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 CPUやビデオカードは、性能が高くなれば高くなるほど消費電力が大きく、発熱も大きくなる。温度が高くなるとまともに動作しなくなることもあり、ゲーミングPCはいかにCPUやビデオカードの熱を冷ますかがポイントになる。

 手っ取り早い解決方法は、高性能なクーラーを搭載し、冷却力を底上げすること。一方で、基本的にクーラーの性能は、ラジエーターやヒートシンクのサイズに比例する。つまり、高性能なクーラーほど大型化していくのだ。

 大型クーラーを採用するには、当然PCケースも比較的大きめのものが必要になる。もちろん、スペースが許せば小型のPCケースにも搭載できるが、余裕がなければエアフローが悪化し、クーラーが本来の性能を発揮できなくなることもある。

 アッパーミドルクラス以上のゲーミングPCで、タワー型モデルが多い理由はここにある。とはいえ、タワー型PCを机の上に置くと、圧迫感がものすごい。ビデオカードのサイズを考えると奥行きは仕方ないが、せめて高さがもう少し低ければ……と思っている人は少なくないだろう。

 そんな人にオススメしたいゲーミングPCが、サイコムの「G-Master Spear Mini B850A」だ。PCケースにLian Liの「A3-mATX」を採用し、幅は194mm、奥行きは443mmとミドルタワーに近いが、高さは306mmと約3分の2で容量は26.3Lだ。2回にわたり、詳しく紹介していこう。

140mmファン×2の最強クラス空冷クーラーも選べる

 G-Master Spear Mini B850Aは、ミドルタワーPCと比べると圧倒的にコンパクトだ。しかし、内部はMicro-ATXのマザーボードが入るので相応の拡張性がある。

 それでいて、巨大な空冷CPUクーラーが搭載できる点もうれしい。試用機では標準構成からNoctuaの「NH-D15 G2」に変更されていたが、十分余裕をもって取り付けられていた。

 NH-D15 G2は8本のヒートパイプで2つのヒートシンクに熱を分散し、それぞれを140mmファンで冷やすという、かなりマッシブなデザインだ。

 CPUから出た熱をこのクーラーで風に乗せ、背面のPCケースファンですばやく排出するというレイアウトになっている。PCケースは小型だが、このエアフローは一般的なタワー型PCケースと同じ志向だ。

 また、奥行きに余裕があるため、アッパーミドル~ハイエンドの大型ビデオカードも余裕で内蔵できる点もいい。試用機では、サイコム独自の超静音ビデオカード「Silent Master Graphics RTX4070 SUPER 12GB」を搭載。厚み70mm、長さ278mmという大型モデルだが、これでもまだ余裕を感じた。

 これだけ厚みがあるとビデオカードの吸気が厳しいのではないか、と心配になってしまう人もいるだろう。だが、そこは安心してほしい。底面はメッシュになっているため、冷たい外気を直接取り込めるようになっている。

 ちなみに、天面もメッシュ仕様だ。PCケースファンだけに頼らず、自然と熱を外部に排出できるよう工夫されているわけだ。これなら小型PCでも安定運用が期待できる。

 通常のPCケースと大きく違う点は、電源ユニットのレイアウトだろう。一般的には背面側の上部、もしくは下部にあることが多いが、前面上部に配置している。

 その昔、前面上部は5.25インチ/3.5インチベイの特等席だったが、時代の変化で最近はあまり見かけなくなった。その空いた部分をうまく電源ユニットのスペースに転用することで、無駄のないレイアウトになっている。

 なお、電源ユニットはSFXなどの小型品ではなく、通常のATXサイズ。そのため、BTOオプションでは最大1000Wの大容量モデルまで選択できる。ハイエンドビデオカードを搭載したい人でも安心だ。

前面にもUSB Type-Cを装備

 G-Master Spear Mini B850Aのインターフェースもチェックしてみよう。まずは前面から。

 USBはType-Aが2つと、Type-Cが1つの合計3つ。これとは別にマイク入力とヘッドフォン出力を備えているため、USB接続に限らず、アナログ接続のヘッドセットなども使える。

 容量26.3Lのコンパクトな筐体なので、机の上で使う前提なのだろう。インターフェースは下部に配置され、接続時にケーブルが宙を漂わないようになっている。デザイン性が優れたPCケースだけに、こういった部分へのこだわりに好感がもてる。

 背面のインターフェースは、デスクトップPCだけあって充実。USB Type-Aが7基(USB 3.2 Gen 2が1基、USB 3.2 Gen 1が2基、USB 2.0が4基)、USB Type-C(USB 3.2 Gen 2)を1基備え、多くの周辺機器を接続できる。

 ネットワーク機能もしっかりしており、有線は2.5GbEに対応。無線は6GHz帯も利用可能なWi-Fi 6Eに対応し、2.4GHzや5GHz帯が混雑していても、快適な速度で利用できるはずだ。

 安定した通信を重視するなら有線LAN、ケーブルを引くことなく手早く利用したいならWi-Fiと、ユーザーの環境に合わせてネットワークを選べる点がうれしい。

サイズ感はもちろんだが、デザイン面でも秀逸

 吸気ファンは搭載していないものの、試用機で採用している「A3-mATX Black Wood Edition TG」は、前面パネルの中にメッシュを採用。それが目立たぬように、表面からは木材のスリットしか見えない、というデザイン性の高さも魅力の1つだろう。

 なお、試用機は黒ベースに木材を組み合わせたデザインだが、これ以外にブラックやホワイトも選択可能。また、サイドパネルが強化ガラスではなく、よりシンプルなメッシュスチールも選べる。内部を隠してスマートな印象にしたいという人なら、そちらを選ぶといいだろう。

 CPUやビデオカード、メモリー、SSDといった主要パーツはもちろん、PCケースの色やサイドパネルまで変更できるBTOオプションの豊富さも好印象。自分好みにカスタマイズし、最高の1台を手に入れたい。

 今回はG-Master Spear Mini B850Aの外観や内部を紹介した。気になる性能面については、次回紹介する予定だ。

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