アングル:欧州極右、トランプ氏のウクライナ停戦案巡り温度差鮮明に

 3月5日、 トランプ米大統領が掲げるウクライナとロシアの停戦計画や対ロシア外交について、欧州の極右勢力の間では受け止め方にかなり温度差がある。写真は2月、ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領(2025年 ロイター/Brian Snyder)

[ベルリン/ローマ/マドリード 5日 ロイター] – トランプ米大統領が掲げるウクライナとロシアの停戦計画や対ロシア外交について、欧州の極右勢力の間では受け止め方にかなり温度差がある。トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領が2月28日、ホワイトハウスにおける会談で戦争終結を巡り激しい口論に発展したことで、そうした事実が浮き彫りになった。

欧州の極右は、社会の片隅に置かれていた政治運動を主流派にしてくれたという意味で、トランプ氏の大統領復帰を祝福。「欧州を再び偉大にする(Make Europe Great Again(MEGA)」という実業家イーロン・マスク氏の呼びかけにも賛同した。しかしトランプ氏がゼレンスキー氏を「叱責」したことや、民主的な欧州国家に対してロシアのプーチン大統領がもたらす明らかな脅威にトランプ氏が無関心な様子に胸を痛めている向きもある。

ゼレンスキー氏は停戦の一環として米国がウクライナの安全を保証すべきだと言い続け、これに激高したトランプ氏は3日、ウクライナ向け軍事支援を凍結した。

こうしたトランプ氏の姿勢を断固支持したのはハンガリーのオルバン首相、ドイツの極右政党であるドイツのための選択肢(AfD)のクルパラ共同代表、イタリア右派連立政権の一角を占める「同盟」を率いるサルビーニ副首相などだ。

一方で英国の右派ポピュリスト政党「リフォームUK」のファラージ党首や、ポーランド右派政党「連盟(コンフェデラツィア)」共同指導者のクシシュトフ・ボサク氏は、全面的な同調を控えるか、トランプ氏の欧州やウクライナに対する冷淡な態度を公然と批判している。

このような温度差は、欧州の極右勢力が決して一枚岩ではなく、それが欧州連合(EU)における政治的影響力を弱め、「MEGA」のスローガンで反EU気運を高めようとするマスク氏の取り組みに限界をもたらしていることを示すものだ。

キングス・カレッジ・ロンドンで欧州情勢研究の講師を務めるアレクサンダー・クラークソン氏は「(欧州の極右勢力と)トランプ氏との間には、必ずしも対左派勢力のようなあからさまな対立に発展しない幾つかの要素の組み合わせがある。しかし欧州統合に前向きな姿勢を強めている極右政党とトランプ氏の間には隙間風が生じる」と説明した。

ウクライナ停戦問題でいち早くトランプ氏を擁護したのはハンガリーのオルバン首相で、ゼレンスキー氏とトランプ氏の口論後、X(旧ツイッター)にトランプ氏は「多くの人々にとって受け入れるのが難しいとしても、和平に向けて勇敢に立ち向かった」と投稿した。

<有権者に戸惑い>

2月の総選挙で第2勢力に躍進した親ロのAfDもトランプ氏と足並みをそろえた。

クルパラ共同代表はXで「EUとドイツが残念ながら仲裁者として失敗した以上、米国とロシアが(ウクライナ問題で)合意に達しなければならない」と記した。

AfDの最も過激なグループを率いるビョルン・ヘッケ氏は、ゼレンスキー氏が「ホスト役のトランプ氏を侮辱すると決断した」ことが米国の怒りにつながったと言い切った。

ただスペイン極右政党ボックス(VOX)の関係者の見方はやや慎重で、欧州右派の一部がプーチン氏を公然と支持して有権者を戸惑わせていると指摘。「トランプ氏の予測不能さがわれわれを混乱に陥れている。果たしてわれわれはプーチン氏を攻撃するのか、あるいはトランプ氏のプーチン観に合わせるのだろうか」と疑問を投げかけた。

これに対して歴史的経緯からロシアによる支配への恐怖感が根付いているポーランドのコンフェデラツィアは、トランプ氏とプーチン氏の双方を非難した。

ボサク氏は「トランプ氏は選挙戦の公約や自身の想像に反し、プーチン氏から早急な和平を勝ち取れなかった。米国の大統領が誰であろうと、プーチン氏は引き続きこの戦争をどのぐらい続けるかの決定権を握っている」と主張した。

よりあいまいな態度を示したのはリフォームUKのファラージ氏で、ウクライナは和平に動く上で適切な安全保障を必要としていると、ゼレンスキー氏に同意する投稿をXにした後、今度はラジオ放送で「外交的見地から見ればゼレンスキー氏の振る舞いは大変まずかったと思う」と発言した。

フランス国民連合の実質的指導者マリーヌ・ルペン氏は、トランプ氏とゼレンスキー氏のどちらにも与しない姿勢を示した。

<落とし所>

イタリア右派政権を率いるメローニ首相は就任以来ずっとウクライナを強く支持してきた一方、トランプ氏と良好な関係を築いている。

トレント大学のエマヌエーレ・マセッティ教授によると、メローニ氏は、防衛面で欧州への支援を確保しつつ、トランプ氏を怒らせない「落とし所」を探ろうとしており「できるだけ発言しないようにするか、米国との協力維持の必要を強調する一般論を掲げるのが主な戦略になる」という。

メローニ氏の与党「イタリアの同胞」に属し、外務副大臣を務めるエドモンド・チリエッリ氏は「われわれは欧州人で、玄関口で起きているウクライナ問題は緊密に関わってくる。われわれは立場を固め、それを貫こうとしている」と述べた。

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Berlin correspondent who has investigated anti-vaxxers and COVID treatment practices, reported on refugee camps and covered warlords’ trials in The Hague. Earlier, he covered Eastern Europe for the Financial Times. He speaks Hungarian, German, French and Dutch.

Madrid-raised German-American breaking news in Spain and Portugal. Previously covered markets in Germany, Austria and Switzerland, with a special focus on chemical companies and regular contributions to Reuters’ German-language service. Worked at Spanish news agency EFE (Madrid/Bangkok) and the European Pressphoto Agency (Frankfurt).

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