
NVIDIAは12日と13日の2日間、東京で「AI Summit Japan 2024」と題した大規模なイベントを開催。2日目には同社CEO兼創業者であるジェンスン・フアン氏が基調講演を行ない、ソフトバンクがAI向けスーパーコンピュータ(スパコン)を構築するのにあたって、最新のBlackwellプラットフォームを導入する発表を行なった。また、基調講演の後半で孫正義氏を壇上に呼び、トークショーを実施した。
基調講演の内容は長くなるため、先に発表内容を挙げると以下のようになるが、ソフトバンクとの大規模なパートナシップがメインだ。
ソフトバンク、日本最強のAIスパコンの構築にBlackwellを採用
ソフトバンクは、Blackwellを搭載したスパコン基盤「DGX B200」システムを受領し、日本で最高性能になるとみられるスパコン「DGX SuperPOD」を構築。自社の生成AI開発、AI関連事業で使うほか、日本全国の大学、研究機関、企業のAI開発向けに提供する。
このDGX SuperPODに加え、極めて計算負荷の高いワークロードを実行するために、追加のNVIDIAアクセラレーテッドスパコンを構築する予定で、初期の計画では、ArmベースのGrace CPUを組み合わせたGrace Blackwellプラットフォームを基盤にする予定で「GB200 NVL72」マルチノード、液冷式、ラックスケールシステムを搭載した設計を計画する。
本日の主な発表内容となる、ソフトバンクによる日本最大のAIスパコンDGX SuperPODの構築
Blackwellプラットフォームを手にするNVIDIAのジェンスン・フアンCEOAIと5Gワークロードを同時実行できるAI-RANの実現
AI-RANはAIと5Gのワークロードを同じハードウェア上で同時に実行。5Gのワークロードが低い時は、余剰容量を使用してAI推論ワークロードを行なうもの。従来の通信ネットワークはピーク時負荷を想定して設計しているが、平均するとその容量の3分の1しか使用されていない。残る3分の2の容量をAI推論サービス用としてユーザーに提供することで、さらなる収益化が図れる。
ソフトバンクは「NVIDIA AI Enterprise」を使用して、自動運転車の遠隔サポート、ロボット制御、マルチモーダルRAG(検索拡張生成)などAI推論アプリを構築したほか、「NVIDIA Aerial CUDA アクセラレーテッド RAN ライブラリ」をベースとした完全なソフトウェアでファインドの5G無線スタックを実現。神奈川県で実施した屋外試験で、キャリアグレードの5G性能を実現しながら、余剰容量を使用してAI推論ワークロードを同時に実行できることを実証した。
両社の見積もりによれば、通信事業者はAI-RANインフラに投資するコストの1ドルごとに、5ドルのAI推論収益が得られると見積もっている。運用コストなども含めて、AI-RANサーバーごとに最大219%の利益率を達成できるとソフトバンクが見積もっているという。

ソフトバンクとの取り組みにより、さまざまなエッジAIアプリケーションが実現するという日本における「ものづくり」の負の面
ここでフアン氏は孫正義氏を壇上に呼び、AI技術について語りあった。ここで、孫氏が今回率先してAIスパコンを構築する理由や戦略、思惑が明らかとなった。
孫正義氏(右)が登壇
フアン氏は「孫さんはNVIDIAの大株主でもあった」と振り返ると、孫氏がフアン氏に泣きつく仕草をみせ、会場を沸かせた
「日本の大企業と話をいろいろしてきたが、“ものづくり”という物理的なことばかり重視されてきた。ソフトウェアというのはバーチャルなものなので、その価値を過小評価している。そうした心理が次世代へと受け継がれてきたように思う。
しかしソフトウェアが価値を持つ時代=AIがやってきた。日本は“失われた30年”があると言われているが、AIというブームの中で、業界のすべてのスタックをリセットし、失われた30年を取り返すチャンスがあると考えている。
日本のベンチャーにとってラッキーなのは、海外と違ってAIによる革命を政府が止めようという動きが特にないということ。日本には350ものAIスタートアップ企業があり、若い起業家やイノベータを飛躍させていくには、支援が必要であり、実現にはインフラの整備が必要だ。ソフトバンクが日本最大のAIスパコンを構築し、トライアウトを経由してほぼ無償で使えるようにすることで、こうした起業家やイノベータを支援していきたい」。
対談のワンシーン。ちなみに過去にはプライベートで食事しながらソフトバンクがNVIDIAを買収する交渉もあった
また、「かつてビル・ゲイツがすべてのデスクトップにPCを、スティーブ・ジョブズがすべての人々にスマートフォンを……といったスローガンを掲げたように、私はすべての人々にAIエージェントを提供したいと考えている。
今や1歳程度の子どもでもまったく抵抗なく自然にスマートフォンを操作できるのと同じように、将来はAIエージェントが1歳の子どもに寄り添って成長するようになる。病気の時に助けてくれる医師にもなれば、すべてを知っている家庭教師のような、いわば“パーソナルなアリストテレス”が実現すると考えている。そうした素晴らしい未来を日本では実現できる」と語った。


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