米アルファベット傘下のグーグルは今年8月、同社を相手取り起こされた最大の反トラスト法(独占禁止法)訴訟で敗訴した。米連邦地裁は、90%近いシェアを握るオンライン検索サービスなどで違反を認定し、同社が事業分割を迫られる恐れも出てきた。

  米司法省と訴訟に参加した複数州の司法長官は、判決を下したコロンビア特別区(首都ワシントン)連邦地裁のアミト・メータ判事に対し、 グーグルに事業の一部売却を命じるよう要請する方針だ。ブルームバーグ・ニュースが伝えた。実現すれば、1984年に巨大通信会社AT&Tが事実上解体されて以来で最大の強制的な米企業分割となる。

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  違法な独占解消を目指す是正案の審理は2025年4月に予定され、メータ判事が担当する。グーグルが自社の検索エンジンをスマホやウェブブラウザーに標準搭載するよう働き掛けるため、260億ドル(現在の為替レートで約4兆300億円)を支払い、競合他社の参入を実質的に阻害したと同判事は認定した。米テック企業との裁判で、米連邦当局の反トラスト法違反の主張が認められたのは、約20年ぶりのことだ。

どのような訴訟か

  アップルとサムスン電子を含むテック企業やスマホメーカー、通信業者がグーグルから広告収入の一部を得る見返りとして、同社検索エンジンのモバイル機器やウェブブラウザーへの標準搭載を受け入れたと司法省などは主張。ディストリビューション契約の下で重要なアクセスポイントが独占され、ダックダックゴーやマイクロソフトの「Bing(ビング)」など競合する検索エンジンは、自社製品改善とグーグルへの対抗に必要な量のデータを収集できなくなったと原告側は訴えた。

  メータ判事は、グーグルがオンライン検索サービスと、検索結果のページ上位に表示される検索テキスト広告で反トラスト法に違反したとの判断を示した。独占の結果、テキスト広告料を自由に値上げできるようになったと指摘した。

何が起きようとしているか

  司法省はワシントンの連邦地裁に10月に提出した文書で、グーグルに事業の一部売却を求める是正案を検討していると明らかにした。インターネット閲覧ソフト「クローム」や基本ソフト(OS)「アンドロイド」、アプリストア「グーグルプレイ」の売却要求、競合他社とのデータ共有の拡大、訴訟の焦点となった排他的契約の禁止を含む選択肢の包括案が提示された。

  司法省によれば、検索サービスでの支配的地位を利用し、人工知能(AI)製品で不当に優位に立つことを防ぐ措置も検討されている。

  司法省と各州は、是正措置の他の幾つかの側面が市場の競争改善につながらない場合、グーグルにクロームの売却を命じるよう裁判所に求める方針を固めたとブルームバーグが伝えた。競合他社やAIスタートアップに役立つ検索結果およびデータの使用許可、掲載先に関するより多くの情報と裁量を広告主に与えることを義務化する案も示す予定だ。仮にクロームの売却が決まれば、事業価値は最大200億ドルに上る可能性がある。

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メータ判事は、グーグルがオンライン検索サービスと、検索結果のページ上位に表示される検索テキスト広告で反トラスト法に違反したとの判断を示した

Photographer: Gabby Jones/Bloomberg

グーグルは反論しているか

  グーグルは連邦地裁の判決を不服として上訴する意向だ。同社の規制問題担当バイスプレジデント、リーアン・マルホランド氏は「このような方法で政府が有利になるよう事を運べば、消費者や開発者のほか、それが最も必要とされる時に米国の技術的リーダーシップに害を及ぼすことになるだろう」と主張した。

米国以外でも監視の目が注がれているか

  欧州連合(EU)は今年3月、巨大IT企業にプラットフォーム上での自社サービス優遇を禁じた「デジタル市場法(DMA)」の適用を開始した。異なるサービスの個人データを連動させることや、サードパーティー業者から収集したデータをそれらの業者との競争に利用することも禁止する。

  EUの行政執行機関である欧州委員会は、グーグルがアプリストアや検索エンジンに関し、DMAを順守しているかどうか調査を開始した。

原題:Break Up Google? What’s at Stake in Antitrust Action: QuickTake(抜粋)

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