生鮮野菜は、去年1年間を通してみても、前の年より値上がりしています。
東京23区の去年1年間の消費者物価指数の速報値では、「生鮮野菜」は、2020年の平均を100として121.2となり、前の年より9.8%値上がりしました。
品目別にみると、たまねぎは26.5%、はくさいは23%、キャベツは21.6%、きゅうりは19.6%、レタスは19%、それぞれ前の年より値上がりしました。
農林水産省がまとめたキャベツの小売価格の平年比での推移を見てみると、去年は3月ごろから上昇しはじめ、5月には2倍近くまで値上がりしました。
その後は、下落に転じ、6月の中旬ごろには、いったん平年並みに落ち着きます。
しかし、9月下旬からは、ふたたび上昇しはじめ、年末まで値上がりが続き、12月下旬には平年の3.3倍まで値上がりしました。
一方、去年はコメの値上がりも続き、去年1年間の東京23区の消費者物価指数の速報値では、「米類」は前の年より27.1%値上がりしていて、毎日の食卓に欠かせない品々の値上がりが、消費者の負担につながっています。
【青果店では高値が続くキャベツなどの売れ行きが落ち込み、代わりに比較的価格の安いジャガイモなどが伸びる】
青果店では、高値が続くキャベツなどの売れ行きが落ち込み、代わりに比較的価格の安いジャガイモなどが伸びています。
神奈川県平塚市の青果店では、契約農家や自社農場で栽培した野菜や果物を販売していますが、葉物野菜を中心に高値の状態が続いています。
この店では、キャベツが1玉400円、ネギが1キロ350円と、ともに去年の同じ時期に比べて2倍ほどになっているということです。
このため店では、葉物野菜を中心に売れ行きが2割から3割ほど落ち込んでいるということで、売れ残りが出るのを防ぐため、通常に比べてできるだけ仕入れ値に近い価格で販売するようにしています。
一方で、ジャガイモやにんじんの価格は、去年の同じ時期に比べて1.2倍から1.3倍ほどに落ち着いていて、売れ行きは好調だということです。
「新鮮野菜ひろば土屋の直売所平塚店」の高橋陽介さんは、「値段が高いからといって店も利益がとれている状況ではない。生産者側も収穫量が少なく、潤っているわけではないので、双方のためになることを意識していきたい」と話していました。
一方で、客からは家計への影響を抑えるため、できるだけ価格が低い野菜を購入しているという声が多く聞かれました。
50代の女性は、「葉物を買うのを減らして、根菜で煮物を多く作るなどしています。子どものためバランスのいい食事を作らないといけないので安くなってほしいです」と話していました。
また30代の女性は、「キャベツなどが高くなっていてあまり買わなくなりました。カットされている千切りの商品を買ったり白菜を買ったりして代用しています」と話していました。
【千葉 銚子市の農家から気象条件の変化による生産への影響指摘する声も】
野菜価格の高騰について、キャベツや大根の生産が盛んな千葉県銚子市の農家からは、気象条件の変化による生産への影響を指摘する声も出ています。
銚子市では2月以降に収穫のピークを迎える「春キャベツ」が主に生産されていて、この時期は、早めに栽培を始めた分の収穫が行われています。
市内の農家の山口高由さんは、代々受け継いできた畑でキャベツの栽培を行っていて、15日朝も家族で収穫作業を進めていました。
いま収穫しているのは、去年の秋ごろに苗を植えたキャベツで、植え込みの時期に雨が多く根づきにくかった上、年末からは雨が少なかったため、生産量は例年より少なくなっているということです。
山口さんは、「近年は異常気象なのか、長雨があったり強い台風が来たりしているし、野菜の病気も広がりやすくなっています。基本的には露地物で気象条件に左右されるので、生産が難しくなってきていると感じています」と話していました。
また、市内で野菜を生産している別の農家は、いまの時期は主に大根を収穫しています。
同じように去年の秋以降の雨の量で生育に影響が出ているほか、最近は物価の高騰を懸念しているということです。
この農家の男性は、「燃料費や人件費だけでなく、農薬や段ボールも値上がりしています。相場が上がっても支出が増えている状況で、今後さらに物価高が進まないか心配です」と話していました。
【専門家 “野菜の価格高騰は1か月か2か月程度で落ち着いてくるのではないか”との見通し】
農作物の流通に詳しい東京農業大学の堀田和彦教授は、「野菜は必需品としての性格が強く、特定の産地からの出荷が減っただけでも価格が変動しやすい。キャベツは産地をリレーする形で出荷されているが、天候不順のケースが増え、ある産地から出荷が遅れたり減ったりして、価格変動が起きやすくなっているのではないか」と分析しています。
その上で、堀田教授はこのところの野菜の価格高騰は1か月か2か月程度で落ち着いてくるのではないかという見通しを示した上で、気候変動に対する農作物全般の対応策として、「長期的には高温に対応した品種を作るとか、産地を分散してある産地がダメでもほかの産地が出荷できるようにするとかリスク分散をしていくことが必要ではないか」と指摘しています。
						
 
						
			
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