奪った領土が“交渉条件”か…米主導『30日停戦案』ロシアは受け入れる?専門家解説【報道ステーション】(2025年3月12日)

ロシアによる本格侵攻から3年。ウクライナが30日間の停戦案を受け入れる用意があると発表したことで、これまで1度も実現することのなかった停》が現実味を帯びてきました。問題はロシアがこれを受け入れるのかにあります。

■アメリカ主導協議が“成功”

この3年で犠牲になったのは兵士・民間人合わせて5万8000人以上。独立広場の慰霊の旗は12日も増え続けています。そんな日々が一度は止まることになるのでしょうか。サウジアラビアで行われたアメリカとウクライナの高官協議は8時間を超えたといいます。

ウクライナ イェルマーク大統領府長官
「ウクライナはロシアの同意があれば30日間の停戦を受け入れます」

ウクライナが30日間の停戦の受け入れを表明。ロシアの同意があれば、さらなる延長も可能です。

■アメリカの軍事支援“再開”

一時停止となっていた、アメリカからの軍事支援と軍事情報の共有は再開されることになりました。

アメリカ ルビオ国務長官
「この戦争を終わらせ、和平を実現する方法は“交渉”です。それにはまず双方が撃ち合いをやめる必要がある。ロシアにもイエスと答えてほしいが、ボールはロシアにあります」

アメリカからポーランドを経由して届けられる軍事支援はすでに輸送が進んでいるようです。

ポーランド シコルスキ外相
「中継地を経由するアメリカ兵器の輸送は以前の水準に戻りました。スターリンクも機能していると聞いています」

軍事支援や軍事情報共有の一時停止など強硬な手段をもって、3年間動かなかった停戦への扉を少しだけ開いたトランプ大統領。ご満悦です。

アメリカ トランプ大統領
「ウクライナが停戦に合意した。さっきだ。次はロシアだ。プーチン大統領が承諾してくれれば停戦できる」
(Q.ゼレンスキー氏を再び執務室に招くか)
「もちろんだ」

ウクライナ ゼレンスキー大統領
「アメリカ側は我々の主張や提案を理解してくれた。両チームの建設的な協議についてトランプ大統領に感謝します」

■交渉中にウクライナを攻撃

ただ、共同声明では、ウクライナが求めていた長期的な安全の保障に関する議論はこれから行うことに。まず、空と海だけに限らない“全てにおける一時停戦”を盛り込むことが優先されました。

CNN セバスチャン記者
「ウクライナ側はアメリカとの関係修復が最優先と結論付けました。トランプ大統領との関係がどこまで改善したか不明ですが“モスクワへのメッセージ”としてアメリカと歩調を合わせたようです」

「多少領土を失っても停戦を」。こうした声が増えてきたのは事実ですが、ウクライナにとって譲歩を迫られた節もあります。

負傷したウクライナ兵
「譲歩できるわけがない。彼らは我々を殺しに来た。今後も殺し続ける予定だ。私はロシアがやったことを決して許さない」

ウクライナ市民
「ロシアは停戦しないと思う。ロシアはトランプ氏に『和平を望んでいる』と言いながら、交渉中にウクライナを攻撃している」

■奪った領土が“交渉条件”か

アメリカにとってはこれからが正念場。ロシアが首を縦に振らなければ、一時停戦は机上の空論で終わります。

プーチン大統領は今年1月、ウクライナ軍に再編成の時間を与えるだけだとして、一時停戦は必要ないと主張。

ロシア プーチン大統領
「和平交渉の目的は、短期的な停戦や、紛争継続を目的とする軍の再編成や再軍備のための休息であってはいけない。当事者の正当な利益に基づく長期的和平でなければ」

さらに、夫や息子が参戦した女性たちが集まった場でも…。

ロシア プーチン大統領
「我々は屈服するつもりはない。他人のものは必要ないが、自分たちのものは放棄しない」

一方的に占領しているドネツク州なども含めて「自分たちのもの」とする姿勢は変わっていません。

13日にはアメリカのウィトコフ特使がモスクワを訪問し、プーチン大統領と会談。14日にトランプ大統領とプーチン大統領のオンライン会談が予定されているとも報じられています。

ロシアが一時停戦を受け入れるか。カギを握るのは、ウクライナから越境攻撃を受けているロシア西部クルスク州です。

アメリカからウクライナへの軍事情報の共有が止まって以降、ロシア側が有利に奪還作戦を進めてきました。この状況でロシアがクルスク州をめぐって譲歩することはなく、ウクライナ側に完全撤退を求めるのではとも言われています。

ロシア大統領府 ペスコフ報道官
「先に情報を知る必要があります。近日のアメリカとの会談で詳細情報が分かるでしょう」

ウクライナに譲歩を迫ってでも取り付けた一時停戦案ですが、日々方針が変わるトランプ大統領。まだまだ先は読めません。

米シンクタンク アトランティック・カウンシル ボチュルキウ氏
「ロシアに合意の順守を求める以上、冷めた目で見る必要があります。そもそもトランプ氏が、ロシアから停戦と和平協議を取りつけるために何を提示するか分かりません」

■ルビオ国務長官“ロシアと接触”へ

アメリカのルビオ国務長官は12日、記者団に対して「ロシアとウクライナの戦争に軍事的な解決はない」と強調したうえで、アメリカが提案した30日間の一時停戦案にロシアも同意すれば「和平の実現に真のチャンスがある」と述べ、ロシアが30日間の停戦に同意するよう期待感を示しました。また、12日中にもロシア側と接触を図る意向も示しています。

■ロシアが提案を受け入れる可能性は

防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きました。

(Q.今回の合意をどうみますか)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「今回の合意では、ウクライナ側が求めていた“安全の保証”や“本格的な和平”については先送りになった。ただ、これ以上の関係悪化を避けたいウクライナは、軍事支援の再開などと引き換えに譲歩を迫られたのでは」

(Q.この提案をロシア側が受け入れる可能性はありますか)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「受け入れるかどうかは今後の協議次第。焦点となるのは大きく2つ。1つ目は制裁緩和など“アメリカから何を引き出せるか”ということ。そして2つ目、最大の焦点がウクライナに占領された“クルスクの戦況”」

クルスク州へは去年8月、ウクライナが越境攻撃を仕掛け、その後、ウクライナが一部を占領してきました。一方のロシアは奪還に向け、北朝鮮の兵士を派兵するなど反転攻勢を強め、ロシア国防省は11日『12の集落を奪還した』と発表するなど、最近、急速に領土を回復しています。

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「クルスク州を占領されたことで、プーチン大統領はメンツを潰された。自国領土を取られたまま、30日とはいえ停戦を受け入れるのは、ロシア国民に対して説明がつかない。ロシアとしては、クルスク奪還まで交渉を引き延ばすことで、より有利な条件での一時停戦の受け入れもあり得る。一方で、合意を引き延ばすと経済制裁の強化など厳しい対応を取ってくることも考えられ、トランプ大統領の矛先がプーチン大統領に向かってしまうのは避けたい」

(Q.ロシアが一時停戦を受け入れたら、恒久的和平につながる動きとなりますか)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「ロシアとしては、一時停戦に応じたとしても、何かを妥協するような状況には追い込まれておらず、少なくともあと1年は今のレベルでの戦争継続が可能。ロシアが自国領とみなす4州の完全制圧すら達成されておらず、現状では戦争を終わらせようと考えていないように見える」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2025
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

WACOCA: People, Life, Style.