上場していない米ロケットメーカー、スペースXの社内評価額は3500億ドル(55兆円)で、評価額が世界で最も高い未公開新興企業の1つに数えられている。社sには同社のロゴと、マスク氏のイメージ。2022年12月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)
[ニューヨーク 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 上場していない米ロケットメーカー、スペースXの社内評価額は3500億ドル(55兆円)で、評価額が世界で最も高い未公開新興企業の1つに数えられている。それでも、同じくイーロン・マスク氏が率いる米電気自動車(EV)メーカーで、上場しているテスラ(TSLA.O), opens new tabの時価総額約1兆ドルの数分の1だ。しかし、2025年には地上での野望は、星を目指す野心にはかなわないことが明らかになるだろう。
スペースXはマスク氏の哲学を凝縮している。それは、違うことやり、それから競争相手を追い落とすためにコストを削る、というものだ。確かにテスラが2006年に制定した「マスタープラン」も同じようにプレミアムカーを生産した後、その利益を活用して大衆車の開拓を推進するというものだった。しかし、スペースXの成長はより爆発的で、捉えるのは難しいだろう。
鍵を握るのはスペースXのブロードバンド衛星ネットワーク、スターリンクだ。それは2つの点で成功している。1点目は再利用できる大型化したロケットを製造することで、打ち上げにかかるコストを大幅に削減したこと。2点目は他社製品を上回るスターリンクの優れた性能によって、より多くの打ち上げを可能にする収益源を確保できることだ。スペースXの約7000基のスターリンク人工衛星が地球を周回しており、週に約60基が追加されている。1965年から2010年代序盤まで宇宙に打ち上げられる人工物は基本的に増えていなかった。スターリンクはその軌道を放物線状に変えた。
The number of objects launched into space has increased about ten-fold in the last decade.スペースXは新興の独占企業になりつつある。ブライステックの推計によると、24年第1・四半期にスペースXは全ての衛星運搬能力の85%超を占めた。ロケットや人工衛星、ユーザー端末を含めた急速な垂直統合は、米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O), opens new tabなどの競合企業を後方へ追いやる。テスラは、中国の比亜迪(BYD)(002594.SZ), opens new tab(1211.HK), opens new tabなどの新興EVメーカーや、化石燃料で走る安価な自動車との激しい競争に直面している。スペースXははるかに晴れやかな空を楽しんでいる。スターリンクのユーザー数はわずか500万人だが、114カ国で利用可能だ。携帯電話サービスも追加し、容量も十分だ。マスク氏のトランプ米次期大統領とのつながりにより、これまで得られなかった補助金も獲得できるかもしれない。米国の地方でのブロードバンド整備に対する420億ドルの補助金などだ。
コンサルタント会社、クイルティースペースは24年のスターリンクの売上高を66億ドルと予測しているが、上記の状況に照らせばさらに増える余地は十分ある。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は38億ドルに達すると予測されており、利益率は58%という驚異的な高さだ。
TMFアソシエイツは、売上高が30年までに240億ドルになると見込んでいる。現在の推定利益率で計算すると、EBITDAは180億ドルになる。固定費が高いだけに、利用者が増えれば利益は改善する可能性がある。
それでは、スターリンクの価値はいくらなのか。テスラは成長が鈍化しているにもかかわらず、時価総額はEBITDAの68倍に上る。スターリンクの成長が予想通り続くと仮定し、テスラの倍率を当てはめると、20年代末にスペースXの通信事業の評価額は1兆ドルをはるかに超えるだろう。ロケットなどスペースXの他の高価値事業を除いて計算してもだ。
結局のところ、スペースXの評価額がなぜこれほど低いのか、テスラの評価額がなぜこれほど高いのか、あるいはその両方なのかはわからない。自動運転技術はこれから現実世界で試される一方、スペースXが宇宙開発競争で独占状態を続けるなら、空に輝く星たちこそがマスク氏の真のフロンティアであることが明らかになるだろう。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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