中国浙江省・杭州市の紅山村にある杭州スカイテック・アウトドアのサニー・フー氏は米大統領選後の約2カ月間にわたり、自社の屋外用家具や大型テントを米国の顧客に急いで出荷し、他の市場への多角化を急ピッチで進めている。

  一方、ドイツでは白ワイン用ブドウ品種「リースリング」の産地に住む8代目のワイン醸造家、マティアス・アルノルト氏が、米国の輸入業者から殺到する特別注文への対応に追われている。ドナルド・トランプ次期大統領が欧州産ワインへの関税を復活させる前に、可能な限り多くの注文に応えようと必死だ。

  トランプ氏は来年1月20日の就任式以降に貿易戦争の対象となる国や製品、関税率を発表すると予想されているが、世界の企業は座視しているわけではない。

  トランプ氏による全世界一律の関税賦課の脅しだけで緊急的な対応が巻き起こっており、これによって生じ得るグローバルな貿易システムのボトルネックがコスト上昇を招きかねないだけでなく、経済ショックが起きた場合に混乱に陥りやすい状況となっている。

The ‘Freakout’ Unfolds in Global Scramble to Avoid Trump Tariffs

ニューヨークの顧客向けにワインボトルを梱包(こんぽう)するワイン醸造家、マティアス・アルノルト氏のワイナリー従業員(12月10日)

Photographer: Ben Kilb/Bloomberg

  カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とする通関・物流コンサルティング会社クリーガー・ワールドワイドのプレジデント、ロバート・クリーガー氏は「われわれはまだパニックの渦中にある。サプライチェーン(供給網)に最大級の大潮が来ようとしている」と警鐘を鳴らす。

  同州を拠点とするオーディオ機器メーカー、JLabの最高経営責任者(CEO)、ウィン・クレイマー氏はトランプ政権1期目の関税賦課を回避するために中国からサプライチェーンを移管した。同社は不透明な状況の中、6月まで採用を凍結している。2期目で一律関税が課された場合のクレイマー氏の次の一手は同社のヘッドホンおよびワイヤレス製品の値上げだろう。

  一部の企業は注文を前倒ししている。他の企業も新しいサプライヤーを探すか、それが不可能な場合は、既存のサプライヤーと条件を再交渉している。共通点は在庫の増加や輸送費の上昇、取引実績のないパートナー企業を採用するリスクという形でコスト増とともにもたらされる新たなストレスだ。

  企業側は利益が減少し経費が削減されると口をそろえるが、その代償を最終的に負うのは消費者だ。

Tariff Talk Abounds

Companies are discussing tariffs more than ever, Bloomberg data show

Source: Bloomberg’s AI-powered ECAN and DS functions

  問題は、あらゆる予防策にもかかわらずトランプ氏の1期目の貿易戦争を耐え抜いた一部の企業の戦略が今回も機能する保証はないことだ。トランプ氏が11月終盤、中国製品に10%の追加関税、カナダとメキシコからの全製品に25%の関税を課すと脅したことからも分かるように、今回は同盟国と敵対国の双方がトランプ氏の標的となっている。

US Dockworker Strike Shutters Eastern And Gulf Coast Ports

米ジョージア州のサバンナ港(10月3日)

Photographer: Parker Puls/Bloomberg

  米企業と主にメキシコの工場をつなぐオンラインの製品調達プラットフォーム、ジップフォックスの創業者兼CEO、レイン・マディ氏は、大統領選の2週間前から見積もり依頼と新規購入者の登録が30%増加したと明かす。同氏によると、トランプ氏が主要新興国で構成される「BRICS」諸国に100%の関税を課すと脅した際には問い合わせが再び急増し、その大半が中国製品の輸入業者からだったという。

  中国の港湾では、選挙前後の2週間でコンテナ取扱量が2桁増となったほか、12月第2週にはさらに30%近く増加した。国際航空貨物便は10月半ば以降、週ごとに少なくとも約3割ずつ増加している。エコノミストは、顧客が注文の前倒しを急ぐ中、こうした傾向は続くとの見解を示している。

Air Freight Takes Off Ahead of Trump’s Return

There have been 7,000+ flights in or out of China so far this month

Source: China’s Ministry of Transport

  ロサンゼルス港とロングビーチ港から成る、米国で最も取扱量が多いコンテナターミナルでは、トランプ氏が1期目で中国製品に関税を課した際と大して違わない輸入貨物の急増を経験している。両港とも7-9月(第3四半期)に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時の記録を破り、来年も高水準の取扱量が続くと予想されている。

  注文の前倒しは11月5日の大統領選のかなり前から始まっていたが、現在も港湾で散見されている。ロサンゼルス港だけでも11月の輸入コンテナ取扱量が前年同月比で19%増となった。2024年はロングビーチ港の取扱量が過去最多になると見込まれている。

  しかし、南カリフォルニアでの貨物ラッシュはおそらく長くは続かず、後々に落ち込むことになるだろう。

Key Speakers At The Bloomberg BNEF Summit

ロングビーチ港のマリオ・コルデロCEO

Photographer: David Paul Morris/Bloomberg

  ロングビーチ港のマリオ・コルデロCEOは12月、記者団に対し「全国的な輸入の急増は25年春まで続く可能性がある」と述べた。「18年にはトランプ政権下で課された関税により中国からの輸入が20%減少し、報復措置により中国に対する輸出が45%減少した」という。

  関税以外にも、1月下旬に始まる中国の春節休暇前の典型的なラッシュや、トランプ次期大統領の就任式の数日前に米港湾労働者が新たなストライキを実施するとの見通しも懸念材料となっている。

  シティグループのシニアグローバルエコノミスト、ロバート・ソッキン氏は「注文の前倒しが著しく活発になれば、輸送費はさらなる上昇圧力を受ける可能性がある。注文の前倒しが特に大規模となれば、米国の港湾で一部ボトルネックが生じ、サプライチェーンへの圧力が一段と高まる可能性がある」と警戒する。  

  大統領選以降、米金融当局はいつも接触している事業主らから関税に関する懸念をよく耳にするようになった。最新の米地区連銀経済報告(ベージュブック)では「関税」という言葉が11回登場している。これは20年以降で最多だ。

Tariff Concerns Appear in Fed Beige Book Again

Number of mentions of ‘tariff’ spiked in 2018 until the pandemic struck

Source: Fed Beige Book, Bloomberg

  ブルームバーグがまとめたデータによると、S&P500種株価指数を構成する企業の幹部による決算発表時の関税への言及は11月に19年後半以降で最多となった。工業企業、特に産業機械メーカーやサプライヤーが関税について最も多く話題にしたという。

  だが、経済にどの程度影響するかを正確に把握するには時期尚早だ。

  オックスフォード・エコノミクスが12月10日までの2週間に156社を対象に実施した調査によると、世界的な貿易戦争が今後2年間で世界経済に非常に大きなリスクをもたらすとの回答が全体の65%に達した。ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の対立については38%、中国と台湾の紛争は14%だった。

Businesses’ Biggest Worries Over the Next Two Years

Trade war fears topped worries for Russia-NATO, China-Taiwan conflicts

Source: Oxford Economics

原題:Trump’s Tariff Threats Set Off a Global Supply Chain ‘Freakout’(抜粋)

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