映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』で天才詐欺師・氷室役を演じた岡田将生。多彩な作品で柔軟に役を横断できる理由や、最近プライベートで楽しんだ作品までロングインタビュー。

岡田将生は、演技の幅が広い役者だ。十八番ともいえるすっとぼけた雰囲気の天然男から、尽善尽美なたたずまいの人物、アクの強いダークサイドな男に至るまで、変幻自在に作品内で存在感を放ち続ける。それでいて、インタビューでは「役作りも、なんか、いまいちまだわからないところがちょっとあったりもする」と頭をかくのだから、慢心どころか常にフラットに臨むその姿勢こそ、信頼の置ける俳優たるゆえんだろう。

そんな岡田の最新出演映画は、『カメラを止めるな!』などで知られる上田慎一郎監督と初タッグを組んだ『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』。内野聖陽演じる公務員の熊沢二郎とひょんなことから手を組み、大企業の脱税王(小澤征悦)から未納の10億円を徴収する、大胆不敵な天才詐欺師・氷室マコトを軽やかに演じた。

岡田、内野をはじめ、小澤征悦、川栄李奈、森川葵、後藤剛範、真矢ミキ等々、個性豊かな実力派キャストが集結した本作。ストーリー同様に濃い舞台裏が期待できそうな撮影の、珠玉のエピソードとは。さらに、岡田自身の丹念な役作りについて、最近のお気に入り作品にいたるまで、あますところなくインタビューした。

「アングリースクワッド」で岡田さんが演じた氷室は、詐欺師ながら非常にチャーミングでキュートな面を持っています。演じるにあたり、何を意識していましたか?

岡田:原作の韓国ドラマ『元カレは天才詐欺師~38師機動隊~』で、(氷室役にあたる)ソ・イングクさんのお芝居を拝見し、ソ・イングクさんからキュートさをすごく感じたので、そこは尊重して氷室としても出せたらいいなあと思いながらやっていました。今回は衣装や髪型など外見面についても、事前に監督や衣装さん、メイクさんとお話してから現場に入れたので、すごく助けになりました。特に衣装については、「どこか品はありながらも、お金があるようにしたい」というこだわりも相談させていただきました。

最初、氷室は熊沢(内野)を標的に鮮やかに騙し、ひょうひょうとした感じを醸していました。後半にいくにつれ、彼の素が徐々に出てくるというギャップを見せる役でもありましたよね。非常に魅せられた印象があります。

岡田:ありがとうございます。今お話されたようなことを計算してずっとお芝居をしていたので、うれしいです。氷室というキャラクターの根底にあるものは、一貫して「復讐」なんですよね。なので復讐をベースにしながらも、どこか本人も忘れているかのように軽やかに演じたいな、というのを念頭に置いてやっていました。監督も、僕の役に関しては氷室というキャラクターも相まって、自由にやらせてくださいました。

かなり考えて、計算されてやっていらしたんですね。

岡田:今回は台本を読んで、いろいろ自分の中で計算や構築していく時間がたくさんあったので、すごく面白かったです。それが正しいかどうかはわからないですけど、構築していく時間が楽しいんですよね。

劇中では内野さんとのシーンや見せ場も多かったですが、ご一緒されていかがでしたか?

岡田:先輩のお芝居は、やはりすごく勉強になりました。内野さんは本当に作り込まれて現場にいらっしゃるんです。常に熊沢というキャラクターのままでいらしたので、こちらも気を抜くことなく、いい緊張感の中で撮影させていただきました。そうして内野さんが真ん中にどんと立ってくださるだけで安心感がありましたし、目指すべき形だと現場で思っていました。それに、ご一緒していると「ああ、本当にお芝居が好きなんだなあ」ということがひしひしと伝わってくるんです。僕も楽しんでやろうと、改めて思いましたね。

信頼して預けられた感じだったんですね。一方、詐欺師軍団の皆さんとのお芝居は丁々発止とでもいいますか、手練れの演者さんがそろっていて見ごたえがありました。演じられていても楽しかったのではないですか?

岡田:はい、すごく楽しかったです……! 皆さんとは、まるで演劇を作っている感じがありました。みんなでアイデアを出して、「こうしたらうまくいくんじゃない?」、「ここで変えてみようか」と、常に話して決めていた感じでした。真夏の暑い中の撮影だったので、体力的にも皆さん辛かったと思うんですけど、そこは劇団員的な感じで乗り越えましたし(笑)。皆さんとのセッション、楽しかったです。

皆さんとのシーンは見どころの一つですよね。完成作は痛快で、上田監督ならではの人情もある、心温まるお話でした。老若男女問わず楽しめる作品ではと思いますが、岡田さんはどう感じていますか?

岡田:観終わってスッキリしましたし、チャーミングな方々が本当に多かったので、観ていて思わずニコニコしちゃいました。後藤さんもすごいかわいいですし、何より皆川さんが一番かわいかったんですけど(笑)。みんながみんな手を取り合い、戦って、足並み揃えていく感じが、痛快であり、すごくキュートだったと思います。おっしゃっていただいたように、大人だけでなく、子供も楽しめる映画なんじゃないかなと思います。「これぞエンタメ!」といえるほどわかりやすいですし、ストレートに上田さんが描きたかった話で情熱が伝わる作品だと、完成作を観て思いました。

ジャンルわけをするならば、本作は『オーシャンズ11』のような詐欺集団の類だと思います。同ジャンルで好きな作品・お勧め作品はありますか?

