暗号資産(仮想通貨)業界を巡るトランプ米大統領の積極的な姿勢がアジア全域に影響を及ぼす中、アジアの一部主要国でデジタル資産市場に対する前向きな変化が広がりつつある。日本のほか、タイやマレーシアの当局者らが年末あたりからその兆しを見せている。

  日本の金融庁関係者が匿名を条件に語ったところによれば、同庁が立ち上げた有識者の勉強会は、世間で暗号資産が投資対象として位置付けられつつあるとの認識でおおむね一致した。この認識のもと、有識者は利用者保護を強化する必要性について議論をしており、暗号資産を金融商品取引法の対象とすべきかなどについて検討している。

  ブルームバーグ・ニュースは、金融庁が昨年10月に資金決済法の下で暗号資産を規制する現在の枠組みが適切か判断するための点検に着手したと報道。関係者によると、同勉強会の事務局をつとめる金融庁は、可能であれば6月末までに点検結果をとりまとめたいと考えている。

  金商法の対象となれば、暗号資産は金融商品として、より厳しい規制に直面することになるが、投資家保護が強化されることにより、暗号資産上場投信信託(ETF)の承認などに道が開かれる可能性もある。

  アジア太平洋地域では既にシンガポールや香港が仮想通貨取引ハブ形成を目指している。一方、中国は、2021年の仮想通貨禁止を受け活動が抑えられている「眠れる巨人」だ。

  こうした中、タイではビットコインETFの国内取引所への上場承認が検討されている。24年1月に同様のETF上場を承認した米国に続くもので、同国初となる。

  タイ証券取引委員会(SEC)のポルナノン・ブドサラトラゴン事務局長は今月15日、「好むと好まざるとにかかわらず、世界中で仮想通貨の採用が広がるよう進めていく必要がある」と述べた。

  また、マレーシアのアンワル首相はアラブ首長国連邦(UAE)での最近の会見で、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むに当たり、ブロックチェーンや暗号資産を優先すべきだとの考えを表明。「他国が先導するのを待つべきではない。ゼロから始める余裕はなく、他国の経験から学ぶ必要がある」と語った。

  ニュースレター「クリプト・イズ・マクロ・ナウ(Crypto Is Macro Now)」の筆者、ノエル・アチェソン氏はトランプ氏が昨年11月の米大統領選で勝利した後、各国が後れを取ることを懸念し、「暗号資産市場の枠組み構築に向けた国際的な競争」が起きると示唆。

  17日付けのニュースレターで「これまでは時間をかけることができた。米国がデジタル資産に関し動いていなかったからだ。しかし、競争は今、現実のものになった」と述べた。

原題:Crypto Fears Ease in Asia as Officials Aim to Keep Up With Trump(抜粋)

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