世界一の富豪であるイーロン・マスク氏は、米大統領選で支持候補を当選させることに成功したが、欧州に今は狙いを定めている。

  トランプ次期米大統領を後押しするマスク氏は、最近数週間のX(旧ツイッター)への投稿で、英国およびドイツ政府に矛先を向け、成立した法律を問題視し、経済競争力に疑問を呈した。

Trump Goes Back To Butler Assassination Site To Bolster Campaign

トランプ氏と握手を交わすマスク氏(昨年10月ペンシルベニア州で)

Photographer: Justin Merriman/Bloomberg

  英独の政治指導者個人も侮辱し、ドイツのショルツ首相を「無能な愚か者」、ドイツ大統領を「専制君主」、スターマー英首相を「英国のレイプに加担した」と非難した。誤った情報や陰謀論を受け入れ、主流の野党を無視する一方、極右政党を「政治的現実主義」の闘士と評価した。

  ビジネスで重要な利害関係があり、要求する変化をもたらす能力がマスク氏にそれほどない主要7カ国(G7)の中心的同盟国を攻撃し、関係を台無しにしようとする動機は何なのか、それは全く分からない。

  マスク氏は9日、反移民のナショナリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のアリス・ワイデル共同代表とのX上での対談でホスト役を務める。ドイツの総選挙を2月23日に控え、他の全ての政治勢力が過激派として敬遠するにもかかわらず、マスク氏はAfDへの支持を表明。欧州連合(EU)当局は、イベントに選挙の公正さを脅かすリスクがないか注意深く監視する方向だ。

関連記事:マスク氏が支持の極右政党「ドイツのための選択肢」とは-QuickTake

Meetings and statements of the parliamentary groups

カメラとスマホのディスプレーが捉えたAfDのアリス・ワイデル共同代表(昨年12月のベルリンでの会見で)

Photographer: Kay Nietfeld/picture alliance/Getty Images

  マスク氏の介入は予想通り、怒りと困惑を招き、政府と野党が一致団結して同氏の戦術を糾弾した。だが有効な選択肢はほとんどなく、次期米大統領も耳を貸し、歯に衣(きぬ)着せぬ投稿を止められない人物にどう対処すべきか、標的となった政治家らは悩み、守勢に立たされた。

  テクノロジーと政治、権力を専門に研究するコロンビア大学のアレクシス・ウィシャウスキー教授は「マスク氏は自らの帝国を築き、どこまでやれるか試そうとしている」と分析。同教授によれば、世界一の富豪となったマスク氏の行動原理は恐らく、さらなる金もうけではなく、「権力を増大させ、世界を変えるために影響力を行使する」ことにあるという。

  「これは言うまでもなく尊大な行為であり、強い自負心が必要だ。しかし、マスク氏は最善が何か知っていると確信しているようだ」とウィシャウスキー教授は指摘した。

Conférence des Ambassadrices et Ambassadeurs à l'Elysée

エリゼ宮(大統領府)で演説するフランスのマクロン大統領(1月6日)

Photographer: Jeanne Accorsini/pool-REA/Redux

  トランプ氏の元側近、スティーブ・バノン氏も、米電気自動車(EV)メーカーのテスラと宇宙開発企業スペースXの最高経営責任者(CEO)を務めるマスク氏の富と影響力について、MAGA(「米国を再び偉大に」の略)と歩調を合わせるポピュリスト的政治目標を欧州で推進する意味で、重要な武器になると主張した。

Prime Minister Giorgia Meloni of Italy thanks Elon Musk for introducing her at an awards gala in Manhattan, on Monday, Sept. 23, 2024. (Graham Dickie/The New York Times)

イタリアのメローニ首相(左)とマスク氏 (昨年9月のグローバル・シチズン・アワードのNYディナーで)

Photographer: Graham Dickie/The New York Times/Redux

原題:Musk Targets Europe After Helping Trump Win the US Election(抜粋)

WACOCA: People, Life, Style.