岡田:それで言えば、僕、「ペーパー・ハウス」が大好き! オリジナル版のスペインのシリーズを無我夢中で観ていました。めちゃくちゃ面白いですよね! 「ペーパー・ハウス」も「アングリースクワッド」と同じように、どちらが悪なのかがわからなくなってくるのも魅力というか。『ペーパー・ハウス』はドラマなので、一人一人のキャラクターがより際立っていて、丁寧に物語を描いているので共感もしてしまいます。どんどん強盗側に寄り添っていってしまって(笑)。

「ペーパー・ハウス」は本当に見事に騙されるじゃないですか。脱出方法まですべて計算し尽くされていて計画が完璧だし、隙のない作品なので本当に好きですね。脚本が素晴らしいんだなと観ながら思っていました。そういうのにも惹かれるんですよね。

岡田さんがもし演じるなら、何役を希望しますか?

岡田:えー…!主役の方は……トーキョーさん、ですよね?

そうです。え、トーキョー希望ですか!?

岡田:いえ!眼鏡をかけている方。…博士…?

教授でしょうか?

岡田:教授です! 教授を演じてみたいです!

強盗集団の指示出し役なので、ほぼ一人芝居ですが……(笑)?

岡田:そうですよね、みんなと通信だけする、という(笑)。でも、みんなと会えたときにはとてつもないうれしさがあるだろうし、それに耐えて耐えて、というか。一人芝居自体には特に興味はないんですけど(笑)、あの教授の役はすごく好きなんです。今回の氷室も計画を立てる役でしたけど、教授はさらに完璧な感じなので、やってみたいです。

氷室のような天才詐欺師もさることながら、『ゆとりですがなにか』のまーちんのような愛されポンコツ、『昭和元禄落語心中』の八雲のような高い技術が光るお芝居まで、岡田さんは幅広い演じ分けができる俳優です。ご自身はいうなれば、どのキャラクターに近いんでしょう?

岡田:なんでしょう!? でも……やっぱり「ゆとりですがなにか」が自分の等身大のキャラクターなのかなと思います。どこか共通点もありますし、宮藤(官九郎)さんがおそらくあてがきで書いてくださったのもあって、割と近い気がします。今回の氷室は、僕とはまたちょっと違うんですよね。

そうした自分にない要素を演じられるときの手助けになる一番のものは、何でしょうか?

岡田:結局は、たぶん自分の中にあるものだと思うんです。0から1はなかなか難しいので、どこか1を探していつも(役を)作っています。氷室もそうですし、どの役を演じていても、どこか何か自分の中のものは引き出していると思います。当然、僕ひとりで作っているわけではないので、スタッフさん、共演者の皆さんの助け、相手役の方と演じることで「こういう役柄」というのを説明してくれる瞬間が多々あるんです。誰とどう対峙するかによって、自分の役がだいぶ変わるんですよね。だから、できあがった役は僕だけでという感じではないかもしれません。……役作りも、なんか、いまいちまだわからないところがちょっとあったりもするんです。

そうなんですか、意外です。役作りについては、いつも何からされるんですか?

岡田:基本的にホンを結構……かなり読みます。その後にイメージを膨らませて、「こんなのかな、あんなのかな」と監督と話しながらやっていきます。特に僕は100%作り込んでいくタイプではなくて、現場のセッションも含めて、どうしていこうというのを楽しむほうなので、あまり決めつけないようにしているというか。現場に立ってから考えて生まれる瞬間も多々ありますし、ときには生身のまんまのときもあります。……こんな怖いことはないんですけど(苦笑)。でも、そうやって試すときもあります。それらを一つずつ丁寧にキャッチしながら、作っていっているのかもしれないですね。

準備をきちんとしながら、一方で余白もとても大事にされていらっしゃる。

岡田:そうですね。どの役もどこかは自分なんですけど、自分ではない感覚というか。今ドラマでやっている役(『ザ・トラベルナース』)も、どこか自分なんですけど、お芝居が終わって家に帰るとすごく疲れていることに気づくんです(笑)。「テンション高いんだなあ、こんな怒鳴ってるんだなあ」って、そこで客観的になる瞬間があって。最近はルーティーンで帰ると浴槽に浸かるんですけど、そのときに「ああ、やっと終わった」とスイッチが切れる感じです。

貴重なお話の数々、ありがとうござました。最後に、FILMAGAは映画やドラマ好きのユーザーが集まる媒体なので、岡田さんが最近観た作品の中で印象的なものをぜひ教えてください。

岡田:Netflixの『極悪女王』、すごく面白かったです! みんな魂を削り合って作っているのが、画面を通して伝わってきました。そうした作品作りは僕もとてもしてみたいですし、何かを削りながらものを作ることで、すごく伝わってくるものがありました。劇場作品では、この間『ナミビアの砂漠』も観ました。すごく素敵な映画だったので、どんな監督が撮られたのかな、一度お会いしてみたいなと興味が湧いていたところでした。

(取材、文:赤山恭子、写真:映美)

映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』は、2024年11月22日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開。

出演:内野聖陽、岡田将生、ほか。
監督:上田慎一郎
配給:NAKACHIKA PICTURES JR西日本コミュニケーションズ
公式サイト:https://angrysquad.jp/
(C)2024アングリースクワッド製作委員会

※2024年11月20日時点の情報です。

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