知床沖の観光船沈没事故で捜索のボランティアによって2年以上経って発見されたデジタルカメラ。
その後乗客のものと判明し民間の専門業者によって復旧され、そこには事故当日の乗客の姿が残されていました。

ぬで島 (「ぬで」は「木偏に勝」) 優(ゆう)さんの母親「どれだけ楽しみにしていたのか」
息子が最後に見た景色を見たい。

家族の思いは2年以上経ってようやく叶うことができました。

ぬで島優さんと結婚を約束していた女性「お母さんアイスも食べたって」

乗り物や旅行が好きだった、ぬで島優さん。当時34歳名前の通り優しい子だったと言います。

2022年4月、千葉県の自宅から週末の休みを利用して1人で知床へ観光旅行に行ったところ観光船「KAZUⅠ」の沈没事故に巻き込まれ死亡しました。

ぬで島優さんの父親事故「4月の北海道なんて寒くて海はとてつもなく冷たい。あれだけ荒れた海で冷たい中に入って恐怖と…本当に死ぬ間際まで無念だったと思います」

事故から2年以上が経った8月14日。
犠牲者への慰霊を兼ねて捜索していた地元のボランティア桜井憲二さんらが、知床半島の先端付近の砂浜に打ち上げられた一台のデジタルカメラを発見しました。
捜索ボランティア桜井憲二さん「人がわざわざ入り込む場所ではなかったので、そこに来て落とすことは考えられなかった。お盆ということもあって運命的なものを感じた」

カメラは警察に引き渡され、連絡を受けた両親。すぐに「息子の物かもしれない」と思いました。事故のおよそ2週間前、沖縄旅行中に撮影された優さんの写真。左手首には「ストラップ付き」のカメラが。

両親が、この写真や自宅にカメラの空箱があったことを警察に伝えたところ、知床で発見されたカメラがようやく家族の元に帰ってきました。

ぬで島優さんの父親「こんなにさびちゃっているね」
ぬで島優さんの母親「このストラップだこれ優のだね。優のだ。冷たかっただろうね。
きっとこういう感じで絶対離さなかったと思うんです。最後まで離さなかったんじゃないかなと」「(息子が)見つかって引きあげるときに岩のところに落ちたんじゃないかなと私は想像します」

両親は、中に入っているSDカードを復旧させるため、民間の専門業者に依頼することを決めました。

データの復旧を依頼したのは東京・六本木に本社を置く「デジタルデータソリューション」。

警察の捜査にも協力するなど世界でもトップクラスの技術力を誇ります。

事故から2年以上経って発見されたカメラは腐食が激しく、取り出したSDカードにも多くのさびが付着。全体的に歪んでいました。

さらに分解し、データが入っているメモリーチップを慎重に取り出し状態を確認してみると…

エンジニア「難しいけどまだ可能性がある。試してみたいです」

データを取り出すため髪の毛よりも細い銅線を使い手作業で配線を行う作業が行われました。

そして、およそ3週間後ー復旧作業が成功しました。

デジタルデータソリューションデータリカバリー事業部西尾裕子さん「一部抜粋ではありますが抽出できた写真を印刷しました」

ぬで島優さんの父親「やっぱり雄大な自然をね。たくさん撮っているね」

復旧できた写真は700枚以上でそのうち事故当日の写真はおよそ100枚。

その中には運行会社の事務所前で待つほかの乗客の写真のほか、乗客がカズワンに乗り込む写真もありました。

船の上からは沈没現場近くのカシュニの滝や知床半島の先端も撮影されていました。

そしてこれが最後に撮られた写真です。
撮影された時刻は午前11時46分。
知床半島の先端付近で撮影され船が折り返す途中だったとみられています。

ぬで島優さんの母親「水滴が付いている飛沫かかってきた写真かな」
海が急激に荒れ始めたのは、このころからでした。
穏やかだった風が急激に強まり、波の高さは2メートル前後まで急上昇。

