28日の日本市場では円相場が対ドルで一転して下落している。日米金利差縮小観測から円が大きく買われた反動が出ている。米政府の対中半導体規制を巡る期待から半導体関連株が買われて株価は上昇した。
パウエルFRB議長
Photographer: Ting Shen/Bloomberg
為替相場は1ドル=151円75銭まで一時円安が進んだ。日米金利差縮小観測から1カ月超ぶりの円高水準となった27日の反動に実需のドル買いが加わった。株価は上昇。米国の中国製半導体規制が想定ほど厳しくならないとの見方から、半導体関連株が買われた。債券相場も上昇した(長期金利は下落)。
日米金利差については物価統計を受けてやや縮まりにくくなったとの見方が足元で出ている。米個人消費支出(PCE)統計でPCEコア価格指数の伸びが加速、日本の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」では物価の伸びに勢いがない。
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野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは米PCE統計を受けてFRB利下げペースについて「市場が想定しているように緩やかとなる可能性が高い」と28日付リポートで指摘した。日本銀行の利上げについては、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストが指標を受けて「追加利上げにとって逆風になり得る数字が目立った」とリポートに記した。
日本の為替・株式・債券相場-午後3時半過ぎ円は対ドルでニューヨーク終値比0.3%安の151円61銭に下落27日の海外市場では一時150円46銭と10月21日以来の高値を付けた東証株価指数(TOPIX)終値は前日比0.8%高の2687.28日経平均株価は0.6%高の3万8349円06銭長期国債先物12月物の終値は22銭高の143円02銭新発10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp)低い1.055%為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=151円台後半に下落。「トランプトレード」の巻き戻しや12月の金融政策決定後に日米の金利差が縮小するとの観測から円買い・ドル売りが急速に進んだ反動が出ている。金融機関が外為取引の基準レートとする公示仲値の設定にかけ実需のドル買いも入った。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、円相場は買われ過ぎた分を戻していると述べて「ドルが下がったところを好機と見た実需のドル買い・円売り需要もあるだろう」と指摘した。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、トランプトレードの巻き戻しでドル安・円高が急速に進んだ反動が生じていると説明して日米金利差を見る限りは「150円を超えてどんどんと円高が進む相場でもなく、いったんポジションを考える状況だ」と話した。
株式
下落した始まった東京株式相場は上昇に転じた。米国による中国製半導体への追加規制が従来想定されていたほど厳しい措置にならない可能性が浮上し、東京エレクトロンやKOKUSAI ELECTRICなど半導体製造装置株が軒並み急伸した。
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東エレクが6.7%上昇し、TOPIX値上がりに最も寄与した。TOPIX採用2127銘柄のうち値上がり銘柄は1446、値下がり銘柄は569、変わらずは112だった。東証33業種すべてが上昇して、その他製品指数が業種別で値上がり率首位だった。
オルタス・アドバイザーズの日本株式戦略部門の責任者、アンドリュー・ジャクソン氏は東エレクやSCREENホールディングスなど中国における売上高の比重が比較的高い銘柄にとって「ニュースはプラスに働く」と述べた。
同時にトランプ次期大統領が現政権のハト派的なトーンに従うかどうか分からず、株価の押し上げ効果は長続きしない可能性があるとの見方も示した。
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債券
債券相場は上昇。米国の長期金利が低下したほか、日銀の国債買い入れオペ結果がおおむね無難となり相場の支援材料となった。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、短い年限で金利スワップの受け(債券買いに相当)が入り、5年付近の債券は堅調と指摘。「20年債などは年限長期化の買いでしっかり、40年債はきのうの入札で需要が不足だった」と述べた。
日銀は午前の金融調節で国債買い入れオペを実施した。対象は残存期間3年超5年以下、5年超10年以下、10年超25年以下、物価連動債で、いずれも買い入れ額を前回から据え置いた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、日銀買い入れオペは総じて無難な結果だったと指摘。超長期債は引き続き需給懸念から売りが出ているとしながらも「10年以下のゾーンはきょうは特段イベントはなく、しっかりした地合いで推移する」と述べていた。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債5年債10年債20年債30年債40年債 0.580%0.720%1.055%1.875%2.295%2.650%前日比-1.0bp-1.5bp-1.5bp-1.5bp-1.0bp変わらず
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