ひとつには、近日登場するとうわさされている「Nintendo Switch 2」(または最終的にどう呼ばれるかはわからない)となる存在を無視するわけにはいかない。Switchの累計販売数は1億4,340万台であり、PS4の生涯販売台数が1億1,700万台以上であることを考えれば、ソニーがそのシェアを狙うのは理解できる話だ。

Switchの成功の要因のひとつは、何と言ってもその「ポータビリティ」であり、ほとんどのゲームがローカルでプレイできる点だ。前述の数本のクラウド対応タイトルを除けば、ほぼすべてのSwitchゲームはインターネット接続なしでどこでもプレイ可能だ。一方のPS Portalはオンライン接続が必須なため、その自由度は大きく異なる。

さらに、Steam Deckはポータブルゲーミングの概念を大きく変えた存在だ。Valveは具体的な販売台数を公表していないが、「数百万台を売った」とされており、さらにASUSのROG Ally XやレノボのLegion Goなど、ライバルとなる携帯型ゲーミングPCが続々と登場している。このことからも、ハイエンドなポータブルゲーミング市場には大きな需要があることがうかがえる。

マイクロソフトも、長年噂されてきた携帯型Xboxの開発を認めている。発売までにはまだ数年かかるが、マイクロソフトのゲーム部門トップであるフィル・スペンサーは「ゲームをローカルでプレイできることが本当に重要だ」と語っており、このデバイスがクラウドゲーミング中心ではないことを示唆している。これは、クラウドゲーミングの推進を掲げる同社が、なおローカルプレイの価値を重視している証拠だ。

ソニーの新型携帯ゲーム機に関する噂は未確認のままだが、仮にこのデバイスが実現するとしても、クラウドゲーミングのみに特化したものにはならないだろう。そう考えると、PS Portalのクラウドゲーミング対応は、ソニーがクラウドゲーミングに全面的に移行するという宣言ではなく、その可能性を探る一歩として捉えるべきだろう。

ソニーのアプローチには慎重さが見て取れる。同社はStadiaの轍を踏まないよう、クラウドゲーミングを過度に前面に押し出すことは避けている。むしろ、これは既存のPlayStationユーザーに向けた新機能の一つとして提供され、PS5の機能を拡張する新たな選択肢なのだ。

当初のPS Portalがソニーの予想を超える成功を収めたように、今回のクラウドゲーミング対応も思わぬ成果につながるかもしれない。現時点では、プレイできるタイトルが限られ、機能面での制約も多く、常時オンラインが必要という課題はある。それでも、PS PortalとPS Plus Premiumの組み合わせは、PS5本体の購入よりも低いコストでPlayStationの世界に参入できる手段となる。もしこの新しい取り組みが成功すれば、ゲームの未来は私たちの想像以上に大きく変わるかもしれない。

(Originally published on wired.com, translated by Miranda Remington, edited by Mamiko Nakano)

※『WIRED』によるゲームの関連記事はこちら。

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