そして午後1時13分、「船が沈み始めている」という通報が海上保安庁に寄せられその後、「KAZUⅠ」は沈没しました。

復旧できた写真の中には事故当日朝の優さんの姿が

父親「ああ、優だね」
母親「(涙流す)」「どこだろうか。ここが泊まったところかな。誰かに撮ってもらったのかな」

事故当日の午前8時半ごろ斜里町にある宿泊施設で撮影された優さん。
このおよそ1時間半後に「KAZUⅠ」に乗船しました。

ぬで島優さんの母親「「行ってくるね」「土産話楽しみにしてね」って出かけて、話もできなかったから写真だけでもこうだったよって話をしてくれている、したかったんだなって息子が諦めなかったと思います」

ぬで島優さんの父親「息子が写っている写真が出てきたということで。奇跡以外の何ものでもないと思っています」
「他のご家族の関係者が写っている写真があるのでできれば焼きましして渡してあげたい」

小柳さんと会うぬで島さん父親「おはようございます」

「直接はあいさつさせていただくのは初めてですがよろしくお願いします」

ぬで島優さんの父親「これがちょうど「KAZUⅠ」に乗船中なんですけど、息子さんじゃないかなと思って」

小柳宝大さんの父親「そうです、これですね」「こんな洋服着ていたんだ当日の洋服は知らないです」

「KAZUⅠ」の事故でいまも行方不明となっている小柳宝大さん。
復旧した写真の中に乗船する姿がありました。

家族は事故当日の宝大さんの姿を2年以上経ってようやく見ることができたといいます。

小柳宝大さんの父親「見るのは初めてだったもんですから、観光して洋服を着て行っていたんだなというのが見れて嬉しいですね」「貴重な一枚ですね、もう」

ぬで島優さんの父親「やっぱり他の家族の方にもね、届けたいという息子の気持ちもね、デジカメに乗り移っていて、それで発見されたんじゃないかなと」

事故から2年以上経ち発見されたカメラ。
写真は復旧され、ようやく優さんの思いとともに家族のもとへ届けられました。

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21 Comments

  1. 写真復元できてよかった、海に浸かっても復旧できるとは驚きです。こういう作業はとても人の役に立ちますね。

  2. 悲哀・悲嘆にくれるしかない遺族の血涙もあの社長の性根にはかすりもしないんだろーな。
    復旧された電子データで加害者がさらにきびしく断罪されることを願う。

  3. 涙無しには見られませんでした。本当にデジカメが戻ってよかった。二度とこの様なことがありませんように。

  4. 波が荒れていて他の船が欠航しているのになにも考えずに乗船している事には言及しないのもどうかとおもうけど?

  5. まぁ、他の船が一艘も出航していなかったって事は、
    危険予知は出来ていたって事だと思う。
    その中での出航は、お金以外の何物でもなかったと
    思っている。社長と船長の責任だね。
    俺は心霊現象は信じないけど、お盆にカメラが見つかって
    難易度の高い復元が出来て、それをご遺族が見れたって事は
    きっと被害者が望んでいた事なんだろうね。
    写真を自慢したかったのかも。
    心が痛む人災だったけど、被害者の皆さまのご冥福をお祈りいたします。

  6. 二年以上、しかも海水です。
    これ、相当慎重に電子顕微鏡で
    一発勝負の作業。
    カメラが発見された奇跡
    メモリーが復元された奇跡
    その、最後の現影には
    万感の思い入れがあるはずです。

  7. 真冬に手を水の中に浸けると5秒もたずとして冷たさからの痛みで耐えられなくなる。そんな真冬の海に落ちたら無理よね。例え陸に上がれたとしても濡れた衣服をまとっていたら全身激痛で耐える事はできないよね。落ちた時点でもう無理。

  8. ボランティアの方がデジカメ発見されたニュースを見ていたので、無事データが復旧できたと聞いて心を打たれました。いろんな方の協力あっての帰還。