6日の外国為替市場ではドルが下落。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時、この1年余りで最大の下げを記録し、その後下げ幅を縮小する展開だった。

  朝方には、トランプ次期米大統領の側近らが、関税の対象を重要な輸入品のみに絞ることを検討しているとする米紙ワシントン・ポスト(WP)の報道を受けて、ドル安が進行。その後、トランプ氏が関税計画は縮小しないとし、同報道を否定したことから、ドルは下げ渋る展開となった。

  ドルは対円では、一時1ドル=156円24銭まで売られた後、下げを埋めた。

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為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1304.28-7.96-0.61%ドル/円¥157.63¥0.370.24%ユーロ/ドル$1.0389$0.00810.79%  米東部時間16時56分ドル・円の推移

 

 

  XTBのリサーチディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は報道が出た直後のドル下落について、「信ぴょう性が確認できない報道への過剰な反応だった。しかし、ドル相場が進んだ方向ははっきりしている」と説明。「ドルロングが大量に積み上がっており、反転のリスクにさらされている」と述べた。

  ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏(ロンドン在勤)は「トランプ氏の関税政策が依然として不透明な一方で、米景気が相対的に強いという中核的なファンダメンタルズは維持される。それはドルにプラスの影響を及ぼす」と指摘。「ドルは2025年に大半の通貨に対して上昇すると当社では考えている」と述べた。

  アムンディUSの債券・為替戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は「ドルはトランプ氏の政策が完璧に遂行されることを織り込んだ価格になっていた。とりわけ関税だ」と指摘。「ドルにとって明白な強材料が続いている。米成長例外主義は続き、米金融当局は利下げサイクルの休止に動いている。多くの主要10通貨の中央銀行が緩和を継続するのとは極めて対照的だ。トランプ氏の財政政策案は引き続き緩和的だ」と話した。

  スチュアート・ジェンキンス、マイケル・カーヒル両氏らゴールドマン・サックスの為替ストラテジストは「こうした報道は全体として、次期米政権がインフレリスクに敏感で、選挙期間中の提案よりも的を絞った第一歩の措置を検討していることを示唆する」とリポートに記した。

  市場では、米利下げの見通しに関するさらなる手掛かりを得ようと、10日に発表される昨年12月の米非農業部門雇用者数に注目が集まっている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事は、追加利下げに関して政策当局はより慎重に進めることが可能との見解を示した。労働市場が堅調な上に、インフレ圧力が根強く残っていることに言及した。

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  この他、カナダ・ドルは上昇。同国のトルドー首相(53)は自由党の党首を辞任すると発表した。9年余り務めた首相の座を退く。

株式

  S&P500種株価指数は続伸。大型テクノロジー株が買われ、同指数を押し上げた。

株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数5975.3832.910.55%ダウ工業株30種平均42706.56-25.57-0.06%ナスダック総合指数19864.98243.301.24%

  押し目買いに支えられたものの、S&P500種構成銘柄の大半は下落した。ナスダック100指数は1.1%高。

  ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)の講演を控え、エヌビディアは最高値を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)のマイケル・バー氏が銀行監督担当副議長の職を退くことが分かり、規制緩和への楽観から、銀行株も上昇した。シティグループは、アナリストによる投資判断引き上げを受けて買い進まれた。

関連記事:FRBのバー氏、銀行監督担当副議長を退任へ-任期全う方針一転 (3)

  個別銘柄ではこの他、アメリカン航空グループもアナリストの投資判断引き上げで上昇。一方、中国テンセント・ホールディングス(騰訊)の米国預託証券(ADR)は急落。米国防総省が同社を人民解放軍に協力しているとされる企業のリストに追加したことが材料視された。

Tech Giants Rally

 

 

  アンドルー・タイラー氏率いるJPモルガン・チェースのトレーディングデスクは、米国株の急上昇に対するリスクは高まっているものの、力強い経済成長を背景に弱気な下げに陥るシナリオは引き続き「可能性が極めて低い」と指摘。ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は、今年は企業利益が米株上昇の主な原動力になるとの見方を示した。同氏はS&P500種が年末までに6500に達すると予想している。

  ネーションワイドの投資調査責任者マーク・ハケット氏は、「きょうまで2営業日に見られた相場持ち直しは、『押し目買い』の心理がなお強いことを示している」と指摘。「投資家は引き続きハイテクに大きく傾斜している。先に目を向けると、2025年はS&P500種への投資だけで簡単に2桁のリターンが得られる1年にはならない。この環境で成功するには、一層の自制心と創造性が求められる」と話した。

  RBCキャピタル・マーケッツのロリ・カルバジーナ氏は、昨年末にかけてセンチメントの指標は低下していたとし、株式市場は「自律修正」し始めていると指摘。「これは最近の株式相場の停滞局面が終わったことを意味するわけではないが、センチメントの悪化は実際には株式相場にとって長期的には良いニュースだ」と述べた。

