今回DFは7人の招集だが、MFやFWに比べると経験の少ない選手が多い。冨安健洋がケガをしているので、もう少し人数を増やしておいたほうがいいと考えるが、どういう基準で選考を行っているのか。
森保監督「まずはより多くの選手が日本代表の戦力として考えられる、常に計算できる状況を作っていくという点ではDFだけでなく、GK、DF、中盤、前線と全てのポジションでより多くの選手たちを戦力として見ていきたいと思っている。DFの選手が少なく感じるところは個人的な見方もあると思うが、経験値としてはより高くなってほしいと思っている。11月のアウェー2連戦では経験値が高いかというとそうではないなか、選手たちはしっかりとチームを勝利に導くパフォーマンスを発揮してくれているし、経験を積み重ねてきているので、成長の過程であり、常にW杯アジア最終予選という難しい戦い、厳しい戦いで結果を出してくれることを見ている。怪我人はDF陣に多いので、そこはまたいろんな選手を見ながら戦力としていけるように、W杯の出場を決めた後に試すこともしっかりやっていきたいと思っているし、その前に国内組、Jリーグ、ヨーロッパの舞台で存在感を示してくれる選手たちをより多く見て、経験を積む環境づくりをしていきたい。怪我やアクシデントはなければ一番いいが、常に起こりうることだと思うので、その時のベストでチーム力をしっかりつけて勝っていけるように全体で共有しながら戦いに挑んでいけるようにしたい」
——FIFAランキングはW杯本大会の抽選があるが、大会自体の参加国が増える中、FIFAランキングを挙げていくことの意味は。
森保監督「今年の年末のW杯抽選会がどれだけ重要かということは皆さんもご存知だと思うが、ポットに分けられているのでどこにいるかが非常に重要な要素。その係数が高いのが公式戦。アジアはスタートが早いということでポイントがどんどん上がっているが、これからヨーロッパなどの予選が始まってくる中、ポイントが上がってくると思う。その先の親善試合は係数が下がるので、そういうところを考えつつ、ロードマップの中で一つも無駄にできないというところが年末までの全ての試合である。そのためにチーム力を上げていって最終目標に近づいていくことが大事。係数のところは細かく調べて、どういったところに行けるかは常に現場サイドも議論してくれているし、壮大な野望、(世界の)頂点を目指す中で本当に緻密に目指すことを最大限準備していきたい。FIFAのポイントはすごく気にしています」
——上田綺世は復帰したばかりだが、FW陣の現状と期待したいことは。
森保監督「(上田の)評価としては試合に出ていて、ベストなパフォーマンスを見せてもらえるだろうということは情報を取りながら招集につなげている。亨梧は移籍して出場時間が減っている中、トレーニングはしっかりしているということは確認が取れているし、ここからの準備の中で選択肢として持っているところで言うと、前田大然、中村敬斗も自チームではFWとしてプレーし、いいパフォーマンスを見せてくれているので、いろんな選択肢を持ってこのメンバーでも勝つために戦えるということは思っている。」
——小川航基は先ほどの様子を見る2人の中に入るか。
森保監督「そのとおりです。できないと判断した時には違う選択肢を考えたい」
——大船渡の火災など国内外で災害が続いているが、勝つこと以上に見せたいことは。また今晩から野球祭り(メジャーリーグ日本開催)が始まるが、その点も含めて熱いメッセージをください」
森保監督「質問が多岐に渡りますね(笑)。大船渡の森林火災等々、いろんなことで日々大変な思いをされている、日常を失われてしまった方々もいる中、被災された方々にお見舞い申し上げたい。災害等で大切な命が奪われていることもニュースで知っている。亡くなられた方のご冥福をお祈りしたい。我々は日本代表としてプロのサッカー選手、スタッフとして職業として仕事をさせていただいている中、勝利をお届けすること、優勝したり、W杯出場すること等々、勝って喜んでいただくことを目指していかないといけないし、少年少女いろんな方に夢や希望を持ってもらうことをやっていかないといけない。ただそれよりももっともっと日常の中で我々の活動でもって社会貢献できればと思っている。我々が戦う姿、選手たちが必死に戦っている姿、選手たちの日常の努力を見ていただき、国民の皆さんに日常の活力になれるようにということを大きな活動意義として、その考えを選手とも共有し、日頃の代表活動をさせていただいている。