今年の有馬記念(G1、芝2500メートル、22日=中山)は20年ぶり史上3頭目の「秋中距離G1・3連勝なるか」に注目が集まる。

「G1ヒストリア」特別版は00年テイエムオペラオーに騎乗した和田竜二騎手(47)、04年ゼンノロブロイを管理した藤沢和雄元調教師(73)の言葉とともに当時を回顧。ドウデュース(牡5、友道)の可能性を探る。

■00年テイエムオペラオー 和田竜二騎手

2000年12月24日、世紀末。かつてないプレッシャーが和田竜騎手を襲っていた。ファンファーレが遠くに聞こえる中山芝2500メートルのゲート裏。覚悟を決めた。

「最後を落としたら、今までの勝利すべてに意味がない」

デビュー5年目の若手ジョッキーは1年365日、ずっと集中を保ってきた。「精神的に、本当にきつかった」。テイエムオペラオーで有馬記念を勝てば、年間負けなし、8戦8勝の大偉業。当時の重圧は今でも鮮明に記憶している。

00年の有馬記念で馬群の狭い間を突き抜け制したテイエムオペラオーと和田竜騎手(中央)00年の有馬記念で馬群の狭い間を突き抜け制したテイエムオペラオーと和田竜騎手(中央)00年の有馬記念を制したテイエムオペラオーと和田竜騎手00年の有馬記念を制したテイエムオペラオーと和田竜騎手

4枠7番から好スタートを切った。ハナに行くジョービッグバンを見ながら好位をめがけ、手綱をしごく。「天皇賞・秋、ジャパンCと同じ感じで競馬をしようと思っていた」。しかし、舞台はトリッキーな中山。1周目の4角で両隣から挟まれ、ポジションは後方3番手となった。「やってしまった。どうしよう、どうしよう…」。想定していた中で最悪の位置取りに内心、焦っていた。

動くに動けず、2周目の3コーナーへ。ここで鞍上は“冷静に”進路を内に選択する。

「こうなるということが頭の片隅にあったのだと思う。皐月賞の時も後ろからの競馬だったし、届かない馬ではないから。幸い、前に崩れない(メイショウ)ドトウがいた。あとは(進路が)開け! と思っていた」

4角も馬群の後方で直線へ。万事休す-。誰もがそう思った時、「一瞬、ひと筋の道が見えた」。何かに導かれるように、馬群の狭い間を縫って突き抜けた。

00年のジャパンカップを制したテイエムオペラオー(中央)00年のジャパンカップを制したテイエムオペラオー(中央)00年の天皇賞・秋を制したテイエムオペラオー(中央)00年の天皇賞・秋を制したテイエムオペラオー(中央)

「ほとんどの馬は抜けられる進路ではなかったと思う。それだけオペラオーの力が違ったんだと思う。ホッとした」

重圧から解放された瞬間だった。

「今年は全部勝つぞ」。竹園オーナーのげきで始まった1年だった。皐月賞の後、勝てないレースが続いても乗せ続けてくれたオーナー、そして師匠である岩元師の思いになんとか応えようと必死だった。JRA史上初めて達成された“秋古馬3冠”は、覚悟と感謝の結晶だった。【藤本真育】

◆テイエムオペラオー 1996年3月13日生まれ。北海道浦河町・杵臼牧場生産。父オペラハウス、母ワンスウエド(母の父ブラッシンググルーム)。馬主・竹園正継氏。栗東・岩元市三厩舎所属。通算成績26戦14勝。G1・7勝。総獲得賞金18億3518万9000円。

■04年ゼンノロブロイ 藤沢和雄元調教師

ゼンノロブロイの3冠達成について聞くと、藤沢和雄元調教師は「あの有馬記念はすごいレースだった」とうれしそうに振り返る。

スタート直後、堂々とハナを奪ったタップダンスシチーに対し、ロブロイは最内枠から中団の位置。ただ、オリビエ・ペリエが手綱をしごいてラチ沿いを上昇。気づけば、タップの背後にいた。

04年の有馬記念を制したゼンノロブロイ(左)04年の有馬記念を制したゼンノロブロイ(左)

2周目に入り、絶妙なラップでジワジワと差を広げるタップと佐藤哲三騎手。ロブロイとペリエは追いかけた。向正面で3馬身あった差は3、4角で1馬身差に詰まる。最後の直線、ゴール前で粘り込むタップを半馬身差し切った。

「あんなに追いかけて大丈夫かと思ったけど、さすが、オリビエだった。あの馬を負かせば大丈夫だと、ロブロイのリズムで走らせれば大丈夫だ、とわかっていたね。天皇賞、ジャパンCを勝った後も馬の調子は良かったし、自信を持って乗ってくれた。いろんなジョッキーが来たけど、オリビエは別格だった。彼でなければ、3連勝はできなかったよ」。勝ちタイム2分29秒5は20年たった今も残るレコード。スピード化が進む日本のJRAのG1で最古のレースレコードとして、その名を残している。

04年のジャパンカップを制したゼンノロブロイ(中央)04年のジャパンカップを制したゼンノロブロイ(中央)04年の天皇賞・秋を制したゼンノロブロイ(右)04年の天皇賞・秋を制したゼンノロブロイ(右)

「しっかり逃げる馬がいるといいレースになる」と名伯楽。ドウデュースは天皇賞を上がり3ハロン32秒5、ジャパンCを同32秒7で突き抜けた。昨年の有馬記念は2周目3角からのロングスパートだった。ロブロイを信じたペリエとドウデュースを信じる武豊…、3冠達成を予感させる共通点はある。【木南友輔】

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