カリフォルニアだけでなく、外来種は世界中で火災の危険を引き起こしている。ポルトガルでは、ユーカリのプランテーションが大規模な山火事を引き起こし、アメリカ西部のグレートベイスンからチリの熱帯林まであらゆるところに草原火災が広がっている。「これは世界中の在来生態系にとって大きな脅威です」とサフォードは言う。「国際的な関心も高いので、もし誰かが草をうまくコントロールする方法を見つけられたら、かなりの発見になると思います」と彼は付け加える。

適切な植生管理の重要性

植生管理は火災の軽減に重要な役割を果たす。「現在、人々が草を管理する最善の方法は、毎年春に作業員を派遣し、道路脇の草を手で伐採することです」とダントニオは言う。「わたしは山間部に住んでいるのですが、わたしたちのコミュニティには、毎年ボランティアとともに道路脇を清掃し、枯れ草をかき集めるグループがあります」

これは、ロサンゼルスの山火事の際にソーシャルメディアで再浮上した「林床をかき集める」という2019年のトランプ大統領の誤解を招く主張と混同されるべきではない(道路脇の草むらには有効かもしれないが、林床の木質瓦礫には使えないからだ)。また、落ち葉掻きは植生管理の一方法だが、効果的な火災予防には、管理された焼き畑、戦略的放牧、そして主要地域から枯れた植生の除去など、より広範なアプローチが必要だ。

一部の地域では、草の成長を管理するための低負荷な方法として、羊の放牧が試験的に行われている。南カリフォルニアの一部では、「Burn Bot(バーン・ボット)」と呼ばれる機械が試験的に使用されている。この機械は地面を移動しながら、その真下にあるすべてのものを燃やすことによって制御された焼畑を行ない、既存の植生と種子の両方を除去する。

ダントニオらは火災が起こりやすい地域を、より火災に強い在来種の草に置き換える方法を研究している。「一旦定着すると、かなり深く根を張り、土壌の水分をより深く利用できるため、夏の間もより湿った状態を保つことができるのです」と彼女は説明する。「わたしたちの目標は、自生できる在来多年草による植生をつくり、わたしたちの継続的な維持管理を不要にすることです」

住宅の所有者にも重要な役割がある。「火災が起こると、誰もが森林局のせいにしたがります。でも、わたしたちはこの風景の中に住むことを選んだのです」とダントニオは言う。「だから、まずは自分の家から始めましょう」。アクニャは、カリフォルニア州森林保護防火局が、景観を整えて防火帯を設けるといった、住宅や土地の所有者の防火対策に役立つヒントを提供していると語る。

結局のところ、外来植物は、地域社会の参加、責任ある土地管理の実践、従来の生態系を回復するための先進的な研究など集団的な行動を必要とする問題だ。このような取り組みがなければ、カリフォルニアの山火事の危機は、さらに深刻化するだろう。

(Originally published on wired.com, translated by Emi Urabe, edited by Mamiko Nakano)

※『WIRED』による火災の関連記事はこちら。

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