元気や勇気、根気、日常で必要な活力だと思ってもらえるように日本代表として活動していきたい。野球が盛り上がっているということで、私自身ももちろんサッカーが大好きで仕事をさせていただいているが、他のスポーツも大好き。私自身も小学校5年生の時はプロ野球選手になるのが夢だったこともあり、野球が盛り上がることはすごく嬉しく思う。野球だけでなく、いろんなスポーツが盛り上がり、スポーツで社会貢献できるということをより多くの皆さんに認識していただけるようになると嬉しいと思い、日頃活動している。サッカーで突き詰めることをやっていきつつも、スポーツ全体という思いを持って社会に貢献できるようにしたい。メジャーリーグの開幕戦も楽しみにしています」
山本ダイレクター「この2試合に向けて、3月11日には監督中心にコーチ、スタッフ、この場でミーティングがあった。冒頭で監督が黙祷を捧げて、魂を持っていい準備をしましょうというミーティングをしたとお伝えします」
——前田大然は古橋亨梧がレンヌに移籍して以降、たくさんのゴールを奪っている。カタールW杯ではストライカー起用をしていたが、最近の変化を感じている部分はあるか。
森保監督「彼の取り組む姿勢は何ら変わっていない。自分の持っている能力を活かし、最大限攻撃も守備もチームに貢献するところはこれまで通りに素晴らしい姿勢でプレーしていると思う。違っているところで言うと、明らかに結果が違う。ただJリーグの舞台では得点も取っていたし、ヨーロッパに行ってより数値としての結果というところに関して、持っている能力の中でタイミングであったり、その状況に合わせた最適なプレーをできるようになって、より攻撃が上がってきていると思う」
——王手をかけた状況で敗れたのはブラジルW杯予選のヨルダン戦のみ。前回はアウェーのオーストラリア戦で勝って出場権を手にしたが、今回はホームで、祝日で、注目が集まる。監督自身はどう感じているか。
森保監督「私自身は前回の予選から全く何も変わったことがないのが正直なところ。今回のバーレーン戦はW杯出場権がかかった試合になるが、意識していないことはないかもしれないが、一戦一戦戦っていき、一戦一戦勝利を目指す、一戦一戦成長を考えながら戦っていく上では、何か大きな気持ちが変わるようなことはない。まず目の前の一戦、W杯で出場権を取る、W杯に出て世界一になることを常に目標に持っている中、今回のバーレーン戦に関しながら勝利を目指しながらW杯の出場権を掴み取る。そこがゴールではなく、我々がW杯で優勝する、世界一になるところも踏まえて戦いたいと思う。先ほど山本ダイレクターもこの試合が今後のポット分けにとって重要になってくるという公式戦の重要性をお話しされていたが、そこも踏まえて目の前の一戦のことを忘れてはいけないが、これからの成長も踏まえて戦っていきたい」
——守田英正選手は負傷明けで、先発出場がない中でベストコンディションではないと思う。あえて無理をさせずにマインツで活躍している佐野海舟らを呼ぶ選択もあったと思うが、ボランチの選考についてどのように考えているか。
森保監督「まずは招集していない選手たちのことはできるだけ言及しないでおこうと思うが、佐野海舟も含めてこの代表のメンバーに入ってもおかしくない選手はまだまだたくさんいる。その中で今回のメンバーを決めさせていただき、守田に関しても招集はさせていただいたが、試合に出ることができる、試合に勝たせる選手はいるので、スタートで出るのか、途中出場になるのかは、これまでもつないで勝つという戦い方をしてきたので、全てを誰かに託すという考えではない。選手の素晴らしい能力をつなぎながら試合に勝ちたい。我々の活動の中では公式戦であっても親善試合であっても全て重要な試合、公式戦と同等だという中でやってきて、これまでも勝利を目指す、戦術と選手を試して幅を広げることにトライしてきたので、これからまずはW杯出場を掴み取った上で、いろんなチャレンジをしていきたい。その先の一番最後の部分で競争の中からベストな選手を選べるようにしていきたい」
——山本ダイレクターからポット分けの話があったが、森保監督はFIFAランキングについてどのように見通しを立てているか。
