「なぜ助けてやれなかったのか」亡き息子を伝え続ける母親 遺族がつながり命を語る【東日本大震災14年】 (25/02/26 18:21)

東日本大震災の発生から3月11日で14年となります。「あの時、そして今」と題して震災を見つめるシリーズ、2月26日は遺族同士の支えの中で、息子の命を伝え続ける語り部です。

宮城県名取市にある津波復興祈念資料館「閖上の記憶」。ここで震災の記憶と教訓を未来へ伝える「語り部の会」が定期的に開かれています。

丹野祐子さん
「津波というものは人の命を飲み込む。家がなくなる。街が消える。そういうことを知ったのは自分が経験した後でした。この時は何も怖くなかった。だから揺れが収まったら、片付けが終わったら、また明日会える。そう思って気を付けてねって軽い気持ちで手を振ったんです」

「閖上の記憶」を立ち上げた、丹野祐子さん(56)。津波で13歳の息子・公太さんと夫の両親を亡くしました。「津波は来ないから大丈夫」そう考えた、あの日の自分を振り返りました。

丹野祐子さん
「水がくるのかな、泳いだら助かるんじゃないか。そんな馬鹿なことを考えていたんです。人間って本当に愚かで、自分に経験がないものを想像するということができなかったんです」

閖上地区は名取市内で最も被害が大きく、9メートルにも及ぶ大津波が押し寄せました。5000人以上が暮らしていた街は建物のほとんどが全壊し、754人が命を落としました。公民館にいた丹野さんは津波を逃れましたが、息子の公太さんは、避難の途中で津波にのまれました。

丹野祐子さん
「なぜ私が死ななかったのか、なぜ息子が亡くならなくてはいけないのか、なぜ助けてやれなかったのか。後悔ばかりがぐるぐるぐるぐる、頭の中を回っています」

同じ後悔を繰り返さないために。丹野さんは震災の翌年から語り部の活動を続けています。それは、亡くなった公太さんへの思いでもあります。

丹野祐子さん(2015年当時)
「お母さんだけ生きていてごめんね、その思いで毎日生きている。同じことが二度と起きないように、同じ思いを二度と誰にもしてもらいたくないので、あえてこんなふうにしか生きられない」

生きることが辛いと感じることもあったという丹野さん。そんなとき支えとなったのが、別の事故で家族を亡くした遺族同士のつながりでした。

群馬県上野村。40年前、日本航空のジャンボ機が墜落し、520人が亡くなった現場です。丹野さんは2015年から、慰霊登山に加わり、遺族会との交流を続けています。9歳で亡くなった美谷島健さんの墓標。健さんの母・美谷島邦子さんは、丹野さんに「悲しみによってつながる人たちがいてもいい」と伝えました。

美谷島邦子さん
「私は健と一緒に登っているので。やっぱりそこだと思うので思いは一緒なので」
丹野祐子さん
「ここは一つの場所、みんなが集まる場所。その集まる場所をずっと引っ張ってきたのが美谷島さんの力だと思う」

閖上と群馬を互いに行き来する交流は続いています。この日は、美谷島さんが閖上を訪れ、講演しました。話を聞く人たちに美谷島さんが伝えたのは「悲しみの居場所を作ることの大切さ」です。

美谷島邦子さん
「人の心の痛みは人でしか治せない。心の傷を聞いてくれる誰かがいることが大切です。私はもし幸せというものに数値があるとするならば、この心の傷を聞いてくれる誰かがいることではないかと思っています」

丹野さんとの出会いをきっかけに、これまで何度も閖上に足を運んできた美谷島さん。閖上で感じたことがありました。

美谷島邦子さん
「ここ(閖上)は何かを始める場所なんだな、ここにつながってくる方たちは何かを始めたいというエネルギーを感じた」
丹野祐子さん
「悲しみでつながる、みんなが集まる、そんな優しい時間を過ごすことができた。私よりもずっと前を歩く美谷島さんが道を作ってくれたんだなと勝手に背中を追い続けている」

宮城県亘理町から訪れた人
「伝えることの大事さ、それが一番。2人が、一人でも多くの人を助けたくて自分の体験を話しているということは本当に素晴らしいこと」
和歌山県から訪れた人
「絶対に他人事でものを見てはいけないことを、この年齢になって今頃気づいた。そういうことに気づかせてくれる。それが活動されている方からの言葉ではないかと感じる」

3月11日、今年も閖上では震災で亡くなった人たちへの思いをハトの形の風船に乗せて飛ばす「追悼のつどい」が開かれます。みんなのことを忘れないために。まもなく14年、語り続ける必要があると丹野さんは考えています。

丹野祐子さん
「私自身、10年目とか13年、14年という区切りはどこにもないと思っている。ただ間違いなく、あの日から14年という時間が過ぎた。景色は大きく変わった。変わった今だからこそ、あの日を思い出すことが必要だし、震災を知らない世代に知ってもらう、伝える必要が今の私たちの大事な仕事だと思っている」

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