昨年12月の名目賃金は伸び率が1997年1月以来の高水準となった。賞与など特別給与の増加に加え、基本給に当たる所定内給与も高い伸びを維持。日本銀行が1月の利上げ判断で重視していた賃金のモメンタム(勢い)を裏付ける内容だ。

  厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は前年同月比4.8%増と、市場予想(3.7%増)を上回った。同増加率の約7割を賞与など特別に支払われた給与(6.8%増)が占めた。所定内給与は2.7%増と32年1カ月ぶりの高い伸び。物価変動を反映させた実質賃金は0.6%増と2カ月連続で前年を上回った。

  エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けない共通事業所ベースでは、名目賃金は5.2%増と、同ベースでの公表が開始された2016年以降で最高となった。所定内給与は2.9%増だった。

  日銀は先月の金融政策決定会合で昨年7月以来の利上げを決定。植田和男総裁は会合後の会見で、利上げ理由の一つに、今春闘で「しっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した」と説明していた。賃金と物価の好循環を目指す日銀は、今後も経済・物価見通しが実現すれば利上げを継続する姿勢を示している。市場の関心が次の利上げの時期とペースに移る中、賃金上昇の持続性が引き続き焦点となる。

  野村証券の岡崎康平チーフマーケットエコノミストは、実質賃金のプラスが継続するとまでは言えないが、「賃金をしっかり払うという企業の姿勢が明確に印象付けられる結果」で日銀にポジティブと指摘。次回利上げのメインシナリオを7月としながらも、今春闘で中小と大企業の賃金格差縮小が明確になれば、4-5月会合での利上げも「リスクシナリオとして市場は無視できなくなるのではないか」と語った。

  毎勤統計の発表後、外国為替市場では円買いが優勢となり、一時1ドル=153円89銭を付けた。発表前は154円40銭台で推移していた。債券相場は下落し、長期金利は前日に続いて約14年ぶり高水準を更新した。

名目賃金は1997年1月以来の伸び

 

 

  ブルームバーグが先月の日銀会合直後に実施した緊急調査では、政策金利を0.75%程度に引き上げる時期は7月が56%と最多で、次いで9月が18%、6月が9%だった。

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  今春闘に向けては昨年に続き労使が協調して賃金の底上げに取り組む姿勢を示しており、日銀の政策正常化を後押しする。連合は賃上げ目標を24年と同水準の「5%以上」とし、中小企業は格差是正分を加えた「6%以上」に設定。経団連は「分厚い中間層の形成と構造的な賃金引き上げの実現」への貢献を社会的責務とし、賃上げの力強いモメンタムの定着を図る。

  SOMPOインスティチュート・プラスの小池理人上級研究員は、金融政策を見通す上で今春闘の賃上げ幅を注目点に挙げた。その上で、「ここからは春闘の結果がどうなるのか、それが毎月勤労統計にどの程度反映されていくのかを注意深く見ていくという順序になってくる」と語った。春闘では、大企業で昨年並みの賃上げがなされるのか、また中小企業がそれにどこまでついて行けるかが鍵になると見ている。

  実質賃金の算出に用いる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は12月に前年比4.2%上昇。政府による電気・ガス代補助金の終了が影響し、23年1月以来の高い伸びとなった。

  24年通年の名目賃金は前年比2.9%増と33年ぶりの高い伸び。実質賃金は0.2%低下と3年連続のマイナスとなった。消費者物価指数の上昇率は3.2%だった。

(チャートとエコノミストコメントを追加して更新しました)

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