“M55は子供のころの日常の中の憧れ”を形にしたモデル

 同日に行なわれた発表会では、光岡自動車 代表取締役会長 光岡章夫氏が急遽出席できなくなってしまったことから、コメントが読み上げられた。

 コメントで光岡氏は「100年企業になる目標を掲げて7年目となりますが、大変多くの皆さまからご支援、ご協力をいただきながら、おかげさまで着実に一歩一歩、歩みを進めております。来年は新店舗開設の予定がございます。現時点では詳細についてお伝えすることができませんが、そのときが来ましたら改めて皆さまにご案内させていただきます」と、新規店舗を立ち上げ、販売を強化していくとした。

 続けて、光岡自動車 執行役員 光岡事業部 営業企画本部長 渡部稔氏がM55について説明。M55の企画は2021年の秋からスタートし、街中にあふれるSUVを見て「子育ても終わり、仕事も家族も全力投球で歩んできた世代には、この先の人生、もっと気分を上げて楽しめるクルマがあってもいいのではないか。SUVではない別のテーマのワクワクを望んでいるのではないか」と思い、同じ世代を生きてきた人の本当のワクワクはなんだろうと考えたときに、子供のころに目にして憧れていたクルマたちは、どれもアメリカのデザインの流れをくんでいたことに思い立ち「そんな時代感を形にしたい。あのころの夢と希望に満ちあふれていた元気なころの日本の、その象徴であるGTカーを作りたい」ということから、ホンダのシビックをベースにM55を制作することになったと紹介した。

株式会社光岡自動車 執行役員 ミツオカ事業部 営業企画本部長 渡部稔氏

 その後、2023年11月に「M55 コンセプト」を発表した際、市販化を熱望する1300件あまりの応援メッセージがあり、発表当初は市販化の見通しが不透明だったものの、「今回、ベース車両を光岡自動車の名義で登録するという条件付きで、なんとか100台だけ確保できた」と市販化の実現について話した。

 渡部氏は「子供のころのワクワクを大人になっても追いかけ続けている自分がいるものです。小さいころの憧れは心の中に生き続けてはいるのに、なかなかそれに気付かないものかもしれません。何かのきっかけがあって初めてその憧れに気付けるのかもしれません。ロックスターやバディーは異文化への憧れだとしたら、M55はあのころの私たちの日常の中の憧れなのだと思います。企画構想から3年。多くの皆さまからいただいた応援メッセージ、市販化熱望のメッセージは私たちに大きな勇気とエネルギーを与え、それが1つの塊となって、動かす力になったのだと思います。わずか100台ではありますが、それでも価値のある100台です。市販化の道筋すら見えなかった、まさにゼロベースで挑んだクルマにふさわしいZero Editionの称号の中に、このクルマに注いだ私たちの熱い気持ちが込められています。いつもならいくつかのグレードとバリエーション豊富なカラーで皆さまに選ぶ楽しさを提供していますが、今回のM55 Zero Editionでは、私たち光岡のこだわりを凝縮させた1台として、6速MTのワンカラー、ワングレードでお届けいたします。皆さまに少しでも心揺さぶるワクワクが届けられたとしたら、これほどうれしいことはありません。限られた台数にはなりますが、オーナーとなる皆さまには、あのころの自分に重ね合わせながら、M55 Zero Editionをお楽しみいただければ幸いです」と思いを語った。

 エクステリアデザインを担当した光岡自動車 ミツオカ事業部 開発課 デザイナー 渡辺清和氏は「M55 コンセプトが発表された際に、ベースのデザインはなんなのだろうと思ったかもしれません。人によってはあれ、人によってはこれ、という1人ひとり違う印象があったと思います。実際は、何かをベースにしてデザインしたわけではなく、小さいころの記憶、印象に残った強烈な記憶、それらを凝縮して、1つの形にできないかと思ってデザインしました。なので、人によってベースはなんだろうというのが全然違うと思います。でもそれが正解なのです。1人ひとりそれぞれ、あのときに憧れたこのデザインだなと思っていただければと思います」と、エクステリアデザインのコンセプトを説明した。

株式会社光岡自動車 ミツオカ事業部 開発課 デザイナー 渡辺清和氏

 M55 Zero Editionのデザイン特徴としては、フロントの丸目4灯と、黒のベースの中にあるテールランプと紹介。また、フロントリップスポイラーやリアのルーバー、ダックテールといった、子供のころに見て「かっこいいな」「よく見ていたな」と思う形を取り入れたとした。

 インテリアデザインを担当した光岡自動車 ミツオカ事業部 商品企画課 課長 兼 デザイナーの青木孝憲氏は、インテリアについてはベース車両から2点変更したと紹介。1つ目は全面に本革を採用したレザーシートで、“ハトメ”という部品を配置することで、往年のGTカーのようなスパルタンでありつつも、フォーマルな印象のデザインとし、「幼いころに父親が乗っていた“ハコスカ”のシートがこのようなスパルタンなシートだったと記憶しています。クルマはマニュアル車だったので、大きな機械の塊を操っている男のかっこよさ、“親父、かっこいいな”と思った記憶もあります。あとは、小さな三角窓から暑苦しい夏の空気がわっと入ってくるような、そんな空気感みたいなものも、このインテリアデザインに込められています」と話した。

株式会社光岡自動車 ミツオカ事業部 商品企画課 課長 兼 デザイナー 青木孝憲氏

 2つ目はオプションとなるインテリアのドライカーボンパネルで、「令和の優しい感じの男子から、昭和の銀幕スターのようなピリッとした男前という感じに仕上がったかなと思います」と紹介した。

 青木氏は「恐らく私たちは市場調査をしてクルマ作りをするということはありません。クルマをながめて、乗って、楽しんで、磨いて、クルマと一緒に幸せを感じたいと思っていつもクルマ作りをしています。それはきっと皆さんと同じで、クルマを愛しているからにほかならないと思っています。M55 Zero Editionについてはわずか100台ではありますが、クルマが輝いていたあのころの時代を思い出して、そこにタイムトラベルしてもらえれば幸いに思います」と思いを述べた。

M55 Zero Edition

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