森保監督「見通しを立てるというより、勝ち続けるという気持ちでいる。チーム力を常に上げていけることと、勝ち続けることは考えながら前進していければと思う。どことどう戦ったらどういうポイントになっていくかは深く考えず、勝ち続ければ自然とついてくるもの。しっかりチームが成長できるように、どこと戦っても戦える力をつけられるように一戦一戦全力で戦っていきたい」
——追加招集を検討している選手がいるということだが、彼らのコンディションが思わしくない場合、27人に向けて別の追加招集を考えるのか、それとも25人のままという形もあるのか、基本的な考えを。
森保監督「基本的には27人にしたいと思っている。ただ、これまで招集してきた選手であるかないかも違ってきたりすると思うし、どういう選手を招集するかでまた考えていきたい。基本的には27人の招集を考えている。27人招集しなくても、23人しかベンチには入れない中、十分にチームとしては機能性を持てるとは思う。ただ、今後のことも含めてより多くの選手を招集させていただき、なおかつチームとして一丸で戦っていく、一体感を持って戦っていくギリギリのところを考えて招集を決めていきたい」
——最終予選3試合を残してW杯出場権が決まると史上最速になるが、ここで出場をいち早く決めることでどんなメリットがあると考えているか。
山本ダイレクター「最速ということであれば、勝ち続けているということが一番重要だと思う。出場が決まればいろんなスケジュールが固まって、逆算してさまざまな準備や視察、秋のシリーズの対戦相手を決めるところにもつながって先手を打つことができるので、早く決まったほうがいろんな最高の準備につなげていける。W杯本番の決勝から逆算できるという点で素晴らしく意味のあることだと思う」
森保監督「最速で決まればメリットしかないと思っている。メリットは選手をより多く試すことができる、そして戦力となる選手たちを増やしていくことができる。戦術の部分でもシステム、試合中の戦い方等々、いろんなことを試しながら最終予選を戦っていけるというメリットがある。ただ最速でW杯出場権を獲得したいと思っているが、そんな簡単にいくものではないということも考えている。気を引き締めて戦っていかないといけない。バーレーンはすでに代表キャンプをスタートしており、日本にももうじき到着する。また彼らはほとんどの選手が自チームで日常から共にプレーしているため、連係が取れている中、さらに代表としてもチームの戦術という点で我々への対策を徹底してくると思う。我々は招集から2回のトレーニングで戦っていかないといけない難しさがある。戦う前から勝利という結果は決まっていないので、気を引き締めて、与えられた時間の中でチームとして選手の能力を最大限発揮できるように準備して戦い、ホームの皆さんの後押しを受けながら戦って、勝利をイメージしながら準備していきたい」
——注目している選手は。欧州最高峰で活躍している選手も多いが、どのように期待しているか。
森保監督「監督として全員の選手に期待している。そういうことで招集させてもらっている」
——関根大輝選手は柏時代から継続して選出しているが、フランスに渡って初めて招集された。ここまで代表では出場していないが、初出場に向けて見せてほしいものは。
森保監督「彼はここ数年、急成長している選手だと思うし、彼自身も自分の立ち位置がどんどん変わっていって、自分自身で急速に成長を感じられるようなサッカー人生を歩んでいると感じる中、日本代表としてA代表の出場はまだないが、A代表の戦力として考えられるという力をつけている選手だと思う。スタッド・ランスに移籍し、さらに高いインテンシティの中で良さを発揮するところをここ数試合で見せ、すでに成長していると思う。起用するかはまだ決まっていないが、出場した際にはまずは守備の部分で自分の責任の中で絶対にやられないというところを持ちながら、チームとして連係連動を機能させ、彼の良さでもある攻撃のところを思い切って発揮してほしい。スタッド・ランスでも(伊東)純也と同じサイドであったり、(中村敬斗との)日本人3人の連係連動でチャンスメークに絡んでいるので、強固な守備をしながら攻撃に思い切って参加してもらいたい、チャンスを作ってもらいたいと思う」
(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア最終予選特集
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