米国債

  10年債は下落(利回りは上昇)。2年債は上昇し、利回りカーブはスティープ化した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.85%3.80.79%米10年債利回り4.63%3.10.66%米2年債利回り4.27%-0.6-0.15%  米東部時間16時56分

  30年債利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し約4.86%と、23年11月以来の高水準を付けた。この日実施された3年債入札の需要が低調だった。7日には10年債、8日には30年債の入札が続く。9日にカーター元大統領の国葬が催されるため前倒しで行われる。このほか、今週は社債の発行も相次いで予定されている。

関連記事:米30年債利回りが上昇、一時4.86%-2023年11月以来の高水準 (1)

US Long-Dated Yields at Highest Level in More Than a Year | Fiscal outlook, inflation worries are pressuring bonds

 

 

  トランプ氏側近らが関税の対象を狭めることを検討しているとするWP紙の報道を、トランプ氏が否定すると利回りはこの日の高水準を付けた。トランプ次期政権の政策がインフレを再燃させるとの懸念から、ここ数週間に米国債は売り圧力にさらされている。

  PGIMフィクスト・インカムの共同最高投資責任者(CIO)、グレゴリー・ピーターズ氏はブルームバーグテレビジョンに対し、「膨大な量の債券が市場に流入する」と指摘。「供給は増える一方だ。インフレがもう少し根強いことが判明する、または加速に転じる可能性が高いこともあり、債券市場の圧力が強まっている」と述べた。

  10年債利回りはこの日、一時4.64%と昨年5月以来の高水準を記録。12月上旬以降の上昇幅はこれで約50bpに達した。

  マクロ調査会社ビアンコ・リサーチの創業者ジム・ビアンコ氏は、10年債利回りが5%に向けて上昇する可能性があると予想した。5%は23年10月に付けたのが最後で、当時は07年以来だった。

原油

  ニューヨーク原油は6営業日ぶりに反落。現物市場の世界的な需給逼迫(ひっぱく)を背景にした上昇局面が行き過ぎた可能性があるとテクニカル指標が示唆したため、売りが優勢になった。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は心理的に重要な1バレル=75ドルを突破することができず、下げに転じた。約3カ月ぶりの大幅な逆ざやになっていた期近2限月のスプレッドは65セントに縮小、需要が供給を上回っているとの見方が弱まりつつあることを示唆した。

  相対力指数(RSI)も買われ過ぎの水準に達し、原油が反落する兆候を示していた。供給過剰見通しに加え、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスによる生産拡大の可能性、最大の輸入国である中国の需要低迷によって、原油相場の先高観は抑制されている。

  ストラテガス・セキュリティーズのアナリスト、ジョン・バーン氏は「原油相場が底打ちするのに十分なほど需給要因は改善しているが、持続的な上昇を維持するほどではない」と指摘。現時点では「75ドルが天井であり、ショートの方にチャンスがある」と語った。

Oil Falls from Three-Month Highs | Crude's recent rally has prices overbought on relative strength index

 

 

  サウジアラビアがアジアの顧客向けの原油価格を引き上げた後、原油先物は昨年10月以来の高値を付けた。価格引き上げは原油需要に対する信頼の表れだ。イランとロシアからの供給不足により、昨年末にはオマーン原油とドバイ原油の価格が急騰した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は、前営業日比40セント(0.5%)安い1バレル=73.56ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は、0.3%下落し76.30ドル。

  ニューヨーク金相場は続落。トランプ次期米大統領が関税政策の後退はないと言明したため、売りが優勢になった。

  トランプ氏がワシントン・ポスト紙の報道を否定した後、金スポット相場は一時1%下落した。

  サクソバンクの商品戦略責任者、オレ・ハンセン氏は「金は他のほとんどの資産と同様に、ワシントン・ポスト紙の記事がドルの下落を促したことで、早い段階で上昇した」と指摘。「しかし、金と銀はどちらも利益確定の売りが出たため、上昇は長続きせず、トランプ氏による記事の否定もあってマイナス圏となった」と述べた。

Gold Holds Losses After Trump Denies Curbed Tariffs | Bullion traders eye US data this week for Fed rate cut clues

 

 

  金スポット価格はニューヨーク時間午後1時30分現在、前営業日比4.28ドル(0.2%)安い1オンス=2635.94ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は7.30ドル(0.3%)下げて2647.40ドルで引けた。

 

原題:Dollar Pares Losses After Trump Denies Report on Curbed Tariffs(抜粋)

Dollar Trims Loss as Trump Dismisses Tariff Shift: Inside G-10

Stocks Advance as Nvidia Closes at All-Time High: Markets Wrap

US Yields Hit 14-Month High Amid Auctions, Tariff Speculation

Oil Falls as Technicals Signal Five-Session Rally Is Overdone

Gold Declines After Trump Says His Tariffs Won’t Be Pared Back

 

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