日銀が12月13日発表した12月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス14と、2期ぶりに改善し、2022年3月以来の高水準を記録した。東京都内のスカイツリーから2021年撮影(2024年 ロイター/Marko Djurica)
[東京 13日 ロイター] – 日銀が13日発表した12月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス14と、悪化を見込んでいた市場予想に反し、小幅ながら2期ぶりに改善した。2022年3月以来の高水準。設備投資需要や自動車生産の回復が景況感を上向かせた。予想外に改善したことで、日銀が来週開く金融政策決定会合の判断に影響を与えるとの見方が市場関係者の一部で出ている。大企業・非製造業のDIはプラス33と2期ぶりに小幅悪化した。
企業の販売価格判断DIは高水準を維持し、原材料価格や人件費の上昇分を価格に転嫁する姿勢が続いていることが示された。
大企業・製造業の業況判断DIは、ロイターがまとめた予測中央値(プラス12)を上回った。9月のプラス13からは1ポイント改善した。生産用機械などの業種から設備投資需要が堅調との声が聞かれたほか、自動車やはん用機械からは自動車生産の回復が改善に寄与したとの指摘があった。
大企業・全産業の24年度の設備投資計画は前年度比11.3%増と、前回9月調査の10.6%増から上方修正。予測中央値9.6%増も上回った。
先行き判断DIはプラス13と、小幅悪化を見込む。非鉄金属、はん用機械、生産用機械、業務用機械などから海外需要の伸び悩みを懸念する声が聞かれている。引き続き原材料やエネルギー高も懸念されている。
農林中金総合研究所の南武志・理事研究員は「ポジティブサプライズ。悪化する見通しがコンセンサスだったが大企業・製造業で改善し、先行きも大して悪化を見込んでない」と指摘。日銀の追加利上げは遅らせるメリットはなく、今月の決定会合で実施するとの見方を示した。
一方、「大きなサプライズはない。市場には利上げを12月にやらなくても1月にはやるとの見方があり、全体的な相場観に変化はない」(三菱UFJ信託銀行の酒井基成・資金為替部マーケット営業課課長)との声も出ていた。
<中小・非製造業の業況判断DI、91年8月以来の高水準>
大企業・非製造業の業況判断DIはプラス33と、ロイターがまとめた予測中央値(プラス32)を小幅に上回った。9月のプラス34からは1ポイント悪化した。建設や運輸・郵便などから価格転嫁の進展が改善要因として上げられた。一方、小売や宿泊・飲食サービスなどは人件費の上昇や人手不足が重荷となっている。
先行き判断DIはプラス28と、5ポイントの悪化を見込む。
中小企業・非製造業の業況判断DIはプラス16と2期連続で改善し、1991年8月以来の高水準となった。運輸・郵便や対個人サービスなどから価格転嫁の進展が改善に寄与したとの声が聞かれた。
事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は24年度通期で1ドル=146.88円と、9月調査の145.15円から1.73円円安方向に振れている。
今回の短観の調査期間は11月11日から12月12日。回収基準日は11月27日で、基準日までの回収率は7割強だった。
<販売価格判断DI、高水準を維持>
企業の物価見通し(全規模・全産業)は1年後、3年後、5年後がいずれも前回と同じだった。1年後は前年比プラス2.4%。販売価格見通しは1年後が前回と同じだったが、3年後、5年後では0.1%ポイント上方修正。3年後は現状の水準対比プラス4.2%、5年後は同プラス5.0%となった。
販売価格判断DIは大企業・中小企業とも前回とほぼ変わらず、高い水準を維持した。大企業・非製造業はプラス29で、3回連続で同じ値。これは1983年6月以降で最高。
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・チーフ日本経済エコノミストは「輸入物価が前年比でマイナスとなる中でも、物流費や人件費といった人手不足に起因する粘着的なコスト上昇要因が意識される中、企業が来年度の賃上げ原資確保のために販売価格引き上げの勢いを維持している」と指摘した。
中小企業は先行きのDIが製造業で現状対比5ポイント改善のプラス34、非製造業では4ポイント改善のプラス31となり、価格転嫁がさらに進むことへの期待感が示された。
和田崇彦、杉山健太郎、梶本哲史
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