写真提供:ロイター/共同通信イメージズ
小さなガレージで生まれたパソコンメーカーのアップルを世界的ブランドに育てたスティーブ・ジョブズ。1985年に社内対立で退職したあとNeXTやピクサーを成功に導き、1997年にアップルへ戻るとiMac、iPod、iPhoneなど革新的な製品を次々と世に送り出した。本連載では『アップルはジョブズの「いたずら」から始まった』(井口耕二著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集し、周囲も驚く強烈な個性と奇抜な発想、揺るぎない情熱で世界を変えていったイノベーターの実像に迫る。
今回は、初代iPhoneの開発と製造を進めたジョブズらしい発想と、発売時に見せた“史上最高”のプレゼンを紹介する。
大ヒットしたiPodを葬りiPhoneで世界を変える
いま、スマホのない生活など考えられない。
出かけるとき、鍵とスマホさえあれば、最低限はなんとかなってしまう。財布は忘れても大丈夫。いや、スマホで解錠できるようにしておけば、鍵もなくていい。
逆にスマホを忘れるとどうにもならない。どう乗り継げばいいのかもわからないし道もわからない。連絡もできない。なにか食べようにもメニューさえ見られなかったりする。
iPhoneが世界を変えたからだ。
■ iPodがこけたら大変だ
iPhone開発のきっかけは、iPodの大ヒットだった。収益も大きく上がるようになったし、ヒップな会社というイメージに磨きがかかったし、つられてマックもよく売れるしでいいことだらけだったのだ。
それだけに、iPodがこけたら大変だ――ジョブズはそう考えた。
ライバルになりうるのは携帯電話だ。そのころ、デジタルカメラ市場がカメラ付き携帯電話にものすごい勢いで侵食されていた。その携帯電話が音楽プレイヤー機能を取りこんだらiPodなどひとたまりもない、そうなる前に自分たちで音楽プレイヤー機能を持つ携帯電話を作ってしまおうと考えたわけだ。

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